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──────めめさん視点──────
バラは目をぱちぱちとまばたきさせ、私をじっと見つめる。その目は、期待なんかで早く、疑念の意を込めた目だった。
───もう一度、魂を見てみる。感情の状態を見てみるが様々な感情がいりまじり、複雑なものへと変わっている。…皮肉なものだが、頭が良ければ良いほど世界に絶望し、馬鹿なほどこの世を楽しみやすい。努力した者が報われないのはこういうことでは無いだろうか?と、神の癖に何一つ現状を変えなかったものが物申す。まあ、私の神の座なんて名ばかりではあるが。
「なんで、なんで俺を…?」
バラは私の目を見て聞いてくる。その瞳には薄い希望が乗せられていた。しかし、私は変な期待なんて、希望なんて与えない。ただの事実を突きつけてなお、やる、と言うならば部下にする。
「使えると思ったからです。強い能力を持ち、倫理観も外れてなく、従順に従う存在。それが欲しいんです。私は。」
「───めめさんッッ!!!」
「事実を述べたまでです。私は、私の目標を達成するためならなんでも犠牲にします…!!」
「そんなこと____ッ!許されるわけないでしょうッッ!!!!神でありながら…!!」
「神だから、なんですか?何でもかんでも優しく、慈悲深くあれと?…理想像を押し付けないでください。私は無責任に死を撒き散らす死神なんですから。」
「死神はそんな神ではないです!地上で頑張って生きた魂を、天界にまで運び、悪者を転生させて更生させる素晴らしい神で───」
「…死神はそんなんじゃないです。いや、そうだったんでしょうね。でも、私は違います。同じにしないでくれませか?」
「…!!めめさんは、めめさんはそんな人じゃ───」
「みぞれさん。これ以上何かを言うのはやめてください。───言いたくありませんが、非常に不愉快です。あなたの慈悲深さは尊敬しますが、誰しもがなれる訳じゃないんです。」
「____な、んで…..。」
一方的な押しつあいの討論が冷水をかけられたかのように終わる。みぞれさんの優しさは誰に対しても発生する。そこは少し困りものだな、なんて思いながらバラに向き直る。私とみぞれさんが話していた間にバラは決めたらしい。
「───殺してくれ。もう、何もしたくないんだ。役になんてたたなくていい。とりあえず、何も考えたくない。」
「それがあなたの選択と言うならば。私はそれを受け入れましょう。」
私は鎌を取り出す。鋭利な鎌は今は、より一層尖って見える。青白い魂の光が鎌に反射し、キラリと光る。
「今まで、お疲れ様でした。」
私は、2度目の勧誘の失敗を痛感しながら鎌を振りおろす。
「ありがとうござ───」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈スカッ
そんな拍子抜けした音で鎌はバラの肉体を貫通する。しかし、バラは魂が抜けたかのように瞳から光が消え、自身のからだから力が抜けたかのように地面に倒れる───前に、その肉体は光となって消えていく。サービスだ。せめてもの弔い。神に弔ってもらえるなんて運のいい男だと、皮肉ってみる。が、もう返事はない。
魂をランタンに入れ、回収し、みぞれさんに向き直る。彼女の目からは一筋の涙が零れ、美しい瞳を閉じて手を合わせる。まるで、神に祈るかのように見えたが、違うのだろう。…違いますよね?
「みぞれさん。大丈夫ですか?」
まるで、長年の友とでも言うようにみぞれさんは涙を流す。しかし、私の方がバラとは付き合いが長いはずなのに、涙は出るところか、悲しいと言う感情すら出てこない。いつからか、そう思うと───めめ村作ったその時からめめ村以外のために何かを感じたことがなかった。なるほど、そこから私は…いや、これに関しては元々か。なんて自身を嘲笑いながらみぞれさんの返答を待つ。
みぞれさんは手で涙を拭い、そして、力強い顔を見せてくれる。
「…大丈夫です。それと、先程は強く言いすぎました。めめさんも、考えがあってのことでしょうに…少し、カッとなってしまいまして。生き返ってすぐだからですかね…wあまり頭が回らないみたいです。」
───やめてくれ。そんなに優しくしないでくれ。謝らないでくれ。私の醜さが、汚さが、エゴが、腹の底が見え透いてしまいそうで、怖くして仕方がない。どんな聖人にも裏があるべきだ。汚いところがあるべきだ。生きる者は全て、そんなものを持ち合わせるべきだ。持ち合わせるべきなのに…!!
…あぁ、わかってしまった気がする。本来なら、みぞれさんが神になるべきだったんだ。私なんかは泥水を啜って生きていればよかったのだ。そんな、事実を突きつけられている気がする。やめてくれ。本当に。これ以上私を否定しないでくれ。
「大丈夫ですよ…行きましょう」
「はい!」
私は、笑って、みぞれさんにそういえば、みぞれさんは嬉しそうに頷く。
やっぱり村民達には敵わないな、なんて当たり前のことを思いながら私とみぞれさんは鏡を通る。
───鏡に最後に映ったのは嬉しそうに笑う、みぞれさんのそっくりさんと、バラに囲まれた青年だった。
ここで切ります!間に合わないと思ってたんですけど間に合いました!いやぁ、頭痛が酷くて書き切れるか不安でしたが…無事に書けてよかったです!バラについてですが…最後まで処置に迷った人です。めめさんの部下として行かせるか、本当に殺してもらうか…個人的にこういう小説系でモブ(オリキャラなど)がでしゃばる展開嫌いなので切らせてもらいました。まあ、モブとしてはみぞれさんとめめさんが決定的に”何か”が違うことを知らしめる役、としては良かったと思います。影はまだ本人だから〜みたいな理由で自分は納得できるんですけど完全オリキャラで強いっていうのは…うん、嫌いです。けど、なんか拒否反応があんまりでなくてほんとに迷いました…。
それでは!おつはる!
コメント
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春さんが死神より死神してる気がする…