テラーノベル
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!アテンション!
攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。
ご本人様たちとは全くの無関係。
ご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですがたくさんの愛はある。
今回結構注意点や特殊設定多々ありなので下記の注意事項必須です。
相当な覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!
⚠️タイムトラベルという設定。🔝が昔したある大きな後悔を、時を超えて無くしていく物語
⚠️最後はハピエンですが、途中割と痛々しい場面あり
⚠️直接的な描写はほとんどありませんが、モブ男×🔝の同意のない性表現ありますので注意
もろもろ注意願います!
見せられた写真に一瞬息が止まった。思考が停止して、どうにか言い訳を探したが結局見つかることはなく。開いた口はなにも言葉を発することができなかった。嫌な汗がひとつ背中を流れる。
「これ、バラされたら終わりだな。お前も、あいつも」
そんなことはお前に言われなくても分かってる。ニヤニヤと卑下た笑みを浮かべる彼をぶん殴ってやりたかった。そんな勇気もない。
「いいのか?それでも」
いい訳ないだろ。そう言う代わりに舌打ちをした。そして大きく息を吐き出す。身体の力が一気に抜けた。それは、諦めに近いものだったのかもしれない。
「……………俺は、なにをしたらいい?」
情けなく震えた声。それが余計に彼を煽っているようだった。
「いいね、物分かりがよくて」
果たしてこのときの俺の判断は正しかったのだろうか、それとも。
side.ジヨン
ふと真夜中に目が覚めた。カーテンの隙間から覗く空はまだ真っ暗で、時計を見ると深夜2時。普段の俺は割と夜行性というか、夜に強いのだが、昨夜は仕事がハードだった挙句酒まで飲んだから早くに寝た。からなのか、こんな時間に目が覚めるなんて。
もう一度眠ろうと目を閉じるも意に反して脳が冴えていく。こうなったらいっそ起きてしまおうか。そう思い寝返りを打った、そのとき。
(……?)
ふと人の気配を感じた気がした。おかしい。この家には今俺しかいないはずなのに。しかもこんな夜中に。なんとも言えない恐怖がじわじわと足元から上がってくる。俺は意を決して目を開けると、近くにある電気のスイッチを入れた。パチ、という音とともに部屋が明るくなる。
「………………ぇ、」
明るくなった空間、見えるリビング。その奥に、1人の男が我が物顔で椅子に腰掛けタバコを吸っていた。
「う、うわあああ!?」
思わず叫んでしまった。男はうるさいとでも言うように顔を顰めて片耳を塞ぐ。
「……るせー。急に大声出すなよ」
「え、すみません…じゃなくて!」
目一杯身体を後退させ壁に背をつけた。バクバクと忙しなく動く心臓がうるさい。
「な、なんでここに…どうやって入って…つーか誰!?」
「くくっ、騒がしいなあ」
そう言って笑う顔に思わず口を噤む。瞬きをして男を見つめた。
「……うそ、でしょ、」
だって俺は知ってる。この顔を。
「…………タプ、ヒョン?」
口からこぼれ落ちた名前に、彼は目を細めて笑った。彼はどこからどう見ても、同じメンバーで、そして俺の大切な恋人の彼。なのに。
「……よくわかったな」
そう、どう見てもトップなのに、違う。俺の知ってる彼じゃない。
俺たちはデビューして4年目に入る。でも目の前の彼は明らかに今のトップよりも全然年上に見える。何年も経ったような顔。そしてなにより、こちらが驚くほど痩せていた。服の上からでも分かるほど線が細く、顔の輪郭も首あたりも骨が浮き出てる。タバコを持つ右手の手首は折れそうなほど細い。
「な、なに…タプヒョン、なんだよね?」
「ああ、そうだな」
「でも全然ちがう…俺の知ってるタプヒョンじゃ……」
………………え、これってまさか。
「……未来の、タプヒョン?」
「………ま、今のお前からしたらそうだな」
馬鹿な。そんな馬鹿な。ありえない。あれ、俺今まだ夢の中なんだっけ。だからこんなことが起きてるの?夢見てる?
俺は確かめるように自分の頬をつねった。うん、痛い。
「ははは!典型的な試し方すぎるだろ!」
「なっ」
「そんなんしなくたって、現実だってこれが」
そう言うと彼は短くなった吸殻を灰皿に捨てた。近くには俺のタバコの箱が置いてある。
「あ、それ俺の!」
「ん?ああ悪い、1本もらった」
全然悪びれてない声。トップはタバコの箱を手にとると、ふと笑った。
「……そっか、このときはこの銘柄吸ってたんだな」
「?」
「たしかこれの前まではアメスピだった」
「!」
目を見開いた。たしかに俺は最近銘柄を変えた。それを知ってるなんて、やっぱり本人なの?
