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玄関を開けた瞬間、家の中の空気が重いのがわかった。
時計の針は夜の八時を少し回ったところ。リビングの明かりがやけに眩しく感じる。
「遅かったわね、葵」
母の声はいつもよりも低かった。
ソファに座ったまま、テレビもつけず、じっとこちらを見ている。
隣にいる父は新聞を広げていたが、視線は完全にこっちを向いていた。
……なんとなく、もうわかっていた。
学校でのあの噂は、きっと家にも届いてしまったのだ。
「今日……学校でね」
母が言いかけたその声に、私はぎゅっと鞄の紐を握った。
嫌な予感が、胸の奥を冷たく撫でていく。
「……あなた、凛さんと付き合ってるって……ほんとなの?」
部屋の空気が、一瞬で張りつめた。
父の視線も母の声も、刺すように痛い。
嘘をつくこともできたのかもしれない。でも、それは凛を否定することになる。
だから私は、ゆっくりと頷いた。
葵:「……うん」
母の顔が見る見るうちに曇っていく。
「……何を考えてるの、葵……女の子同士で、そんな……」
葵:「でも、凛は……私にとって、大事な人だから」
「大事? そんなの、ただの思い込みよ! あなた、周りからどう見られてるか分かってるの!?」
声がだんだん大きくなっていく。
父は黙ったままだが、その顔には明らかな失望が浮かんでいた。
——ああ、やっぱり。
この家の中でも、私は「普通」じゃないんだ。
「……葵、これだけは言っておくわ」
母は深く息を吸って、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「凛さんとは……もう、距離を置きなさい。いいわね」
その言葉に、喉の奥がきゅっと締めつけられた。
そんなの、できるわけない。
でも、どう言い返せばいいかも分からなくて、唇が震える。
葵:「……嫌だ」
やっと絞り出した声は、小さくて震えていた。
だけど、はっきりと届いたみたいで、母は一瞬言葉を失った。
「葵……っ!」
葵:「嫌だよ! 凛をそんなふうに言わないで!」
気づいたら叫んでいた。
頬に熱いものが流れる。止まらない。
葵:「凛は、私をちゃんと見てくれるの……! 周りがどうとか、関係ない! 私……っ、凛が好きなの!」
沈黙が落ちた。
母は息を呑み、父は新聞を下ろしたまま目を見開いている。
その沈黙が、怖かった。
次の瞬間、母の声が震えながら返ってくる。
「……間違ってる。そんなの、間違ってるのよ……! お願いだから、目を覚まして」
——違う。
間違ってるのは、私じゃない。
でも、それを言っても、きっと通じない。
私は涙を拭って、玄関の方に向き直った。
靴をつっかける手が震える。
でも、ここにいたら、きっと……自分が壊れてしまう。
葵:「……ごめん」
それだけ言い残して、私は夜の街へ飛び出した。
昨日さぼりました、、、、申し訳ございません!!!!!!!
最終回、もうすぐです。♡、コメント、フォロー、よろしくお願いします。