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私には彼氏がいる。初めての彼氏だった。付き合い当初は彼の行動一つ一つに愛着が湧いて可愛くてかっこよくて毎日電話したり、
みんなから妬まれるようなカップルだった。
周りからの反応は別に嫌ではなかった。
そして、寝る前にかかさず行うのが、
おやすみの後に「愛してる」と言い合った。
おやすみ。愛してるよ
——–うん、おやすみ。私もあいしてる。
付き合ってから半年が経つと、お互いテストや
イベント等で
私たちはLINEで話す口数が減るようになった。
バッタリあったら少し手を振り、ある日は、
目も合わなかった。
話さない日々が続くと、ついには他の男が私の前を散らつく。
この人、こんなにかっこよかったっけ…。
でも、限度というものは分かる。
彼氏がいるのに他の男に目がいくのは
おかしいと思った。
自分の気持ちをブレーキして押さえた。
もう、こんなことをしてしまう自分は、
いわゆる倦怠期と言うのだろうか。
必死になって彼を好きになろうとした前の自分は今やこんなにも冷めてしまうものなのだろうか。
ある日、突然彼にあまり興味が湧かなくなってしまった。
私にとってたまに連絡する友達関係と似てるような関係に感じるからだ。
前までイベント終わりは必ず打ち上げを
彼氏と私の友達等でやっていたのだが、
彼氏とする打ち上げはなくなっていき、彼氏は男友達と行動することが多くなった。
お互いが気付いていたのにもかかわらず。
その瞬間、硬く結ばれていたはずの赤い糸が
緩く手でちぎれるようなヒモのような気持ちに
なった。
この日はたまたま女子会がある日だった。
最初は普段あった日常トークだったのだが、
一人の友達がため息をこぼしたことから始まった。
そう、彼氏の愚痴。ひとりが最近彼氏がだらしない
と言うとみな口々に共感をする。
付き合い当初ではその手の話は笑いで済ませていたものの、今ならわかる。
私の前に座っていた女友達がこんなことを言い出した。「あんたは幸せもんだからこーゆうのはうちらと分かり合えないよね。」
前の私なら苦笑いをしつつ、頷いていた。
だが、いってもたってもいられず、首を横に振ってしまっていた。
首を横に振り、私は自分でもどうかしてくらい、
たちまち彼の悪いところばかりが口走り、
良いところが消去されていった。
前は簡単に彼の良いところが言えていたのに。
自分でもわかっている。彼の悪いところを重く受け止めてはいけないと。でもどんどん彼との距離は
遠くなるばかりで本当は寂しくて寂しくて、
たまらなかった。ただ構って欲しくて彼に甘えたいと心の奥、そう願っていた。
こんなに、大好きなのに。愛してるって言ってよ…
だが、その願いは叶わず、気持ちが薄れていく。
誰か、こんな弱い自分を叱って…彼を想いやれない考え消して…。
そう、心の中でつぶやいた。
誰にも届かないはずだとわかっているのに。
ある日私は決意をした。彼と別れる決意。
身勝手で彼に一言でも寂しいって言えばよかったのに。だけど、プライドの高い私には向いていなかったみたい。だからかな。
彼のことを想う度にすれ違う思いは私にとって、ストレスだった。もう正直考えたくもない。
彼から自由になりたいと。
特に束縛とかされてないのに。だけど、私にとって気持ちの整理が出来なくて、疲れちゃったみたい。
思い悩んでホントに辛い時、別れることを
友達には相談出来なかった。
私たちの関係をずっと見守ってくれて、
応援してくれた仲で、なにより私が友達に彼氏のことを自慢していたのに、とてもじゃないけど
伝えるのは言葉が詰まった。
LINEで切り出して実際に会って話そう、
しっかり別れの計画も立てた。
どうしてか、不安で怖くて今にも投げ出したくなった。どこかに逃げたい。
自分の妄想が過ぎるだけなのに、逆ギレされるか
とか別れたい理由を問い詰められてしまわないか
不安で不安で仕方なかった。
勇気を振り絞って携帯をとりLINEを開く。
彼に「次の土曜日に話があるんだけど、家にいって良い。」
絵文字もない。いつもなら明るく投げかけてるのに
思い切って送信ボタンを押す。
この日は珍しく早く既読がつき、
「久しぶりに話すね。なにかあったの?」
彼は悩み相談があるとでも思っているのだろう。
まさか別れを切り出すなど知らないで。