「……ま、来年あたりにはまた違うの吸ってるけどな」
「え?」
「ジヨン、割とタバコの銘柄変えるタイプだし」
そう言って笑う彼になんとも言えないもやもやとしたものが心を巣食った。これが現実だなんて信じたくないのに、あまりにもリアルだ。
「………なんで、」
なんで、こんなことになってるのか。なんで今未来の君がここにいるのか。色んな疑問がありすぎてどれから聞いたらいいか分からない。
「………それ、どれに対する『なんで』?」
そんな俺を見透かしたように、彼は微笑みながらそう返す。なんだかムッとして返そうとした言葉が止まった。目の前にいるトップが、あまりにも悲しそうな顔をしていたから。眉を下げ笑うその顔は、笑ってるのに泣いてるみたいだ。こんな顔、見たことない。
「……そうだな、簡単に言えば…忠告」
「…忠告?」
「そ。今の俺は、お前と俺の未来を知ってるから、その忠告」
「……どういうこと」
「……………俺はあのとき、判断を間違えた。だからこうなってしまった。詳しいことは言えない、けど…………ジヨン、」
悲しい声で呼ばれた名前が、いつまでも耳に残る。
「……なにがあっても、俺を信じてくれ」
「え?」
「いいか、絶対だ。なにがあっても……俺を信じてくれ、ジヨン」
男に触れられたところから冷たくなっていく感覚がする。大好きな彼に触れられるときは、いつだって火傷したように熱くなるのに。
「はぁ…っ、」
興奮したその声が気持ち悪い。肌を這う舌に吐き気がする。中に入り込んでくるそれが痛くて怖い。歯を食いしばってひたすら耐えた。
(…………たすけて、)
支配する嫌悪感に涙が出る。どんどん自分が汚されていく、そんな感覚がした。
side.ジヨン
結局あのあと、いつの間にかまた寝ていたらしい。顔にあたる朝日で目が覚めた。思い返すと本当に非現実的なことすぎて、あれは本当に夢だったんじゃないかと思っていた、のに。
「……これ、」
灰皿に残る吸殻が1つ。昨夜随分と痩せてしまった自称「未来の彼」が残したもの。それがある。
「……なんなんだよ、まったく」
あれは夢なんかじゃなく現実だったと知らせているようなそれに、俺は大きくため息をついた。
「……ねぇ、」
休みが被って、俺の家で一緒に飲んで、そのまま貪るようにセックスをした。久しぶりだったこともあり酷く興奮して、息絶え絶えに「もう終わり」と泣くように言われてから2回も出した。ごめんね、抑えられなくて。と心の中で何回か謝った。
「なんだ?」
精も根も尽き果てたようなトップが、眠そうな声で答える。普段露出を嫌う彼の、日に焼けていない綺麗な身体がだるそうにシーツに沈んでいた。
「タプヒョンはさ、その…タイムトラベル?みたいなの、信じる?」
「……はあ?」
彼が心底不思議そうな顔をする。まあ当然の反応だよね。俺だって未だに信じられない。1ヶ月経った今でも、あの夜未来の君に会ったこと。
「んー…まあ、なんとなく?」
「…なんだそれ」
1本もらうぞ、と俺のタバコに手を伸ばす様をじっと見つめる。その手首はあのときのように折れそうなほど細くなくてなんだか安心した。
「……それ、最近ジヨンがなんかぼんやりしてるのと関係あるのか?」
「え?」
「なんかたまによ、心ここに在らず、みたいな顔で考え耽ってるときあるなぁって思って……まあ、関係ないならいいけど」
思わずドキッとした。まさかそんなことになってたなんて。
「……うーん、関係あるような、ないような……あるような」
「……ぷっ、どっちだよ」
火をつけながら彼が面白そうに笑う。その顔も首もやっぱり痩せこけてなくて。あのときとどうしたって比べてしまうのがなんだか嫌だった。
「……うーん、そうだなあ」
「ん?」
「いや、タイムトラベルの話。お前がしてきたんだろ」
「あ、ああ…そうだったね」
「正直信じれない。けど、信じないわけじゃない」
なんとも彼らしい答えだと思った。
「ふーん?」
「なんだよその反応。真剣に答えたのに」
「え、いや…ごめん」
彼がゆっくりと息を吐き出す。口の端から上がる煙が空中に消えていった。
「………でも、そうだな」
「?」
「もしそんな力があったら………過去に、行きたいかも」
「…未来じゃなくて?」
「ああ。先のことなんて見えないからいいんだろ。分かっちゃったら、つまんないし」
その答えも君らしくて安心する。俺も箱から1本取り出して火をつけた。
「だから、行けるなら過去に行きたい」
「…行ってどうするの?」
「んー……そうだな。アドバイスする」
「アドバイス?」
「ああ。もっとこうしておけばよかったって思うことがたくさんあるから、それはそうしない方がいいぞ、て忠告したい」
「!」
「生きてれば全く後悔しないことはできないけど、それでも後悔は少ない方がいいからな」
そう言って彼は短くなったタバコを灰皿に押し付ける。大きな欠伸をしながら布団にくるまる姿を凝視してしまった。
『……そうだな、簡単に言えば…忠告』
あのときの声が蘇る。ハッとして落ちそうになっていた灰を慌てて灰皿に落とした。
「…………やっぱりあれ、タプヒョンだったんだ」
「あ?」
だって同じようなことを考えて、同じようなことを言ってる。あの夜のトップも、今目の前にいるトップも。未だにあれは夢だったんじゃないかと疑う俺を嘲るように、じわじわと現実味が帯びて驚きを通り越してなんだか不気味だ。
「どういう意味だ?それ」
