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シオン
132
#大正時代
井川奎
269
98
#ヒューマンドラマ
井川奎
87
月面に熱烈な感情を抱いてなさる
月面は如何に奇麗で、大衆が月を好む理由も分かる
月は如何に私達と離れて、離れて、哀しき感情を小綺麗な長糸の様に背負わせよる。
月面は触れられぬ、この時代は激動じゃ、けど人にゃ触れられぬ
大衆は理解してらっしゃる。陽光よりも月光の温もりを
蛾は知っている。月光が悲願の温もりと、
けど、他を触れずに、某を見る月面に熱烈な感情を抱いている
桃のように甘酸っぱく、檸檬の様に苦く、桜の様に叶わない感情を
某は抱いている
和畳で月光の届かない庭で、某は月面を望んでる、悲願の月光を望んでる
某は月面を観察していた、雪よりも白かにゃいし日よりも輝かやしない、
けどこの意識の中で最も美しい。某の月面
脳無しの円形、誰よりも輝かしい円形、嗚呼、気に召した
嗚呼、月面の気高き肌に触れたくなってらっしゃる
頬も肌も無いけれど、白き温もりに触れたいのです
深い色のベールを被った壁に掛かる。一筋の光
良薬にゃ飲めんほど、夢物語に誘う美しさにゃあ恐れる
夢幻の神に、妬みを抱かせる輝かしさ
この言語も超えない、辞典が足りない暑く湿り気がある感情
某はどうしたら良いのでしょうか
毎晩啜り泣くのです、哀れな生き様を月面に晒しながら
毎日思うのです、白き月面を
夢幻の神に抱いた感情を、白き輝きに抱いてしまうのです
紫陽花が咲く湿り気が、風を求める暑さが、果実の様な明るさが、手のような温もりが…………
某は蛾の様な大衆
理解している脳を、感情によって忘れさせているのです
木材の机に広がるは良薬
もう良薬さえも飲んだら良い脳なのです
感情が足りなくて、良薬で、果実の様な明るさで、欲していたのです
薄黄色の畳に広がってゆく良薬
湿り気がする布団
梅雨がある瞳
「嗚呼、月面は実に綺麗ですね」
何故良薬さえ飲まなかったのでしょう
それは貴方の美しさ
何故良薬を飲まなければいけなかったのでしょう
それは貴方の美しさ
私は良い子でしたよ。4等星のように惨めでしたけど
コメント
1件
るるさん、第4話読みました! 文体がめちゃくちゃ詩的で、月面への熱烈な感情がひしひしと伝わってきました。特に「某」という一人称と「蛾の様な大衆」という自己認識の対比が印象的で、月光に焦がれる切なさと、触れられないもどかしさが胸に刺さります。 「良薬さえも飲んだら良い脳」のくだり、感情の渦に飲まれてしまう人間の脆さを表現していて、すごく好きです。言葉選びのセンス、光ってますね🔥