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殺し屋殺し。それは、三年前まで私の通り名だった。
だけど、其れを辞めてからは一切呼ばれないようにしていたのに。自分から云うはめになるなんて。
「そう云う訳ですから、手加減無しでどうぞ。私もその心算です」
「殺し屋殺し。真坂、こんな少女だったなんて·····」
「おい、太宰。手前は向こうを片しておけ」
向こうって。
「皆のことですか?」
それは駄目だ。させない。
私は、ジャケットの裏に隠していたナイフを手に床を蹴った。
相手が切られたことに気が付かない程、薄い刃。其れで切った、心算だった。
実際にはかわされて、代わりに蹴りが飛んできた。直前で防御したが、威力が相当なのか、壁に打ち付けられた。
「いった·····。何ですか、今の。人間の力とは思えないです·····」
自分から勝負を挑んでおいてなんだけど、もう止めたい。今の一撃で決める心算だったのに、逆に食らってしまった。防御したのに相当な深手を負ってしまった。
あれと同じものは、あと一発だって食らいたくない。矢っ張りマフィアは強かった。
しかも、私が蹴られている間に、怪我だらけの男が居なくなっていた。これは、倒すとか云っている場合ではなさそうだ。
「·····あの、降参します」
「は?もう終わりかよ!殺し屋殺しって、嘘か?」
「いいえ、本当ですよ。でも勝てそうにないですから。無駄な傷は負いたくありません。という訳で、私をどうぞ。」
「·····巫山戯てんのか?」
「私が、所長なんです」
すぐに所長を渡す事が可能だったのは、そう云うことだ。私は、ずっと此処に居たんだから。