眠そうな目をしながら彼が聞く。たしかにそうだよね、あの夜を知らない君からしたらそう思うよね。未来の君の、話なんだけどさ。
「………好きだなあってこと。タプヒョンが」
「はあ?」
意味分かんねぇ、と眉を顰める。怒ってるような呆れてるような顔、でも耳が赤くて思わずニヤけた。短くなったタバコを灰皿に入れてから、俺も布団に潜って彼を抱きしめた。
「ぉ゛え…っ、」
吐き出したものが風呂場の排水溝に流れていった。ここ最近ろくに食べてないから、吐いたところで胃液しか出ない。体重計に乗ってなんかないけど、明らかに痩せたのが自分でもわかって嫌になる。シャワーのお湯と混じって流れていくそれをぼんやりと見つめた。
「はぁ…はっ……ぁ、ぅ゛」
触られた場所を何度も何度も洗うのに、感触がいつまでも残っている気がして気持ち悪い。削ぎ落とすようにゴシゴシと洗いすぎて、どこもかしこも肌が痛かった。
「ぅ、ぐ…っ」
またせり上がってくる吐き気に涙が滲む。あと何回、これが続くの。あと何回、これを続けたらいいの。
side.ジヨン
俺たちがデビューをしてもうすぐ9年目に入る。もちろん全てが順調だったわけでない。苦しいこともつらいこともしんどいことも数え切れないほどあった。それでも今は、それら全てがいい経験だったと思えるようにまでなった、と思う。
トップとは未だに恋人という関係は続いていて、それこそ喧嘩も衝突も何回かしてきたけど、それでも別れようという判断になったことは1回もなく。むしろ彼への想いは強くなるような気がするほど。それが所謂「順調」であるならば、俺たちは順調だった。
つい、この前までは。
ここ最近のトップの様子がおかしい。まず俺と距離をとり始めている気がする。物理的にも精神的にも。話す機会は前よりもぐんと減ったし、デートも全て断られる。わざと俺との時間を作らず、俺のことを避けていた。もう好きではないのか、と何度も思った。別れよう、といつ言われるのか怖かった。でもそれは言われることはないから不思議だった。
そして明らかに痩せた。もともと太っていたわけでもなくむしろスラリとした長い手足と高い背だったが、見るからに痩せていっている。しかもそれがダイエットなどではなく、やつれているのだ。顔色も悪い。頬なんてこけてる。メンバーもファンも心配し始めていた。
あの夜の会った彼に、だんだんと近づいている。
「……ねぇ、タプヒョン」
「…………なんだ?」
目も合わない。こちらを見ようともしない。最後にしっかりと目を見て話したのはいつだったか。
「また痩せた?」
「……」
「ちゃんと食べてる?みんなも心配してる」
「………食べてる。平気だって」
「嘘。どんどん細くなってるじゃん。顔色も良くない」
「…大丈夫だ」
「…………ねぇ、どうしちゃったの?なにがあったの?」
「……」
「…………俺にも言えないこと?タプヒョン……俺のこと、もう好きじゃないの?」
思わず声が震えてしまった。胸がぐっと締まって痛い。苦しい、のに。目の前の彼は俺の何倍も苦しそうに顔を歪めていた。
「………そんなことない」
「……じゃあなんで、最近俺との時間作ってくれないの?」
会いたいと言っても頷いてくれず、合った休みに誘っても「予定がある」と断られる。ここ最近ずっとそうだ。
「……そんなつもりじゃ、ない。たまたま、時間が合わないだけで…」
「じゃあ明日の休みは?俺と過ごしてくれる?」
トップの目が泳ぐ。それが答え。悲しみと戸惑いと怒りがぐちゃぐちゃに混ざって身体中に回った。
「…………悪い、明日は………ごめん」
なんでそんなに謝るの?謝るなら俺の気持ちに応えて。なんでそんなに苦しそうな顔で、泣いてないのに泣いてて。どうしたらいいかわかんないよ。
『………信じらんない』
彼の言い放った言葉が未だに耳にこびり付いて離れない。悲しみを含んだその声も、軽蔑するように俺を見るその瞳も、全てを諦めたようなその表情も。
『……嘘つき。最低だよ』
ああお前の言う通り。俺は最低なのかもしれない。あのとき判断を間違えて、最低な道を選んだ。お前のためだと思ってたけど、結局お前を苦しめたなら意味がない。
もう俺にはなにもない。全部こぼれ落ちた。
「……なんで、」
なにもない、のに。なんで俺今、生きてるんだろう。この世にい続ける意味なんてあるのだろうか。それならいっそ、
「…………………………あは、」
なんだか妙案に思えた。
side.ジヨン
「タプヒョンが休み?」
言われた言葉に思わず眉間にシワが寄る。マネージャーは困ったような顔でゆっくりと頷いた。
「…はい、なんだか体調が悪いみたいで…しばらく、休ませてほしいって…」
ありがたいことに忙しい毎日を送っている。そんな中休むことが、穴をあけてしまうことが、どれほど周りに迷惑をかけてしまうか、彼ならわかっているはずなのに。それでもしばらく休ませてほしい、なんて。本当にただの体調不良なのだろうか。
「…最近タプヒョン、なんかすごい痩せたしな」
「はい…見てて心配になるくらい。あれなら体調だって崩しますよ」
「でも一体……なにかあったんですかね」
3人が心配そうに話す声がどこか遠くに感じた。携帯を見る。彼からの連絡はなにもない。
「…………仕事終わり、様子見てくるよ」
「いや、もしかしたら感染症かなにかでうつっても困りますし、行かない方が…」
即座に否定に入るマネージャーを思わずギロリと睨んでしまった。わかってる、これは八つ当たりだ。最近のトップの言動、あの夜のように痩せこけた身体、俺にはなにも言ってくれないこと、全てが俺を苛立たせていた。
