それでは本編へ!!
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オーストラリア「史上最悪の世界大戦からこんにちは‼︎オーストラリアなのです‼︎‼︎」
ニュージーランド「同じくANZAC所属上等兵衛生兵のニュージーランドです‼︎‼︎」
オーストラリア「え!?今なにしているかって⁉︎」
ニュージーランド「ヒッ、、、!」
機関銃の弾がニュージーランドの爪先寸前まで飛んできた。当たった地面は抉られ、間違いなく今無茶をして出れば体中穴だらけになってお釈迦だろう。更にこの塹壕は一方通行なので逃げ込める場所は殆ど無い。
その恐怖に震え上がり二人は動けずにいた。
オーストラリア(どっどっどうする⁉︎何か相手の視線を誘導できる物、、、、、、、、、あ‼︎)
オーストラリアは何か思いついたように目を開いて狙撃銃をニュージーランドに突きつけた。
いきなり銃を押し付けられたニュージーランドは一体何をするのか分からず兄を見上げた。
オーストラリア『ニュージー‼︎帽子を脱げなのです‼︎』
ニュージーランド『なっなんで‼︎』
オーストラリア『銃の先に帽子をつけて敵から人に見えるように動かすのです‼︎』
必死に叫ぶ兄の言い分を理解したニュージーランドは、これは成功しなければならない!と深く頷いた。二人は前後を位置を交代しニュージーランドは帽子を取った。
チャンスを一度きり。勢いで倒さなければ次は無い。
二人は手榴弾を持ち合わせていなかったのだ。
ニュージーランドは張り詰めた空気に息を呑んだ。銃を握る手にじんわりと汗が滲んだ。
ゆっくり、だけど人のように帽子を木箱の影から出した。
敵の機関銃はいつまでも出てこない彼らにイラついていた。すぐに機関銃の銃口はその帽子目掛けて照準が合わせられた。
オーストラリアはそれを少しも見逃さなかった。黒い一点だった銃口が曲がり敵の完全に片割れの弟の方へ向いている。
オーストラリアは身を低くして拳銃の銃口を相手の脳髄にしっかりと合わせた。
引き金を差す強張った人差し指をオーストラリアは引いた。
そして数十メートル先から倒れた音が聞こえた。
二人は決死の作戦が成功した事と安堵と共に顔が緩んだ。
オーストラリアは射撃に成功するとニュージーランドの顔を見ずに「ナイスです。」と小さく言った。ニュージーランドは兄の顔を一瞬だけ見た。
安定した連携が取れている事に兄は少し口角が上がっていた。すると兄の口から何か垂れているのが見えた。
ニュージーランド「‼︎、兄さん血が。」
オーストラリア「!、、、唇が切れただけだよ。」
紅い血を垂れ流す口を上げて、苦笑するオーストラリアの頬にニュージーランドは絆創膏を寄せた。
ニュージーランド「俺は衛生兵だけど安全第一は兄さんだから、、、俺は人を殺せないから。」
真面目に語るニュージーランドにオーストラリアは目を丸くして、やがて笑った。
オーストラリア「あいがとうございます。じゃあ行くよ。」
ニュージーランド「うん。」
二人は道中のオスマン兵を倒しながら丘の斜面に立つ無数の赤い旗を目指して駆け上がった。
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四倍に拡大された双眼鏡越しに見えるのは上陸した敵が次々と倒れてゆく姿だった。
オスマン「よし、、、。」
オスマンは双眼鏡を下ろし広がった戦場を鋭く眺めた。丘の山頂では敵軍の崩れた態勢と自軍の優勢を一望できた。その状況に肩を下ろし、安心して後ろを振り向くと、近くにいる兵士に声をかけた。
オスマン「よし。ある程度敵が少数になってきたら足を狙え。」
オスマン兵「は!、、、殺さなくても良いのですか?」
敬礼をしたオスマン兵の機関銃手は眉を寄せて不安そうに問うた。オスマンは再び沈む日に照らされた地を見た。
