テラーノベル
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秒針に撃たれる。
深い打撃の轟音に空間と額が切り裂かれた瞬間、強烈な痛みが額の割れ目で詰まり、脳内で二、三回反復した。
泡の様にぶくぶくと造形される血液が電流を模していた。次の瞬間には反復した弾丸が屍を突き破り、別世界の2050年東京。過去方向へ飛行してゆく。目を醒ますと不思議なことに元の世界と瓜二つであった。
空想で元の世界が乱離骨灰する映像が、謎に最高峰のグラフィティーで流れてゆく。
ここは異世界だと天から御告げがあった。でなければ、そう認識できぬ程度の同一具合であった。ちっちっと電子式の秒針が彩度高めな光に包まれ、反時計に回転している。だが、その影には街が荒廃していた。それらは私にリバースした並行世界を生き抜く為の条件を表現するだろう。
他殺死に至った経緯、時間、場所、顔。解せぬそれらを銃弾のお便りと共に、見えない壁に追われようとも。
星が降る時頃に、朝までの長距離が前と比でなかった。
どこかで爆発音がした。緊迫した曖昧さが胸の中を不安と駆け抜けてゆく。それは元が車であった。
バイクは、黄金に輝き、ぶうんと夜空に排気ガスを煌めかせていた。
轟音がどこかで響いた。生き地獄の様な日常であり、またどこかカオスだった。
街に出た。テラスから景観を見下ろすのも美しかったが、花火は見上げる絶景だ。錆びた金属製の非常階段が脆くなっていて、その危うさに憎しみを感じた。更に手が滑ると目を見開き、蜘蛛の巣が張り付けられた布地が金属部分に露呈されていた。
空の星へ目線を向かわせると、水と炎のライトアップショーだ。そこへ乱入する多種多様な花火師が、泥水を視界に撒いてくる。
汚物の様な空気感が月のような美しさにも思え、優しさが明後日の方向へ向かってゆく。私達の美学の定義を聞こうともしない美学は馬耳東風であるかのように、カチッという振動が喉を伝った。
仮面を被る誰かは引き金を引いた。
またもや視界が眩み、退屈な世界が一変二変とした。
時針が後方に回る。死に際だった。
それは私の人生のタイムリミットを表す、重要な鍵であった。
弾丸が再び2050年異東京に猛威を降りながら留まった。何者なのだ。だが、私はその人間こそが私をこちらに連れて来た人であり、真相だという。そしてここ東京の地に現れる地獄、なんぞ何よりも不思議で奇妙なことに私が堕ちたのは地獄ではなく無法地帯。すなわち地球の地獄であった。
この妙な地は揺るぎなく逆転する秒針が私の心奥底に眠る魂が水に浮かぶ檸檬の様にぷかぷかと揺れている。その揺れは原色に限り無く近いイエローを、どす黒い血液に覆わせ、グロテスクの強調具合を加速させてゆく。
まるで音響スピーカーに音楽を自動再生させ、緊迫感を増強させる運動会の様に、通常以上(異常)のエンジン音を聴かせた軽トラックが何かを踏んだ。
色黒な物体を踏み潰したタイヤの革の一部が破れた。少し経ってから横転した重車から中年小太りの男が腹を立ててこちらに向かってくる。
その男が私を殴り殺すまで耐え切れなかったのか、爆発音を境に赤い炎が燃え広がり、何かのショーの様だった。
ショーで思い出したが、花火は上がらない様だ。それらを認識すると間も無く瞬間的に頭に激痛が走った。まさかと思い、思考を巡らすと共に、先程潰されていた拳銃を右手で拾い上げ、男を撃った。血飛沫が上がりまるで花火の様だ。まるでアラームを止める右手みたいに、それは私の苦しみを右手で止めた。
少し整理すると、元の時の流れに逆らう鏡の様なこの世では、死に戻りに限界があるようで、至った後、生存中の出来事を美しく再現することで多少は緩和されるが、この格式高い頭に激痛が走るみたいだ。
今現在私は殺人鬼であった。だが、平和のへの字もない空気感に罪は緩和されてゆく。
そういえば私はいつ頃堕ちたのだろうか。
撃たれた衝撃で線で結ばれることのない異世界にきた私は今夜空を見ていた。爆風に巻き込まれながらも夏の大三角というのかも解せぬ。
あの星を左手で掴み取ることが、私と両親の愛と絆の物語のオープニングならば、観客席はすかすかになり不可能だと決めつけられる現実が待ちくたびれているだろう。
夏だが桜がひらひらと落ちた。だが淡いピンク色でもなくぽたっという音を纏いつつ水滴を造形してゆく。私は鋭利な傘で、桜たちを刺し続けた。サイレンが鳴り続けている。私が桜に紅色を染み渡らせ、舞い踊らせてゆくため、どれだけ回しても無力であった。
