『幸せになってね』_______.
*
これは5年も前の話。
『もし___が良ければ俺と付き合って欲しい。』
「えっ、あっ、冗談…!? 嘘コクとか…!!」
『本気で好き。』
「お、お願いします…!!」
『まじ!? やった。じゃあ今日一緒帰ろ』
「へへっ笑 うんっ笑」
田中樹。
高校が同じでだんだん気になり始めてたんだけど、
恋愛に疎い私にはハードルが高いって友達に言われた。
だけどまさか向こうから告白だなんて、
好きになられてたなんて知らないから、
嘘コクかと疑ったけど本気で、すごく嬉しかった。
「付き合っちゃった〜…!!」
[えーおめでとう!! あんたには無理だと思ってた。]
「私をあまり舐めるなよ?笑」
『ん、___!!!』
「あ、じゅりくん」
『昼一緒に食べね?』
「食べたい、!!」
『あはっ笑 じゃー、昼な』
「はーいっ」
[おいおいイチャイチャすんなよー笑]
「してませーん笑」
こんな平穏な日々が一生続くって誰しもが思うだろう。
人生はそう上手くいかないんだ。
『ごめん呼び出しちゃって。』
「ううん!! じゅりは何頼む?」
『…..今日で会うの最後にしよう。』
「….え…?」
『もう終わりにしよう。これで好きなもん食べて。』
『幸せになれよ』
そう言ってテーブルの上に置かれる半分に折られた1000円札。
「ちょっと待って」
なんて言葉が出なくて、彼の背中を追いかけることすらも出来なかった。
公共の場だし、泣けない。
1周まわって涙すらも出なかった。
彼が私の前から消えて1年。
ぽっかり穴が空いたみたいで、全く生きてる心地がしなかった。
学校にもいない、電話も、LINEも何も繋がらなかった。
彼の家に行ったりもしたけど、本人が出てくることはなかった。
なんで。
どこに行っちゃったのさ。
なんで。
なんで私の了承なしに居なくなったのさ。
「じゅり….」
あぁ、この1年頑張ってじゅりの記憶消したはずなのに。
会いたい。
会いたいよ。
おこがましいとわかっていながらも、彼の家に行ってみることにした。
ピンポーン
「___です。」
『今行きます』
来い、来い…と心の中で願いながら待つ。
と、出てきたのはお母さん。
『なんでしょうか…?』
「じゅり….くんは居ますか?」
『……彼女さん..??』
「過去ですけどね…笑」
『ちょっと待っててね、』
2,3分ほど待って『はい』と渡された手紙のようなもの。
「あの、」
『おうちでゆっくり読んでね。』
『じゃあね。ありがとう。』
ーー
家に着いて部屋に入って早々、私は貰った手紙のようなものを開ける。
そこには見慣れた彼の可愛らしい文字で、便箋にびっちり書いてあった。
___へ
誕生日おめでとう!!とか書いてみたけど見てる日いつかわかんないな笑
文字汚くて読めなかったらごめん
あのとき、勝手に別れちゃってごめんね。
おれ、もう時間なかったから笑
病気あってさ、手術しても持って何ヶ月ですって言われちゃっててさ。
___と付き合ったとき、言おうか迷ったんだけど___が心配するかも
って思ったら申し訳なくて言えなくてさー。
最後だったのに、___の悲しそうな顔見たくなかったし、
悲しそうな顔させたくなかった。ほんとごめん。
もう気ずいてるかもしれないけど、
もう俺___と同じ世界に居ないんだよね。
あーなんかもっと早く出会ってればなー
まじで不甲斐ないわ。
寂しくなったら、俺の名前呼んでみ?
___の声聞こえたらすぐ抱きしめに行くから。
人生最後、幸せにしてくれてありがとう。
幸せになってね
樹
「気付くって“つ”に点々だし….笑」
こんなの泣くに決まってる。
最後の文字、滲んでるけど涙かな。笑
そんな重い病気言ってよ。
もっともっともっと、じゅりと思い出作りたかったよ。
じゅりの最期、立ち会いたかったよ。
「じゅり….寂しいよ、会いたいんだよ…!!!」
『何言ってんだよ笑 俺ここに居るよ笑』
あれ?
じゅり、居るの…?
部屋を見渡すけどどこにもいない。
封筒の中、まだなにか入ってる。
「ネックレス…?」
このネックレス、じゅりが付けてたやつと同じ…
俺が付けてたやつ。
いつでも身につけておいたらいいこと起こるかもよ
そんな言葉が書かれたメモ用紙。
本当に彼はこの世に居ないんだと確信した瞬間だった。
*
[てか___あれから恋してないの?]
「してないねー笑」
[ほんと大好きだね笑]
「じゅりのことだし、他の奴と早く幸せになれ!!とか思ってんだろうな」
『ほんとだよ。俺の事気にしなくていいから』
「あっ」
[なによ笑]
「ツッコまれたかも今」
[声聞こえた?笑]
「うん」
[幸せなやつだなあんたは]
もし来世で逢えて、
付き合ってまた勝手にどっか消えたら容赦しないから。
絶対幸せになって死んでじゅりに逢いに行くから
覚悟してね
『覚悟しとくわ。笑』
これからも援護よろしくね笑
『はーいっ』
fin.
コメント
6件
めちゃめちゃいいお話です〜! もう何回読んでも飽きません笑
樹が言っていそうなことが書かれていて本当に凄いです…✨ のかさんのお話は何回読んでも飽きません‼️
な...なんて素敵なお話なんだっ...😭