「ちょっと顔見てくるだけならいいでしょ?」
「いや、でも…」
「なに?なんかあるわけ?」
ジヨン落ち着け、というヨンベの声を無視する。マネージャーとの付き合いは長い。が、これほどまでに俺の意見に食い下がることはほとんどなかった。なにか隠しているように見えてならない。
しばしの沈黙。彼は困ったように眉を下げながら、やがてため息をついた。
「…………誰とも会いたくないそうです、今」
「っ、」
カッと血がのぼるのがわかる。なにそれ。なんだよそれ。どういうことだよ。
『……なにがあっても、俺を信じてくれ』
頭の奥で、あの日言われた言葉が流れた気がした。
結局マネージャーにキツく言われ、ヨンベやテソンに宥められ。俺の方が折れて仕事終わり直帰した。ベッドに向かってふて寝を決め込む。明日は休みだ。こっそりトップの家に押しかけると決めていた。いなかったら合鍵で勝手に入っていつまでも待つ。彼からの連絡は未だにない。
人の気配にふと意識が浮上した。この感覚には覚えがある。だから今回は焦らなかった。
「………また来たの」
電気をつけて、あの夜と変わらず我が物顔で椅子に腰掛ける男に声をかけた。彼はなにも答えず、スラックスの上からでもわかるほど細い足を組んでこちらを見つめている。
「ねぇ、最近タプヒョンの様子が変。どんどん痩せてくし、聞いてもなにも答えてくれない。そもそも俺と話す時間も作ってくれない。なにがどうなってるわけ?」
「……」
「知ってんでしょ?あんた未来から来てんだもんな?」
「……」
「……なんか言えよ。おい、なんか言えって!」
「…………落ち着け」
「落ち着いてられるわけねーだろ!こんな状態で、ただタプヒョンを信じろって、それだけ言われて…そんなの、信じられるわけ、」
ハッとして言葉を止めた。目の前の彼が、今にも泣きそうな顔をしていたから。どうしたってその先の言葉が出なかった。
「……頼むから落ち着け。それ以上は言わないでくれ」
「………」
「…………聞きたくない」
「……………………ごめん」
お前が謝ることじゃない、と小さく言って彼はタバコに火をつけた。てかそれ俺のだし。銘柄を見て微かに微笑む。また変えたなって思ってるんだろうな。
「……別にわざと詳しく話していないわけじゃない。ただ…………細かく話そうとすると、頭の奥がすごく痛くなるんだ。たぶん、身体が拒絶してる。思い出すことを」
「………そう」
彼はしばらく黙ったまま、ただタバコを吸っていた。俺は、それをまるで夢でも見ているように見つめていた。
「………悪い。たしかにお前の言う通りだ。急に俺が現れて、未来から来たっつって、いいから俺を信じろって、そんなの無理な話だよな。だって俺も信じられない」
「……」
「でも今日、俺がまたジヨンに会いに来たのには意味がある」
「……意味?」
「……ああ。明日が……明日が俺の忠告したかった日だから」
真っ直ぐにこちらを見つめる。骨の浮き出た顔と首、折れそうなほど細い身体。今のトップと変わらない。今の君はどんどん目の前彼の状態に似てきているね。まあ本人なんだから当たり前か。
「………ジヨン、よく聞け」
口の端からゆらりと煙が上がった。
湯の張ったバスタブ。全身の力を抜いてだらりと身体を沈ませた。口ずさむ自分の声は、流し続けるシャワーの音にかき消される。一体どれくらいの時間こうしているのだろう。
縁に置いた赤ワインを一口飲んで、残った分は浴槽の中に流した。途端に赤く染まっていくお湯をぼんやりと見つめる。
薄い赤色に染まったお湯から見える細くなった身体、腕、脚。骨が浮き出て我ながら気味が悪い。
持っていたグラスを投げ捨てた。ガシャン、という音が浴室に響く。
(……なんで、人はこの決断を下すとき、風呂場にいることが多いんだろうか)
ドラマや映画でしか見たことないけど。まさか自分もそうなるなんて思ってもみなかった。
散らばった破片。手を伸ばして、大きいそれをとる。そしてゆっくりと左手首に押し当てた。今にも折れそうな手首の細さがなんだか笑える。
「……は、ははは」
笑った拍子に涙がこぼれた。
side.ジヨン
指定された時間に、指定された場所に向かう。身体に当たる夜風が冷たい。賑わう通りを1本外れただけでだいぶ静かな道。様々な事情を持った男女が入っていく姿を2回見た。
入口が見える角の塀に隠れて観察を続ける。少し汚れた鮮やかな看板が印象的なラブホテル。時計をちらっと見た。ここに来てもう30分。
(………俺、何してんだろ)
昨夜彼から言われたことを思い返す。あまりにもリアルなのに、心の奥底でまだあれは夢だったんじゃないかと思う自分がいる。あまりにも非現実的すぎて。
(……いや、違うな)
正確に言えば、あれを現実だと思いたくない自分がいるのだ。できれば目を背けていたい、なんて。
でもそう思う度今のトップを思い出す。初めて見た所謂「未来のトップ」のように、だんだんとやつれ痩せていく姿。近づいていくそれ。なんと言えない恐怖がじわじわと俺を包んでいった。
「!」
見慣れた背中に思わず息を飲んだ。金縛りにあったかのように身体が動かなくなる。見間違えるはずもない線の細い背中。その隣には見たこともない男。ちらっと見えた顔には卑下た笑みを浮かべ、毛深くて太い手で引き寄せるように肩を抱いていた。乾いた笑いが口から漏れる。
「……はは」