23時-16分の秒針に、私は驚き肩が揺れた。
ぴっという機械音が秒針と並行する。
巨大な爆発が私の右腕をもぎ取った。全身を発癌性物質で覆われ、残りの腕を伸縮させるのも虚しく重症者付近に落下した拳銃を仮面が拾い上げた。あの時と同じ、惨めな光景であった。
銃声が響き渡る。この時初めて理解した。非現実と向き合っているのは私だけではなかったと。
音が渇いた。時計を見る目が22時-16分を差し出した。やはり繋がるとした場合に説明がつきすぎると同時に、あの男が奪い取った殺戮機械には銃弾が入っていないということだった。
今宵は静かに祭りが鳴る。
この世界の時空が六十進法であるのならば、24時−16分有力な死亡推定時刻だ。
仮面を取る夢を見た気がする。
もも裏に寝汗をかきながら銃口をこめかみに合わせ、引き金を引いた。だが弾丸は出なかった。弾は入ってるはずと思い、空の拳銃に目を向けた。汗の温度が凍える様に寒くなりながら滝の様に増加した。激痛が走る。
冗談でも恐怖を感じる結果になった。弾が入っていた拳銃を持った仮面の男が窓ガラスを破壊し、打ち込んできた。
私は仮面の男を殺さなければならなかったのだと、インテリア用砂時計が重力に反して登ってゆく。
次の罪人は私でなければ。
街へ出た。その目つきは星空の様に明るく、強欲だった。
頭痛が酷くなってゆく。もって後二分だろう。
錆びた金属製の非常階段は、相変わらず憎しみに溢れかえっていた。一歩目を踏み出したその揺れで、命が保たれた。反射的に階段下を見ると仮面が待ち伏せていたため、私の心中で錆びた金属が憎しみから防護壁に変化した。リロードの隙を見て思い切り階段を叩いた。ポロポロと苔が金属の隙間を伝ってゆく。二十段近く続く階段が徐々に消滅する中で仮面は必死に走り続けた。
一瞬の出来事だった。
この男はギリギリで階段を登り切るとすぐさま顔色を変え、銃を構えた。
その男の引き金を引く指が爆風に飛ばされた。
指がポトンと落ち、泡を吹く血溜まりが広がる。
家が爆発し、跡形もなくなった地面に落ちた銃を持ち直し、急いで頭に打った。
三。二。一。脳内で揺れる針が止まる。
主導権は移り変わった。頭痛は止まった。
静けさが鳴った。
思い出した様に指を拾う。
そして、弾を抜いた。
仮面が銃を拾う妄想に胸を膨らませながら銃を足元に置いた。
目が覚める。時計を見ると23時-16分であった。
「は?」
ああそうだった。どちらも拳銃を持っていない世界線に変えてしまったのだ。
「1時間後に殺されなければ、戻れなくなる。」
足が思い切り夜の風を駆け抜けた。
夜空を背景に足が回りながら思考が爆発する。
私が戻るにはあの場所、あの時間に撃たれて死ぬ必要がある。
私はあっちの世界のどこで死んだ。
この世界はあっちと並行している。
つまり場所は同じ?
――頭痛が盛り上がる。
走り続けろ。
秒針を戻せ。
死を成立させろ。
死からは逃げられないのだから。
12時16分へ埋まりにいけ。
銃がある世界へ。
足を止めた。思い出しかけていた本当の最初に殺された場所。
仮面の男と目が合った。どちらも武器を持っていない。
明確な殺意を持って、頭痛の中拳が飛んでくる。
15分55秒
ずんっと脳に衝撃が走った。金属が16分にある、本当の終わりに向けて異常に収束していく。
58
3歩前へ動く。
59
調整された場所に立った仮面の男の右手にツギハギの拳銃が落ちた。
その男は拳銃に殺意を詰め込んだ。
「私の勝ちだ。」
ポロポロと相手のピースが崩れてゆく。
時刻が12時16分を回りそうな暗さだった。
私の頭に入った銃弾は時空を渡って2100東京。
花火が打たれる夜空を上目に、都会の幸せを味わう。
横に仮面を被った男がいた。
振り返った。
額に銃弾が打ち込まれた。
深い打撃の轟音に空間と額が切り裂かれた瞬間、強烈な痛みが額の割れ目で詰まり、脳内で二、三回反復した。
泡の様にぶくぶくと造形される血液が電流を模していた。次の瞬間には反復した弾丸が屍を突き破り、別世界の2050年東京。過去方向へ飛行してゆく。目を醒ますと不思議なことに元の世界と瓜二つであった。
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うぇーい