オスマン「敵の足を刈れば呻き声で戦意が消失し敵方の士気も落ちる。怪我をしている味方を見殺しにはしたくないはずだ。」
オスマン「、、、わかりました。」
機関銃手が話の内容が分かり機関銃を手にかけた時、オスマンは声を鋭くして忠告した。
オスマン「それと。敵の中に素人兵に紛れて精鋭部隊がいる。そいつらは容赦なく殺せ。」
機関銃手は敵に精鋭部隊がいる事に驚きつつも首を縦に振り、機関銃の銃口を標準に合わせ出した。
オスマンは士気を上げる為、大声で砲撃隊の指揮を取った。
オスマン「標準は今まで通り沿岸部に固定したままでいい上陸させるな‼︎もしも間合いに入ってきたネズミは機関銃で援護射撃をしろ‼︎怪我人は早急に交代だ。」
体格が良い砲撃手達は口を揃えて己を鼓舞するように「おう‼︎」と叫んだ。その命令通り標準は沿岸部に、砲台の周りには砲弾箱がズラリと並んだ。
オレンジ色の光に照らされた銀色の砲弾はオスマン兵に恐ろしく頼りにされている兵器だ。逆に敵からしたら脅威でしかない。
この時代になってからは、皆んなの戦争「総力戦」として貴族だけの特権だった戦争は全ての人の戦争となった。そして貴族の武器は皆の兵器として進化した。
オスマン兵「大尉殿は何を?」
首を傾げるオスマン兵を見て、オスマンは首を回し周囲の状況を見渡した。そして再びオスマン兵に視線を合わせた。
オスマン「西側は機関銃、砲台の死角になる。奴らが狙うのはこのルートだ。俺はそこの袋に溜まったネズミを狩る。」
オスマンはヘルメットの緒を締めた。ヘルメットの影になり暗くなった口許は口角と同時に顎のヒゲも上がった。
オスマン(にしても最初の上陸こそイギリスの姿が見えたのにどこへ消えたんだ?やはり陸は合わずあの軍艦に戻って砲撃しているとかか?いずれにせよ、、、あの悪魔を殺らねば。)
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周りは真っ黒になり、ただ真っ赤な色彩を放つ血の色だけが違う色。後の風景は灰のように白黒だった。ただそれが恐ろしかった。
火花が残酷な戦場に咲いていた。焦がすのは骸となった人間の姿。強烈に甘くむせる程の腐った匂いに目眩がした。
フランス「、、、、、、。」
殺してしまった。この僕が。
己の心臓の鼓動が不規則になっていっている。
しかし周りに倒れ込んでいる兵士達は寂寂と止まっている。自分がその全ての者達の鼓動を止めたように感じ、自分の手が気色悪くて悪気が走った。
今止まっていたら殺される。殺される前に殺さねば。
フランス「スゥ、、、、、、。」
震えながらフランスは深呼吸をしてなんとかして足を動かそうとした。
イタ王「大丈夫なんね?」
フランス「、、、大丈夫。行ける。」
フランスは辛うじて返事を返した。イタ王はその言葉に微笑み、二人は再び西側のルートを目指した。震える足を振り絞り、血が滲んだ坂を駆け上がった。
その時だった。
懐かしい雑音。
自分の脳髄をすり抜けたのはサプレッサー付きモーベルの小さな弾。
フランス「あ“ッ、、、、、、?」
急にイタ王の背中が逆向きになった。重力が反転したのか?
違った。
理解できたのは息ができない事に気づいた時だ。
強烈な痛みが走り出し、口は魚のようにパクパクと震えた。それ以外の感覚が完全に消え失せていた。
血が滲んだ視界では、ぼやけて消えてゆくイタ王の後ろ姿が見えた。
自我は遥か遠くの真っ白な世界に飛ばされた。
フランス(死____……)
頭がスー…と軽くなるのを感じる。不思議ととても心地よく、楽に感じる。
これから死ぬのだな。
走馬灯すらも見えず、力が魂ごと抜け落ちるのを感じた。
「r、、、sh、、、」
遥か遠くの世界で何か喚いている。
あれは一体?