やっぱり本当だったんだ。胸が締まって痛い。そこから身体が冷えていく。
「おい」
ホテルに入ろうとした彼らに、足音を殺すように近づいて声をかけた。歩みを止めて振り返る2人。かけていたメガネの奥、見開いた目は絶望の色をしていた。
「ぇっ………うそ…なんで、ジヨン……、」
トップの震えた声が余計に俺を揺さぶった。目の奥が真っ暗になるほどの怒りが湧き上がる。それに反して、自分の顔がにっこりと笑ったのがわかった。
「とりあえず、説明してくれる?タプヒョン」
「いやあ、今どきのラブホテルって3人でも入れるんだなぁ。ま、乱交パーティーとかもあるか!」
なにが面白いのかわからないが、男は大きな声で下品に笑った。対するトップは今にも消えてしまいそうなほど顔が真っ白で、可哀想なほど小さく震えている。
「………あんた、名前は」
男の方を見もせず問いかけた。彼は胸のポケットから名刺を取り出す。受け取ったそれに記載された名前はいくら記憶を探しても見つからない。週刊誌の記者だということだけ頭に入れて、近くのテーブルに投げ捨てた。
「で、説明してくれる?この状況。世間話をしにきたわけじゃないんで」
トップの肩がビクッと跳ねた。俺より背が高いのに、きっと今の俺より体重は少ないのだろう。
「……」
「言わないんなら俺から説明してやるよ」
そう言って男はふてぶてしく椅子に腰掛けるとタバコをふかした。
「というか説明もなにもないけどな。見たまんま。ラブホテルに入る理由なんて1つしかねーだろ」
「……」
「こいつとセックスしに来ただけ。言っとくけど、こいつから誘ってきたから」
「なっ、」
それまで黙って聞いてたトップの眉がぐっとつり上がった。睨みつけるように男を見る。
「デタラメ言うな…っ!」
「デタラメ?ちがうだろ、お前が彼氏とだけじゃ満足できないって誘ってきたんだろうが」
「そんなわけないだろ!お前から脅されて俺は…っ」
「そんな証拠どこにあんだよ?」
「な…証拠……、?」
男は勝ち誇ったような笑みを浮かべたまま、灰皿にタバコを押し付けた。
「そうだよ、証拠。俺がお前を脅して無理やり関係持ったっつー証拠は?」
「…っ」
「ねーだろ?」
男がこちらを見る。にゅっと瞳が細くなった。
「G-DRAGONさん……いや、ジヨンさん。あんた、こいつと付き合ってんだってな?」
「……」
「可哀想に。驚いただろ?自分の恋人がとんだ淫乱でビッチだったなんて…俺だけじゃないかもな?他の男漁ってるんじゃねーの?」
「……」
「だってこいつ、泣いて善がってたぞ毎回」
「おい…っ!」
「……タプヒョン」
トップがひゅっと息を吸って口を噤む。恐る恐るこちらを見た瞳は、小さく震え今にも泣き出しそうだった。
「………し、んじて…信じてくれ、ちがうんだ、ジヨン……俺は……、」
俺はゆっくりと息を吐き出すと、真っ直ぐに彼を見つめた。
「………信じられない」
「っ、」
胸が締め付けられるように痛かった。願わくば、このまま消えてしまいたかった。
多分、君もそう思ってるよね?
「……………………じゃあ」
「じよ、」
蚊の鳴くような声で呼ばれた名前を無視して、俺は部屋を出て行った。
side.トップ
バタン、と閉まった扉。俺は全身の力が抜けて、思わずベッドに腰かけた。ぼーっとしてなにも考えられない。項垂れた視線の先、見えた自分の細い脚。
『……信じられない』
ジヨンから言われたセリフが頭を反芻する。何度も、何度も。焼き切れるほど痛かった胸も、今は心臓ごとどこかへなくなってしまったみたいになにも感じない。
「あっははは!傑作だな!」
「……」
「可哀想になあ」
男は立ち上がると、俺の顎を掴んでぐっと持ち上げた。
「本当は俺の言ったことが嘘なのに。まさか俺のこと信じるなんてなあ?」
「……」
「写真撮られて、それで脅されて、お前…必死にあいつのこと守ろうと守ろうと、こんな痩せてまで耐えて頑張ったのにな」
「……」
「まあそれくらいだったってことだよ、お前への気持ちなんて」
男の言葉を否定したいのに口が動かない。
「もう全部諦めてさ、楽しもうぜ」
そうだ、これは諦めに似た感情だ。もうなにもかもどうでもいい。ジヨンがいないなら、もう。
涙がひとつ頬を伝った。
side.ジヨン
ガチャッとドアを思いきり開けた。
「ごめん、忘れ物しちゃって」
今にもトップを押し倒そうてしていたであろう体勢で2人の動きが止まる。俺はその前を通り過ぎて、テレビスタンドに置いてあった携帯を手に取ると無言のまま画面をタップした。
『本当は俺の言ったことが嘘なのに。まさか俺のこと信じるなんてなあ?……写真撮られて、それで脅されて、お前…』
「な…っ!」
携帯から流れ出した音声に、男の目がカッと見開かれた。
「お前が欲しがってた証拠ってやつ。これでいい?」
そう言って携帯をポケットに仕舞うと、トップの頬を触っていた手を思い切り払い除けた。
「汚い手で俺のタプヒョンに触らないでくれる?」
「てめぇ…!」
「タプヒョン帰ろ?」
「じ…よん、」
まだ混乱したままの彼の腕を掴んで立ち上がらせる。手の中の細いそれに胸が痛んだ。
「……あ、ちなみに言っておくけど」
「は?」
「信じられない、てさっきの言葉…お前に対してだから」
男の顔が真っ赤に染まる。怒りに震えるその表情を一瞥してから、トップの腕を引っ張るように歩いた。
「…っ、いいのかよ!写真!まだ持ってるからな!お前らが手繋いでホテル街歩いてるやつがよ!」
「…」