「うん。そうなの。だから土曜日会わない?」
今度は既読がつくのは遅かった。このことに
自分が彼に会いたがってるように聞こえて
気恥ずかしくなった。
数分後、彼から
「いいよ。その日はちょうど空いてるから
久しぶりだからゆっくり話そうぜ。」
通知でその言葉を見たとき、なぜかズキッとした。
少し間を空けてから「うん。そうだね。じゃあまた土曜日」
彼もすかさず「ああ、土曜日な。愛してるよ○○。」
こんなときも彼は「愛してる」とか。
…もう言わないでよ。
やめてよ。別れたいなんて、簡単に切り出しにくいじゃん。
そんな心残りのある彼の「愛してる」が目を閉じていても残っていた。数日間、複雑な気持ちでいた。
複雑な気持ちのままその日が迫って、ついに
土曜日がやってきた。
時が経つのはこんなにも早かったかと疑うくらい
一週間は短かった。
三月二十一日、土曜日
午後一時四十五分。その日はちょうど雨が
ポツポツしていてかさで彼の顔が隠れるくらい
傘を下にしていた。
彼は何も疑わず、傘の下の私の顔を覗き込む。
私は一息深呼吸をして、傘を両手に持ち、彼の顔が見えるとこまで傘を上げた。
彼の目を見て、彼の手を見て、彼の口を見て、
今にも涙が溢れそうだった。
声が震えていて喉の前に大きな壁があるみたいで
上手く喋れなかったと思う。
だけど、私は「別れたいです。これからは友達の仲が良いな。今までありがとう。」
すごくすごく怖かった。泣かないで言えていたかな。もう言い残すことはないな。
彼はとっさに「どうして、当然…。」
あーあ。聞こえてたみたい。泣くな自分。
「最近会えなくて、寂しくてたまらなかったの。
でもあなたに寂しいってちゃんと言えてたら
よかった。でもあなたには頼りたくなかった。
心配かけたくなかったから。
イベントや部活などで
忙しいあなたに迷惑をかけてはいけないと
思ったから、それが私には苦しくて仕方なかった。好きでいたいのに苦しいのはもう嫌なの。
だから別れよう。」
言いきれた、言った…。言ってしまった。
バカだな私。まだ泣いちゃダメ。
彼は呆気とした顔を浮かべた。
私が好きだった彼の何を考えているのかわからない表情をしていた。
私はその場からすぐに立ち去りたいと思った。
ちゃんと言葉で伝えられた。だからもう……。
彼は何も言わず…いや何かを言おうとしていた。
けれど、気付かない振りをして私は彼を見つめる。
彼は唇を噛み、目をそらして固まっていた。
ホント、今にも泣き出しそうな顔をしてるの、
バレバレなんだよなぁ。
昔から泣くの我慢するの下手くそだったもんね。
ここにはもういては行けないと帰ろうとした。
彼が「…待って!」
呼び止められたくなかった。これ以上はバカみたいに泣きそうになったから。
「最後だけ、ハグしてくれないか。」
何を言い出すかと思って、立ち止まっていたつもりだったのに、
私の手はマヌケで両手に持っていた傘を投げ捨てていて、いつの間にか彼に飛び込んでいた。
その瞬間我慢してとどまっていた涙も
出てきてしまい、彼に長くて強いハグをした。
ハグしたとき、彼との楽しかった情景が
浮かび上がる。とっさに離れたくないとも不覚にも思ってしまった。
あぁ、こんな私最低すぎる。ちゃんと寂しかったって言えてたらこんなことにならなかったのかな。
自分から別れを切り出したのに自分がこんなに
泣いて情けない。
泣いてはいけないはずなのに、どうして溢れ出してしまうのだろう。
涙は雨の共に混じり合い地面に去っていた。
彼との最後のハグをしてからわずか3分が経った。目が赤く腫れていた。彼の方が私以上に耳まで真っ赤に染め上がっていた。
ハグをしていた両手をゆっくり離し、距離を取る。
ほんのり目が赤い私の目の前に映るのは、
今まで見たことのないくらい顔がぐしゃぐしゃになっている彼だった。
こんな一面もあったんだと染々するもこの関係は、もうおしまい。今度こそ最後の会話になる。
「さようなら。本当に今までありがとう。」
涙がピタリと止まり、とっさに出たのはマンガを音読するような言葉。
「…じゃあな。お前と過ごす時間は楽しかった。今日までずっと愛していたよ。これからは友達としてよろしくな。最後だから………………○○、愛してる」
彼の言葉を耳にして、頷きもせず彼の前から走り抜けた。そして私が彼に振り返ることはなかった。
最後の会話にも「愛してる」と言った。
「愛してる」なんて言葉が重すぎる。