合格発表から数日。少しずつ春が近づく中、陽はずっと考えていた。
卒業式を前に、どうしても伝えたい想いがある。
——このままじゃ、絶対に後悔する。
陽は澪を呼び出した。
場所は、2人にとって特別な場所——あの図書館の裏庭。
春の気配を乗せた風が、2人の間をやさしくすり抜けた。
「……澪」
陽はぎこちなく、でもまっすぐに呼んだ。
澪も、ふっと笑って、陽を見つめ返す。
「ずっと、言いたかったんだ」
胸の奥から、言葉があふれ出す。
「俺、ずっと澪のことが好きだった。……これからも、ずっと一緒にいたい」
静かな空気の中、陽の声だけがはっきりと響いた。
澪は少しだけ驚いた顔をして、それから、ふっと微笑んだ。
「……私もだよ」
そして、小さく声を震わせながら、こう続けた。
「ずっと、待ってた。」
次の瞬間——
澪は陽に、ぎゅっと抱きついた。
まるで、これまでの不安や迷いをすべて包み込むように。
陽もそっと、澪を抱きしめ返した。
心臓の鼓動が、お互いに伝わるくらい近くで。
——春の匂い。
——あたたかな風。
世界に、2人だけしかいないみたいだった。