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【Side:セリス、エレナ、シャーロット】 シエルが涼しい顔でクロードに「子どもは静かな子が二人」なんて不敵なおねだりをかました直後。執務室の廊下を少し離れた小部屋へ引っ込んだ私たち三人——セリス、エレナ、シャーロットは、顔を見合わせるなり盛大に頭を抱えていた。
「ちょっと聞いた!? あのシエル、あんな涼しい顔してちゃっかり将来の既成事実をアピールしてたわよっ!」
セリスが氷の結晶をパキパキと鳴らしながら、悔しそうに地団駄を踏む。
「ずるい! ずるすぎるわよ! あんな風にシエルばっかりクロードの隣をキープして、子どもがどうこうなんて言う隙をあたしらに与えない気よ!」
「ほんとよねー! アタシだって負けてないのに!」
エレナがバチバチと紫電を飛ばしながら、頬をふくらませる。
「電撃的なアプローチならアタシの方が派手だし、夜のトレイニングだって毎日誘ってるのに、あいつはいっつも『クロードが疲れる』って冷たく遮断しやがって……! くっそ、あの風っ娘、いつの間にあんな大物になったのよ!」
「二人とも、落ち着きなさいよ!」
シャーロットは両手に小さな爆縮の火花をパチパチと遊ばせながらも、その目は本気で悔しそうに潤んでいた。
「私の爆発的に熱い愛のチェリーパイだって、クロードのやつ『胃袋が爆縮する』とか言って一口も食べてくれなかったんだからね!? このままじゃ、シエルに全部美味しいところを持っていかれちゃうわよ!」
「で、でもよ……!」
セリスは腕を組み、冷や汗を拭いながら現実的な問題を口にする。
「あのバカクロードのことよ。要塞化の図面とハンスの裏帳簿と、冷えたコーヒーのことで頭がいっぱいで、私たちの恋愛アピールなんて端からスルーするに決まってるわ。下手に攻めたら、『業務の邪魔をするな、地雷の配線でも手伝え』って冷たく言われるのがオチよ……」
「うっ……それは確かに……。あいつ、真顔で『効率が悪い』とか言い出すから反論できないのよね……」
エレナもうなだれ、紫電の勢いがシュンと弱まる。
「だったらさ!」
シャーロットが急にパッと顔を輝かせ、二人にグッと身を乗り出した。
「正面からダメなら、裏から攻めればいいじゃない! クロードが一番嫌がるのって『仕事が遅れること』と『城の要塞化が計画通りにいかないこと』でしょ?」
「……裏からって、まさか?」
セリスが疑わしげに目を細める。
「そうよ! クロードが私たちに割り当てた防衛設備の工事と地雷敷設……あれを、私たちの愛のパワーと魔法で、予定より三倍のスピードで完璧に終わらせてやるのよ!」
シャーロットはニヤリと小悪魔的な笑みを浮かべた。
「そして、仕事の鬼であるクロードに『……ほう、やるじゃないか』って言わせてみせるの! その隙に、ちゃっかり私のチェリーパイを食べさせて、子どもは何人がいいか耳元で囁いてやるんだから!」
「なっ……! それ、めちゃくちゃアリじゃない!?」
セリスの青い瞳がメラメラと闘志の炎を宿す。
「アタシの氷結魔法で、第2区画の冷却システムを完全自動化してやれば、クロードの奴、絶対一目置くはずだわ!」
「アタシも負けない! 城の全電磁コイルを限界突破でチャージして、クロードをビビらせてやるんだから!」
エレナも両拳をガッツポーズして気合を入れる。
「決まりね! シエル一人にいい顔はさせない! 明日からの要塞化工事、私たち三人で死ぬ気で巻き返して、あの冷徹な魔王様をギャフンと言わせるわよ——っ!!」
恋する乙女の情熱(と爆発的な対抗心)は、東西の軍勢をも吹き飛ばす勢いで、三人の胸の中で激しく燃え上がっていたのだった。
