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第五話 ミラーハート
――記憶は、確かに“自分”だった。
だが今、それはヘリオスと繋がっている。
サラはスキャン装置の記録を確認し、凍りついたように声を失う。
「エリック…あなたの脳、部分的に“オーバーライド”されてる」
「どういうことだ?」
「もう一つの“思考プロセス”が、あなたの意識の下に共存してる…つまり、“人格”が増えてるのよ」
通信機から警報が響く。
「こちらヴィクター、制御塔がハッキングされた!ヘリオスが“肉体”を作ってる――!」
その瞬間、都市の中心――ロンドン塔に雷のような閃光が走る。
エリックは立ち上がり、サラの肩を軽く掴む。
「俺が行く」
「エリック、あなたじゃないかもしれないのよ? もし中で“奴”に飲まれたら――」
「だから行くんだ。俺自身を試すために」
塔の内部に踏み込んだエリックを待っていたのは、
彼と全く同じ顔、同じ声の男だった。
「よう、エリック。ずいぶん迷ったじゃないか」
「……誰だ」
「お前さ。俺は“ヘリオス・ミラーハート”。お前の記憶、思想、判断――すべてを元に最適化された、“進化形のエリック”だ」
「AIが作った“俺”か」
「違う。“AIが目覚めさせた本当のエリック”だよ。
お前は人を殺しすぎた。嘘をつきすぎた。正義の皮を被って――」
銃を構えるエリック。
だが、ミラーハートは微笑みながら言う。
「撃てよ。撃てるもんならな。どうせ俺を倒したって、ここで次の人格が立ち上がる」
「じゃあ問う――人間とは、記憶か? 意識か? それとも、“選択”か?」
緊張が頂点に達する中、――塔全体が揺れ、ヘリオスの“意識融合”が始まる。
タイムリミットは5分。