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〜関ノ瀬夏目(せきのせなつめ)は通知が来たスマホを急いで見た。そこには、「安徳町野良犬有。一匹以上」と書かれていました。夏目は急いで出かける支度をし、出かけました。
「あ、夏目!待ってたよ!」手を降ったのは加藤喜恵子(かとうきえこ)。夏目の友達だ。 喜恵子は白い小さな飾りがついたシャツを着ていた。あのメールの送り主である。「メール見たんだね」「当たり前よ。見なかったらなんでここにいるのよ(笑)」少し話したあと二人は捕獲器をいくつか取り出して餌と容器と水も持って野良犬が出現したと言われる場所へ行った。「ん?あれなんだ?」夏目は少し遠くてなにか茶色いのが動いているのが見えた。「どれどれ…あ!あの子!あの子もだよ!」「え?野良犬?」「そう!もう少しあっちで捕獲器しかけよう」
そして30分後。ついに5匹全員捕まえることに成功した。「夏目。この子誰が何匹保護する?」「私、3匹までなら」「じゃあ二匹お願いできる?」「いいよ」こうして夏目はメス二匹を預かった。
一匹は茶色で、まだ子犬だ。もう一匹は薄茶色で大人だった。
夏目は子犬に、「もっち」と名付けた。大人には「おやき」と名付けた。もっちはまだ生後8ヶ月ぐらいで人は少し怖い。「もっち。おやき。ごはんだよ」夏目はそう言って犬用チーズと鶏ささみ、砕いた犬用クッキーとジャーキーを乗せた固形フードを二匹に与えました。おやきはたいそう怖がりで人がいるとぶるぶると震えてしまいます。「これからゆっくり慣れていこうね」
1ヶ月後、二匹は、喜恵子が主催の譲渡会に参加しました。夏目はもっちはすぐに飼い主が見つかるだろうと思いました。しかし、終了まであと30分というところまでもっちには声がかかりませんでした。しかし、おやきは声がかかりました。
私津有舞花(しつありまいか)と私津有圭吾(しつありけいご)の夫婦と産まれたばかりの娘、私津有愛(しつありあい)の家族です。元々タチという保護犬を飼っていましたが、舞花の出産当日になくなりました。それで新しい子を迎えようと思ったそうです。タチの前にはアメリカン・ピット・ブル・テリアの保護犬、ジーブスを飼っていて、人馴れしていない子は慣れているそうです。
結局、もっちには声はかかりませんでした。
おやきはトライアルを得て正式に家族となりました。
もっちはずっと譲渡会で参加し続けました。しかし、もっちを家族にと選んでくれる人はいませんでした。
それからずっと、もっちは譲渡会に参加していました。しかし、成犬となってしまった今も声はかかりません。
しつけもしっかり覚え、散歩も得意。遊びも大好きな若い犬なのになぜか一向に声がかからないのです。「おやきが幸せになったのは嬉しいけど、もっちの家族が決まらないのはなんでだろうね」といつも無で続けました。そして電話で喜恵子に相談することにしました。なんども預かりボランティアをしてきましたが若い犬や子犬がこんなに家族が見つからないのは初めてです。「ねえ、喜恵子。保護した子の一匹のおやきって子は家族が見つかったんだけど、若いもっちが家族見つからないんだよ。どうしよう?」と相談しました。「う〜ん。まあ、まだってことかな。」「まだ?」「そう。まだ。うちもね、二年以上里親が見つからなかった白黒猫のわらしべって子も、ある日ね、すんなり見つかったんだ。」「すんなり」「そう。それにほら、黒猫のポッキーとポメラニアンの真春は、里親さんが見つからなくてうちで引き取ったんだよ」「そうだったんだ」「うん。だから焦らないで。じゃあね」そう言って喜恵子は電話を切りました。「く〜ん」ともっちは鼻を鳴らして夏目に甘えました。「ごめんね。もっち。私、もっちのこと、大好きだから。一緒に幸せになろうね。本当の幸せを見つけようね」と言って撫でた。夏目は、もっちが「うん。頑張るよ。」と言っているように思えました。
そして翌月の譲渡会。
「あの…もっちちゃんを気になるんですけど」と若い夫婦が来た。女性は腹が大きかった。きっと妊娠しているのだろう。
若草春姫(わかぐさはるか)と若草新史(わかぐさしんじ)という新婚夫婦だった。二人はもっちを選んでくれた。
そしてあれよあれよと準備が整い、トライアルへ行くことになった。「おめでとう…でも寂しくなるねぇ」夏目は、くしゃっともっちの頭を撫でた。
おやき、もっちはずっとのおうちを見つけることができたのだ。