クロード視点_
数日後。
俺は戦術端末に映し出された城内の防衛稼働ステータスを眺めながら、思わず眉間を押さえた。
「……おい、どうなってやがる」
第2区画の冷却システムは、なぜか設計限界の三倍近い効率で完全自動化され、城内の全電磁コイルはオーバースペック寸前の超高出力で限界突破チャージされている。さらに、謁見の間から廊下にかけての地雷用大穴は、シャーロットの爆縮魔法によって寸分違わぬ精度で綺麗に埋め立てられ、完璧な対人・対物キルゾーンへと仕上がっていた。
予定では、あと一週間はかかるはずだった要塞化の全工程。それが、セリス、エレナ、シャーロットの三人の狂気的なまでの巻き返し(と、謎の対抗心)によって、驚異的なスピードで完了してしまっていたのだ。
「どうよクロード! 見た!? アタシたちの完璧な連携と愛の(自主規制)パワーで、工事を予定より何日も早く終わらせてやったわよ!」
「どーよ! この完璧にチャージされた電磁障壁なら、どんな敵が来ても一瞬で炭ケチになるわよ!」
「私の爆縮で地雷の埋め立て地帯も完璧に整備したし、ついでに私の特製チェリーパイも食べてくれるわよね!?」
ドヤ顔で執務室に押し寄せてきた三人組が、我先にとばかりに成果をアピールしてくる。
シエルは相変わらず俺の隣で「……三人とも、なんだか変に気合が入ってた」と静かに苦めのコーヒーを差し出してきた。
(……チッ。面倒な連中め。余計なところで効率を上げやがって)
だが、合理的に見て、防衛網の強度が跳ね上がったのは事実だ。文句をつける隙すらない。
俺は盛大に本日何度目かわからない欠伸を噛み殺すと、コーヒーを一口すすり、冷徹な視線を三人に向た。
「……まあ、合格点だ。お前らの無駄なエネルギーが、今回は奇跡的に効率よく機能したらしい」
「なっ……『合格点』って何よ! もうちょっとこう、感動するとか褒めるとかないわけ!?」
「そうよ! アタシたちの頑張りをもう少し素直に讃えなさいよバカクロード!」
「むーっ、私のチェリーパイも食べてくれないと爆発しちゃうからね!」
不満そうにギャーギャー騒ぎ立てる三人だったが、その顔のどこかには確かな達成感と、俺からの評価をもらえた安堵の色が浮かんでいた。
「……やれやれ」
俺は消音拳銃のメンテナンスを終えてホルスターに収めると、ガタガタとうるさい三人に冷たく言い放った。
「工事が終わったなら、次は防衛演習のシミュレーションだ。セリスは氷結トラップの再起動、エレナは電磁パルスの出力調整、シャーロットは地雷の誤爆チェックを直ちに始めろ。……サボったら、明日のコーヒーの砂糖を全部塩に変えてやるからな」
「「「えーーっ!? せっかく終わったのにまだ働くの!?」」」
盛大な悲鳴が要塞化した城内に響き渡る。
まあ、静寂とはほど遠い日常だが——鉄と兵器と、少しばかり騒々しい彼女たちに囲まれたこの城も、悪くはない。
俺は不敵に口角を上げ、新たに生まれ変わった我が要塞のモニターへと再び視線を戻した。
コメント
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第46話、読ませていただきました! 三人の恋する乙女たちが、シエルに触発されて仕事の効率アップでクロードに認められようとする展開、可愛くて痛快でした(笑) 特に、氷・雷・爆縮とそれぞれの得意分野で成果を出してドヤ顔するところと、クロードが「合格点」とだけ言ってすぐ次の仕事を命じるギャップがツボです。シエルの静かな存在感も絶妙で、にぎやかな日常がとても愛おしく感じられました。続きも楽しみにしています!