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あなたは、もし私だったら私が、もしあなただったら
抗う力もあったのかもしれない
笑い合う仲間がいたのかもしれない
手のひらに溢れる幸せがあったのかもしれない
私には
虚無の時間だけだった―――
スメールシティ、スラサタンナ聖処近く
スメールに似つかない和の服装
エメラルドグリーンに光る風を帯びた神の目
特徴的な青い笠
「…またいたのか」
「…えぇ」
距離を保ったまま二体が会話らしくない会話をする
「…僕は君みたく暇じゃないんだ、君の戯言に付き合いなんかしないよ」
「……」
目を合わす
「…ちっ…君は、本当に目だけ似ている」
横を通り過ぎる
「…バアルゼブル(あいつ)に似ている」
小さく呟きながら
から…ころ…と音が遠ざかる
「…知りたい」
物が呟く
何が
分からない
何を
知らない
だけど、何かが知りたい
彼から感じる何かを、知りたい―――
「…また来たのか。相変わらず暇なのかい?」
うんざりした顔
「…えぇ」
変わらない返事
「…大体、なにも言わずに来て、何の用?その場に突っ立ってるだけで、意味がわからないね」
押し退けようと肩を軽く押す
手を引っ張る
「…知りたい」
「…はぁ?」
近寄る
「あなたの、生きる理由」
「…はぁ??」
警戒したように手を引っ込める
手を引っ張る
「っ…君、力強いところはあいつに似てるんだな…意味わからないこと言ってないでさっさと離しなよ…」
睨む
「…知りたいの」
手を引っ張る
近寄る
「…僕の生きる理由?」
「うん」
手を引っ込める
手を引っ張る
「っ…全く…」
ため息
「…今の僕にそんなのないよ、なんの目的もない。」
…疑問符
「…なんで生きてるの?」
「……」
手を引っ込める
手を引っ張る
イラつき、焦燥
「…なにそれ、僕のこと煽ってる?」
「…なんで」
手を振り払う
手を引っ張る
手を振り払う
「……」
「…程度を弁えなよ」
「…なにが」
「…そんなことを聞くなって意味だ。君も長い時間生きてきた筈だ、そのぐらいわからないのか?…あぁ…そうか」
「なにも感じなかったのか、僕と違って」
…感じない
「教えてやるよ。君と僕の決定的な違い」
…違い
「君は何も感じなかった、何もかもだ」
「喜怒哀楽も、痛みも裏切りも何もかも」
…感じない
「…得たことがなかった」
「…僕の生きる理由を知ったって、君は僕を感じられない」
「なにせ、感じることができないからさ…!」
…感じない…?
………
「わかったなら僕に関わるのはやめろ」
なにも、感じない…?
―――で
「どうしているんだい?」
「…」
「黙ってばっかじゃわかんないんだけど?」
肩を軽く押す
「…知りたい」
「また?僕の生きる理由を?」
「違う」
「……じゃあ何を?」
「…感じ方」
「…」
「あなたとの違いが感じることなら、あなたといれば、感じられる…と思った」
「…馬鹿なのかい…?」
ため息
「…そもそも、僕以外に適任はいるだろうし、僕についてくる必要なんて――」
「あるから言ってる」
距離を縮める
「っ…」
「私と一緒のあなたなら、わかるから」
「…ふん、根拠もないことを」
背を向ける
「…勝手にしたら?」
「…そう、勝手にする」
足音が二つ
「はぁ…本当に勝手にするのかい…?」
「…知りたいから」
「…君の何がそこまで引き立てる?」
一つが止む
「…私が」
「……私が、普通に焦がれてるから」
「…!」
止む
「…なら、僕についてくる必要はないね」
「やだ、私が知りたいから」
「もう知ってるだろうに」
「知らないから」
二つが響く
「…人には、名前があるらしい、あなたもあるの」
「……今は…特に名乗ってない」
「やっぱり」
「はぁ?やっぱり煽ってる?」
「別に」
「ちっ…………___」
「…?」
「…たまに、そう呼ばれる」
「…___、___…」
「連呼するな、一回で伝わる…君もどうせ名前がないだろう?」
「…うん、ない。」
「人に焦がれるなら、まずは名前の一つぐらい作ってきたら?」
「…名前は、生まれてから初めて受け取るプレゼントだって」
「…なにそれ?つもり何が言いたいの?」
「私に名前をつけて」
「…はぁ…?」
一つが止む
止む
「…なんで僕が」
「周りにあなたしかいないから」
「別のところにでも行ってきなよ」
「それに」
「あなたのセンスも、少し気になる」
……
「…文句言うなよ」
「言わない」
「―――光深」
…
「…みつみ…?」
「…文句ある?」
「…いや。」
俯く
「…ふん、別に気まぐれに考えただけだ、気に入らなかったら忘れてくれて構わない」
「……」
響き
黒くない響き
「…!その顔…」
「…?」
「…やっぱり、僕はいなくていいね」
足音が一つ
「…!待って…」
…二つ―――