「バラされていいのか?あ?」
「………なにそれ、脅してるつもり?」
ドアノブに手をかけ開ける。しん、と静まり返った廊下。
「するならすれば?」
「……なんだと」
「それなら俺はタプヒョンとの関係を公にするだけ。別に隠さなきゃいけないわけじゃないし。好きにしろよ。その代わり……そのときはお前、自分の人生終わると思え」
そう吐き捨てると、男は悔しそうに顔を歪めた。
「行こう?」
小さく、でも確実に頷いたトップに微笑んで、今度こそ部屋を後にした。
通りに出てすぐにタクシーを捕まえた。乗り込んでからも手は離さず。力を込めたら折れてしまいそうで躊躇っていたが、車に揺られていくうちにトップの方から強く握り返された。お互い無言だった。
俺の家について、真っ直ぐソファに座らせる。とりあえずコーヒーを入れて、湯気が立ち込めるマグカップをそっと渡した。
「熱いから気をつけて」
ゆっくりと頷いた彼がそっとカップに口をつける様を見届けてから、俺もコーヒーを啜る。熱くて舌がピリピリしたけど、そこから広がっていく熱に自然と肩の力が抜けた。
「タプヒョン、寒くない?」
「……大、丈夫」
「今暖房は入れたから。コーヒー飲んであったまって?疲れたら寝てもいいし、シャワー浴びてもいいよ?」
「…………ジヨン、」
彼が震えた声で俺の名前を呼ぶ。そしてカップをテーブルに置いたと同時に、大きな瞳にじわじわと水分が溜まっていった。表面張力で保っていたそれが一粒溢れた瞬間、ぽろぽろとこぼれ落ちて頬を濡らした。
「じよ、じよん…っ、ふぅ…ぅう゛」
「…タプヒョン、」
「ご、め…んなさい…ごめんなさい、ごめん、じよん…っ」
タガが外れたように泣き出す彼が、俺の名を呼びながら謝り続ける。顔を歪め苦しそうにするその姿を見るこちらも苦しくて、俺はそっとトップを抱きしめた。腕に骨が当たるほど小さくなった肩。俺まで泣きそうだった。
「タプヒョン、大丈夫…」
「ひっ、く…ぅ、ぐ…っ」
「好きなだけ泣いていいよ」
あやす様に頭を撫でる。久しぶりに触れた、鼻腔を掠める彼の匂いが心地よかった。
いつ、だったかもう覚えてない。突然あの男に声をかけられて…ジヨンと2人で手を繋ぎながらホテルの入口に入っていく写真を見せられた。ほら、結構前にあったろ……2人で飲んだ帰りに、近くにあったホテルにそのまま入ったこと。そのときの、だったと思う。
これバラされたら終わりだなって、俺も…ジヨンも…そう、言われて、血の気が引いた。今思えば……軽率だった。あいつの言葉に動揺して、冷静じゃなかったんだと思う。どうにかジヨンを守らなきゃって、そればっかり考えて…俺だけでどうにかしなきゃって…それで…。
なにしたらいい?て聞いた。それがあいつの思うつぼだったなんて、そのときにはまだわかってなくて……そのまま、無理やり…ホテル……連れ込ま、れて…。
気持ち悪かった。苦しくて、何度も吐いた。あいつに触れられたところがいつまでも残ってる気がして、何度も洗った。肌が痛くなるほど。なにか食べてもすぐに吐いちまうから、いつの日か食べなくなって…それでも吐き気が止まらなくて、でもなにも食べてないから胃液しか出なかった。
何回も呼び出されて、何回も強要されて……自分がどんどん汚されていく気がした。汚くて、こんな自分を…ジヨンに見せたくなくて、いつしかお前と話すことも触れることもできなくなってた。どんどん痩せていく自分に気味が悪くなったし、どうしていいかわかんなくなってた。
ジヨンを守るためだって、そう言い聞かせてたけど……お前を苦しめてたなら意味がない。もう俺のこと好きじゃないのかって、ジヨンに聞かれたとき……ああ俺はなにをしてんだろうって思った。大切なものを守るためにしてるはずなのに……結局、お前を苦しめてた。
俺はあのとき判断を間違えた。今なら、そう、思える……裏切ってしまった。お前を…裏切ったんだ俺は。謝っても済まされないことをした。本当に…ごめん。ごめんなさい
時々声を震わせ、引き攣るようにしながら、それでもトップはゆっくりと時間をかけてそう言った。もう涙は出てなかったけど、泣き腫らした目が真っ赤だった。
「……タプヒョン、」
骨ばった手の甲を優しく撫でる。まるで俺に触れられるのを怖がってるみたいに身体を強ばらすから、その度胸の奥が痛くて重くなっていった。
「思い出したくもないことなのに、話してくれて…ありがとう」
「………ジヨン、」
「そんなに何度も謝らないで。1人で全部背負わせてごめん」
なにも知らずに、ただただ俺から離れていくトップに対して、不満と不安を募らせていた。こんなに苦しんでる恋人のことに気づきもせずに、俺ばかり苦しい思いをしてるのかと思ってたなんて。情けなくて仕方ない。
「…馬鹿だった。なにも知らないで、ずっと…俺……本当に馬鹿だった」
「……」
「俺も………タプヒョンも、」
なんで俺に一言相談してくれなかったの?なんて、責める権利、俺にはない。でも、こんなことになる前に、俺に助けてって言って欲しかった。
「俺も悪い。タプヒョンも悪い。だってさ、お互い好きなのに、頼りもしないで全部背負い込んで…。俺たち、相手のこと…ちゃんと信じ合えてなかったんだと思う」
『いいか、絶対だ。なにがあっても……俺を信じてくれ、ジヨン』
あの夜初めて会ったとき、言いたかったことはこれのことだったんだね。
いつか君は、過去に行って忠告したいって言ってたけど、どうかな。ちゃんと後悔を一つ、減らせた?
