コメント
2件
おれはどうやら……不思議な2人と出会ってしまったようだ。
……え?どんな2人かって?
じゃあ、おれと一緒に見てみよう!
1、早朝の登校
もみじが色づき始めている10月後半、おれ……社会レキは朝早くから学校へと向かっていた。
その理由は、おれが所属している新聞委員会の担当日だからだ。
それにしても……そよ風が冷たい。
(だんだんと寒くなり始めてる気がする。でも、決して過ごしづらい気温でもないからな……秋本番も間近なのかもしれない。)
そう思っていると、後ろから足音がした。
誰かが走ってきてる?
後ろを振り向くと、1人の女の子が顔を少し赤くしながらこちらに向かってきていることに気がつく。
「お、まるちゃんおはよう〜!」
「レキくん、おはよう!」
赤いボブにエメラルドのような色の目が特徴の花丸円ちゃん。おれはまるちゃんって呼んでるんだけど……優しくて明るくて…とにかく可愛い女の子だ。
「まるちゃんももしかして委員会のことで早く学校に行くの?」
「うん!もしかしてレキくんも??」
「新聞委員会のことで色々とね〜。」
「新聞委員会、朝早くから活動してるよね。カメラで写真撮って新聞作って……すごいなぁ!」
そう言いながら、花丸満点な笑顔をこちらに向けるまるちゃん。
真っ直ぐな褒め言葉に褒めがゆくなる。
まるちゃんに褒められると正直結構照れるんだよね……。
嬉しいって気持ちはもちろんあるんだけどさ。
そう思っていると、話は別の話題に変わっていく。
「そういえば、レキくん、昨日もあの神社にいなかった?」
「ん?あ、見かけたんだね。そうそう、あそこの神社の隅で遊ぶの好きなんだよな〜。」
おれの住んでいる寮(別の男子3人と一緒の部屋で暮らしてるよ!)の近くにある稲荷神社は普段からなにかとお願いごとをしたり、狐みくじを引きに来たり……色んな人が来る神社だ。
そんな神社の一角で、おれとクラスメイトの1部はある人に教わった昔の遊びをして時間をつぶすのがプチ流行していた。
ある人というのは……
「おはようございます、2人とも。」
「あ、カンジくんだ!」
「おはよう〜。まぁ、朝も会ったけどね。」
「そうですね。」
黒髪が特徴の男子、国語カンジがこちらに来て話に加わっていた。おれと同じ寮の部屋で暮らしている1人だ。
優しくて礼儀正しいけど……実は意外と強気な1面もあるんだよね。
いつの間にかまるちゃんがさっきの会話のことをカンジにバラし始める。
「カンジくん、聞いて!またレキくんが神社で遊んでたんだよ〜?」
「またですか?……全く、俺はあれ以来やっていないというのに……きっと、お稲荷さんもその眷属のキツネたちも迷惑に思っているはずですよ。」
そう、カンジがこの神社遊びをプチ流行させた張本人だ。
きっかけは、クラスメイトと放課後遊ぶ約束をしてたこと。集合場所がたまたま稲荷神社だったみたいで、なかなか揃わなかったから駒回しやあやとりをしてたら、クラスメイトの1人に見られて広まっていったんだ。
……遊びすぎるのは、さすがに神様達に呆れられそうだな。ちょっと控えよう。
そう思っていると、まるちゃんがこちらを不思議そうに見つめたあと、目がまんまるになる。
「……え?お稲荷さんってキツネの事じゃないの!?」
どうやら、カンジの言葉に驚いたようだ。
おれは早速お稲荷さんのことを話し始める。
「そうなんだよね。お稲荷さんは稲荷神社の神様のことで、稲作・農業の神様として信仰されているんだ。稲作の豊凶は、昔から日本人にとって生活に直結する大きな関心事だっだんだよ。だから、稲作の神様であるお稲荷さんへの信仰は全国へ広まっていったと考えられているんだ。」
おれが言葉を切ると、カンジがおれのあとに続いて言う。
「今では稲作・農業だけでなく、衣食住、家内安全、商売繁盛、厄除など生活全般のご利益があると信仰されています。つまりお稲荷さんは生活に密着した神様なんですよ。」
「生活に密着……すごいなぁ……!」
目をキラキラと輝かせてこちらを見るまるちゃん。
その目はまるでもっと聞きたいと言いたげな感じだった。
興味を持って貰えたことが嬉しくておれはもっと深く話す。
「キツネはあくまでその神様の使いってところかな。大昔、おれたちのご先祖様たちは、キツネを神聖な動物として捉えてたんだ。キツネが農事が始まる春先から秋の収穫期にかけて里に降りて姿を現して、収穫が終わる頃に山へ戻っていく。その行動から農耕を見守る守り神のように考えられていたんだって。」
「へぇ〜……!……あ!今度行ったら油揚げを置いていこうかな!」
まるちゃんがひらめいたように言う。
カンジがすかさず「いいですね」と賛成して言葉を続ける。
「もしよければ、俺も一緒に行きますよ。」
「おれも行きたい!みんなで今日にでも行こうぜ!」
「わかった!放課後、1組の教室に集合だね!」
昨日も行ったけど……でも、まるちゃんたちと行くのは久しぶりだから楽しみだな。いい時間になるといいな……!
そう心で思いながら、おれたちは学校へと向かった。