、、、僕は。
オーストラリア「ニュージー‼︎重症だ‼︎頭を撃ち抜かれている‼︎」
ニュージーランド「わかってる‼︎」
ぼやけて霞んでいる視界の隙間から特徴的な4つの星が見えた。友軍だ。
遠くの世界に片足を突っ込んでいた自我はその声と共に跳ね上がった。
フランス「う“ッ、、、ッ、、、」
オーストラリア「ッ!、、起きたッ‼︎起きたのです!!」
ニュージーランド「ッ、、、今直ぐ応急処置をしないと!死なずとも、後遺症が残ってしまう‼︎」
二人の影が自分を必死に蘇生しようとしているのがわかった。
けれどもそれよりも、もっと優先する事がフランスの中にはあった。
脳がまともに動かないはずなのにフランスは唇を震わせて、とても大切な事を言おうとした。
今直ぐに知らせなければ。死んでしまうかもしれない。
イタ王はフランス自身を撃った者に気づいていなかった‼︎
フランス「あ“ぅ、、、サプッヘッ、、、。」
オーストラリア「え、、、?アッ喋らなくていいのです‼︎」
ニュージーランド「、、、、、、兄さんまだフランシアを撃った奴が近くに居るかも知れない‼︎」
想いが伝わったのか、ニュージーランドは必死に叫んだ。それに反応したオーストラリアは周囲を一瞬ぐるっと見渡した。その時に視界の隅に見えた白いマントを身につけた兵士を見つけた。
、、、目があった。
奴だ。フランシアを撃ったのはアイツだ‼︎
狙撃兵の一騎打ちは相手の存在を知ってから直ぐに始まっている。遠くにいる白マントの兵士の銃口が一点になり黒点となった。
自分を捉えている。
オーストラリア「ッヅ、、、‼︎」
ほんの数コンマ、オーストラリアは右へ避けた。瞬きする速さで弾はヘルメット上部を通過した。通り過ぎた弾は地面を抉った。
オーストラリア『ニュージー‼︎うつ伏せになッれ。敵が居た。』
ニュージーランド『、、、』
オーストラリアは弟の違和感に気づくと、往復全身で近寄った。そして、、、その絵面に思わず、何かが吹き出しそうな口を押さえた。
ヘルメット、頭部皮膚、頭蓋骨を、通り抜けて血で膨らんだ脳味噌が見えたのだ。お腹がヒュッと縮こまった。
オーストラリア「え、アッれ。」
その姿に何も吐けなくなった。見ているこちらも息が止まった。ニュージーランドは下唇を食い縛り、言った。
ニュージーランド「救ってみせる。兄さん、、、。」
目だけがこちらに向いた。澄んだ赤い目が。
オーストラリア「、、、あぁ。“行ってきます“。」
弟の澄んだ冷静な顔を間近で見た。オーストラリアは目を鋭くして敵を見た。背負っていた狙撃銃を手に取り、殺意が上がってゆくのを感じた。
狙撃兵と言うものはいつも冷淡で冷酷で無ければならない。
敵を欺き必殺で殺すには、己の全てを殺して無に返す事が必要なのだ。そのナイフを弟からもらった。
兄のオーストラリアは今弟がどんなに黒く噛み乱された気持ちを持っているのか知っているから。
この戦いで少しでも独立に近づく為。
目の前の弟、友人を救う為。
その為に己を消す為。
考えてはいけない。
と考えてはいけない。
感覚を指先の一本一本まで集中を研ぎ澄まし、意識を獲物に見据えた。やがて呼吸すらも支配下に置いたオーストラリアは引き金に指を差し置いた。
白き集中に、無に返した意識が一つの赤き意思となった。
撃て。
引き金を絞った。銃口から放たれた弾丸は一直線の弧を描いた。
スコープ越しにオーストラリアは倒れるのを…
オーストラリア「は?」
撃った弾は奴の体に当たり、跳弾してどこかへ消えた。その現象にオーストラリアは目を開いて理解した。
オーストラリア「装甲兵ッ‼︎」
オスマン「おー?多分こちらの装備に気がついたようだなー。」
狙撃銃のスコープで拡大されたオーストラリアの焦った顔に、オスマンはニヤリと笑った。
オスマン「ドイツのにーちゃんから借りたこの装備は中々に良いなぁ‼︎」
敵の一撃を持ってして己の装備に惚れたオスマンはジャラジャラと装備を鳴らした。
オーストラリアはこの事実を真に受け入れてられず。焦って薬莢をしてしまった。そのせいだろうか、ボルトが抜けて銃は壊れて使えなくなってしまった。頭ん中が真っ白になった。
オスマンは小声で「反撃だ。」と言い、額に汗が昇るオーストラリアの頭に標準を合わせた。オーストラリアはその殺気にこめかみがピリッと痛んだ。
けれども どこか違う。狙撃兵に無い、ぐつぐつと煮えたぎる殺気だ。
オスマンの体はなぜか震えていた。なんだこれは、後ろから猛獣に喰われそうな感覚がした。遠いのに直ぐ側まで迫ってきている、物凄い存在感を放った足音。
オーストラリア「イタ王‼︎」
イタ王「ハハハハ。」
シルクの白い軍服が真っ赤に染まっていた。中の黒いワイシャツのように目が虚で黒く光っていた。
それはまるで____
オーストラリア「魔女だ。」
彼は踊るように数人の敵を嬲り殺しにしていた。
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破 第二十九話『踊り狂う』 完
それではまた戦場で。
コメント
2件
実際の戦法が使われてたり、戦でしかみられないような形容しがたいグロさすごい表されててめっちゃすごいしかっこいい!