「だからもう謝らないで。償うのはタプヒョンだけじゃなく俺も一緒。これからはなにがあってもお互いを信じるって誓って?」
「……ジヨン」
「ねぇ、俺はまだ君が好きだよ。どんなことがあったって、絶対君が好きだから……俺のことまだ、好きでいてくれてる?」
絡むように動いた指が、やがてぎゅっと握られた。
「……当たり前。俺も、この先もずっと…お前だけが好き」
久しぶりに見た彼の微笑む顔。
「ぅ…たぷ、ひょん……ぐ、ぅ…っ」
身体の奥から迫り上がるなにかに、気付いたら俺も泣いていた。声を上げて、まるで子どもみたいに泣いた。
ぱち、と目が覚めたとき、そこは見知らぬ空間だった。あたりにはなにもなくて、真っ白な光に囲まれてるみたい。まるで夢の中みたいだ、夢で意識を持ったことなんてないけど。でもそうじゃないと説明がつかない。俺はトップをあそこから連れ出して、俺の家に連れてきて、コーヒーを飲みながら、涙を流す彼を抱きしめて、それで…。
「……また会ったな」
いつの間にか隣に座っている彼。痩せ細って、一瞬現実かどうかわからなくなった。実際のトップが今目の前にいる彼に、容姿も年齢も近づいたという証。本人なんだから当たり前だが、初めて所謂この未来の彼を見たときは、まさか本当にこうなってしまうなんて思ってもみなかった。
「ありがとう、君のおかげでどうにか上手くいったよ」
ホテルでの一芝居と携帯の録音のことは彼からの指示だ。
「……まあ、俺は展開を知ってたからな」
「そうだね」
「………全部、聞いたんだろ?」
彼が自分の胸ポケットをまさぐりながら言う。求めていたタバコはないようだ。
「………うん」
「……そうか」
「…………実際は、どうなったの?あのあと」
「あ?」
「君が、あのときを過ごしたときは………」
そう言ってから口を噤む。嫌な記憶を開ける必要もない気がした。今こうして救われて、俺たちは未来を変えることができたのだから、それでいいか。
「……………あの、とき」
彼は小さな声で言った。無理やり聞き出す気はなかったが、話すなら聞く覚悟はあった。
「……ジヨンは、俺に「信じられない、嘘つき」って、「最低だ」って言って……あの部屋を出ていったまま戻らなかった。そりゃそうだよな、自分の恋人が他の男に抱かれてたなんて……そりゃなんにも信じられなくなるのは仕方ない」
「………」
「……俺はそのあと、あの男にまた身体を暴かれて、もう…なんか、どうでもよくなって。ジヨンのためを思ってああしてたけど、結局ジヨンを傷つけた。その事実に変わりはなかったから」
「……」
「だから、その夜………自分の家の、風呂場で…」
「………もう、いいよ」
「……大好きな赤ワインを一口飲んで、グラスを投げ捨てて…割れた、その破片で…自分の手首を、」
「もういいって。それ以上、言わなくていいよ」
くしゃり、と彼が自分の前髪を掴んだ。噛み締めている唇が痛そうだった。袖から覗いた左手首。そこに刻まれた一本の傷跡。どれほどの痛みで、どれほどの覚悟で、君は独りで全てを終わらせたの。俺はその傷を隠すように、手首をそっと掴んだ。彼の身体が大袈裟に跳ねる。
「ごめんね。君にそんな決断をさせて。苦しかったよね…なにも知らずに、俺は…」
「ジヨンが謝ることじゃない………でもそうだな、これは俺たち2人の罪で、俺たち2人の罰だったのかもしれない」
『……なにがあっても、俺を信じてくれ』
『いいか、絶対だ。なにがあっても……俺を信じてくれ、ジヨン』
君はあのとき、心の底からこの言葉を俺に伝えたんだね。
「……わかった。謝るのはもうやめる。から……」
「……」
「ありがとう。俺たちを助けてくれて」
微笑んでそう言えば、彼も嬉しそうに微笑んだ。
「こちらこそ、ありがとう。あの日の俺たちを救ってくれて」
ふに、と自分の唇に彼の唇が触れる。トップと彼は同じ人物なのに、まるでちがうみたいでなんだかどぎまぎした。
「……ぷっ、なんだその顔」
「だ、だって…タプヒョンだけど、タプヒョンじゃないじゃんっ」
「なんだそれ、俺は俺だろ」
馬鹿にするように鼻で笑われて思わずむっとする。恥ずかしさを誤魔化すように捲し立てた。
「……というかさ、タイムトラベル?でしょ?これって所謂」
「ん?ああ、そうなる…のか?」
「だったらもっとちがう瞬間に飛べばよかったじゃん。例えば写真撮られる前にさ、お前ら手繋いであそこ歩くなよ!撮られるぞ!て伝えてくれたらこんなことには…」
「ワガママ言ってんじゃねーよ、俺だって好きなタイミングで好きなところにいけるわけじゃねーんだから」
「なにそれ」
「知らないよ。そんなこと言ったら、わざわざお前のところに行かなくても、自分の過去に飛んで話した方がいいだろうが」
「………たしかに」
「だろ?なのにどうしてもジヨンのところにしかいけなくて…」
うん、なんかそう言われると悪い気はしない。
「……それってさ、」
「ん?」
「俺のことが大好きだから、俺のところに来ちゃったってこと?」
ニヤッとしながら言う。超前向き自分都合に捉えるとそういうことでしょ?
「……ふっ。たしかに、そうかもな」
「っ、」
てっきり照れて、真っ赤な顔で、そんなわけないだろ!て言われると、思ってたのに。そんな綺麗に微笑んで肯定されたら、こっちの方が焦ってしまう。同じトップのはずなのに、なんだか彼には翻弄されてばかりだ。
「……自分で言っておいてなに赤くなってんだよ。意外と可愛いとこあんじゃん」
「や、やめてよ!バカにしてるっ?」
「ん?褒めてる。好きだなーって」
なんだろ、このトップにはなにしても敵わない気がする。それはそれで新鮮でいいんだけどさ。色んなものを見すぎて、色んなことを体験しすぎて、一周まわって全てを斜に構えてしまってる、みたいな。そう思うとちょっと胸が痛むけど。
「……なあ」
「なに?」
「最近してねーんだろ?あいつと…ってか、俺とか」
「えっ」
そりゃたしかにまあ、そうだけど…。
と、思ってる隙にトップの細い指が俺の身体を撫でた。触れるか触れないかギリギリのラインを優しく指先が走る。馬鹿みたいに身体が跳ねた。
「ちょ、なに!?」
「別に減るもんじゃねーし、溜まってんだろ?しよーぜ」
「は、はぁ?なに言って」
「別におかしいことじゃねーだろ、恋人同士なんだから」
「でも俺はタプヒョンと付き合ってるし、」
「いや、そのタプヒョンて俺な?同じ人物だからな?」
「た、たしかに…でも…」
「ぐちゃぐちゃ考えてねーでさ、ほら」
彼の顔がゆっくり近づいてくる。まるで俺を押し倒す勢いにドキドキした。たしかに、このまま身を任せてもいい、かも?だってトップはトップだし。浮気にはならないよね?
「〜〜っいやいや!やっぱだめだろ!」
流されそうになって思わず大声で叫んだ。
「今の俺がえっちなことしたいのはあのタプヒョンだけだって!!」
ハッとして目が覚めた。なにやら大きな音が聞こえた気がして起きた。眩しさに瞬きを繰り返せば、見慣れた天井が見えた。
「ぇ……ゆ、夢…?……痛っ」
べし、と額に衝撃が走って思わず顔を歪める。慌てて身体を起こすと、真っ赤な顔でこちらを見下ろすトップがいた。
「へ…?タ、タプヒョン?」
一瞬どのトップだかわからなかった。冷静に考えるとどのっていうのもおかしいんだけどさ。
たしか泣き疲れて寝てしまったトップを抱きしめてたはずなんだけど、どうやら俺もあのままソファで寝てしまったらしい。いつの間にか身体にかけられていたタオルケットがずり落ちそうになった。
「なんつー寝言大声で言ってんだ…どんな夢見てんだよ…っ」
はあ、と大きなため息をつかれる。え?さっき大きな音が聞こえたと思ったけど、もしかして自分の叫び声だったの?
「ぇ…俺なんて言ってた、?」
「……い、今の俺がえっ…ぇ………ち……し、たいのは……って、言わせんなよ!」
もう一度おでこを叩かれた。ぷりぷり怒るその姿が可愛くて思わず頬が緩む。どうやら夢の叫び声は、現実の俺も言ってたらしい。とんでもない寝言だ。みんながいるところじゃなくてよかった。
「……てかよ、」
「うん?」
「”あのタプヒョン”てなんだよ。どの俺のこと?俺は俺だろ…”今の俺”ってのも意味わかんねーし…」
まあたしかに。なにも知らない君からしたら、わけわからないことだよね。
「…………うん」
俺はトップの手をとると、ゆっくりと手首を見つめた。それはあの彼と同じくらい折れそうなほど細いけど、そこにはあの痛々しい傷跡がなくてホッとした。なんだかまた泣きそうだ。彼は心底不思議そうに俺の行動を見ている。
「……よかった」
「…………ジヨン?」
「ん?……好きだなあって、改めて思っただけ」
腕をひいて抱き寄せた。またこの細い身体がいつか、しなやかな程よい筋肉に覆われハリのある肌の身体に戻るはずだ。今の姿ももちろん好きだけど。
「……生きててくれて、ありがとう」
「…………ふは、なんだそれ」
腕の中で君が嬉しそうに笑った。
皆様お付き合いいただきありがとうございました!特殊設定故表現が難しくなぜこれを書き始めたのか…と自問自答を繰り返しながら書いてました。笑
思ったより長くなったので前編後編分けようかと思ってたんですけど早くたぷさんを幸せにしたすぎてひとつに。途中書いててしんどかった。お前が書いてるんやけどな。ハピエン厨万歳。
読んでくださりありがとうございました♡
コメント
8件

やばいです...ほんとに好きです...タイムリープした方のタプの世界線のジヨンがどうなるのか気になります...😭ジヨンなら後をおいかねないと思ってるんですけど...笑どう思いますか...?笑
はぁぁぁぁ😭😭なにこれ、クオリティ高すぎる映画かなにかですか??もう涙腺がばあちゃんになりつつある。モブ撃退するときめっっちゃスカッとしました‼️‼️🤦♀️🤦♀️🤦♀️どこの脳みそを使えばこんな素晴らしいストーリー思いつくんでしょうね人間は奥深い(?)ほんとに毎週栄養をくださりありがとうございます‼️💖💖😭😭