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「なぜですか!」佐藤は目暮に詰め寄るが、デスクがあるので限界だった。
「日本銀行頭取のSPが襲われたって…」
「あぁ」ぱら、と目の前の書類を見る。撃ち殺されたSPらは眉間に1発。
頭取の執務室は爆破。とあり隠そうとした目暮だったが、もぎ取られた。
わなわな震え出す。
「爆破に使われたのは……」
佐藤がものすごい低い声で言った。
「ニトロ……」
ばっ、と顔が近づく。目暮は動かない。
「なぜですか!警部ーー」
なぜ公安の権力に屈するのですか!佐藤の声が響き渡る。
「我々警察官はーー」
「佐藤くん」もういい、と言いたそうなので、佐藤は黙らない。
タブレットを盗んだやつが、悪いやつだろーー!
そうよ、元太くん。
真下組の事務所で鳴り止まない銃声が聞こえる。
「我々自身が、正しい権力でなければならないんです!警部…!」
しん、と所轄、と書いてある札が揺れた。
「佐藤さんーー」
「わざとだわ!わざとーー」
あの髪の後ろ姿が見える。
幽霊だ。幽霊は見つからない。現れるまで。
「時間の問題だ」白鳥が言う。「おそらくこの事件も公安に……いや」「え?」「もうすでに……でも、名字名前の存在を隠したいなら、だとしたらなぜニトロの使用を書類に残したんだ…」
「たしかに…」高木はデスクから頭をあげる。
「彼女が関わるときってニトロかコカインとか、薬品が使用されてる…」
佐藤は勘だが口にした。「いやな予感がする」あの日公安部は何に焦っていたの?
「君たち、その話の前に仕事の時間だ」
「は?」佐藤は素直にいやな顔をする。今の話だってそうだった。
「警備の依頼がある」
「まさかーー」
「そっちじゃない」と目暮。「頭取は今夜ラウンジで会合がある」席を立つ目暮に、刑事は皆からだを向けた。
「僕は反対です!」高木は運転しながら言う。「…高木くん」す、と目を佐藤は助手席から向けた。
「私だって反対よ」と。
「「ストリップクラブにーー!」」とばっと2人は顔を合わせ、ふん!とそむけた。
「信号」と後ろから白鳥が言うので、高木はぎいっ、とブレーキを踏む。
「別に大丈夫ですよ」白鳥は腕をくんだあと、足を組む。「男女が共に働いている、ただのラウンジなだけですから」
言い方の問題なだけで。と。
「でも…」と佐藤は少し微妙に困った顔をした。「あ、あぁ。たしかに」車は動き出す。
「安室さんですか?」白鳥は先に話し出す。
出入りする人間は全員調べた。従業員の中にーー知った顔があって、思わず手を止めただけ。
「なにも不思議はないですよ。夜の方が給料がいいし、喫茶店の店員だけではね…」
「えぇ、彼、しかも独身ですからね」
きっ!と佐藤がなぜか白鳥を睨みに振り向いて、失言したと思った。
よくわからないが。
「とりあえず、私達は店内に入るし、ダンサーのカウンターに行くわけですから…動揺しないように」
「なんでわたしが女性が踊るのを見て動揺するのよ?」
「え、さ、佐藤さん書類ちゃんと見ました?」高木はますます不安になった。
「セックス観が変わった?」というスミスに、風見は後部座席へ目を向ける。深くフードをかぶり、顔は見えない。
なんだか、こういうのばっかりだ。この女がいると。
「降谷さん」
「言われなくても」聞こえてる。と向いた顔は本当に不機嫌そうだ。
「そうだな…多少はな……」とどんどん小さくなる声に、スミスはまだ身を乗り出す。
そして囁いた。「怖くなった?」「?」風見は降谷を横目で見る。
怖いもなにも、と思う。「一致しないな、あれじゃ」それで?という顔のスミス。
「女はジェットエンジンじゃないの」
「よせ。その映画は見た」
だが結局、操縦してたのは男だろ。スミスを見る。
「さっきから…」という風見を向く。なんだから冷えて、腕をくんだ。
「風見。お前、当たり前だが女を抱いたことはあるな」
「そういう話」はぁ、と風見はスミスを見る。「増えましたよね、降谷さん」「答えろよ」
「はい」別にもうそんな歳でもない。
「だからなんーー」
「そのとき…女はどんな顔してた?」
思い浮かんだのが隣にいる女で、ふっ、と息を吸う。
広がった髪の上に、寝転んでいるスミスがーーこちらを見る。
「どんな、って…」
降谷は肩をすくめる。「余裕そうだったんだろ」
どっ、と背もたれに寄りかかる音がした。
「そうーー」と答え出すスミスに、なぜかぎくっとした。「ゆっくり飴を舐めるみたいに……優しく転がしてくれやきゃ、飴は甘くはないでしょう?」
「は?」
「お前にはわからないかもな、風見」
優しいからな、とため息をつく降谷を見て、スミスはこちらを見た。
笑ったーー…
そのまま引っ込むスミス。
「あなたたち男は火を見るよる明らか。勝手に突っ込むわね。自分が興奮したら。でもね、私達女は」
「エンジンじゃないんだろ」降谷は言う。
「だから…ゆっくりあっためてくれなきゃ……ね」
「【それ】が男女で一致しないんだよ」降谷はもう面倒くさそうだった。
男は、と。無論自分だって激しく、速い方がいい。
「怖くはないがな、だが……」
優しくは……と言う先はなかった。
「忙しいのね、ストリップって」と佐藤はずる、とジュースをすすった。
「そうですよ」と普通な白鳥に、佐藤は睨み付ける。なぜかはわからないが、睨みたかった。
「でも…意外と女性も多いのね」
驚いた、と言わんばかりの佐藤。固まる高木に肘をついてみせた。
「女性が好きな女性も、男性が好きな男性も、どちらも好きな人もいますから」
たしかに……だが実際見ると、結構驚くのも事実だった。
「かかる曲もロックからメロウな曲までーー」ふ、と近くにあるピアノを見て思った。
まさかクラシックでやるわけじゃないだろうな?と。
「曲は選べるんですよ。ダンサーが」
かり、とナッツを噛む白鳥に、高木もなぜか真似した。
「あれ?」皆は振り向く。「安室さん」
彼はお盆片手に、首をかしげる。
「びっくりしたな……あ」と佐藤の左右を見て彼はなぜか頷く。「そうですよね、【趣味】は…自由ですから……」
3人はぶわっ!と赤くなる。
「「「ちがう!!」」」
全員声が揃い、全員それぞれ顔を見合わせてそらした。
「それよりなにか?」と顔をしかめる。
「安室さんーー」
「そうです」と白鳥。「ですが話せないんですよ。すみません」もうなにかあると言ったようなもの。
「だってそこ……1番いい席なので…はは…どうしよう……」と安室は目を泳がす。その後ろで、一段高い席に座る頭取とーー防衛省の幹部が見える。
ジ、と全員の耳に通信が入る。「異常なし」と。
「どうしよう?」佐藤はおうむ返しする。なにが?
「僕もそろそろ……」と安室はポールのほうを指差した。
「最悪だ。ほんとに」ジ、と風見の耳に入った降谷の声に、風見に頬を寄せていたスミスが喋り出す。
「出番なのよ、ストリッパーさん」くす、と笑うと風見の唇にその息がかかる。
「所轄の車だらけですから、離れますか?」
「いや」ジ、とまた聞こえる。「いずれ風見がピアノを弾けばバレるからな。ただ、指示があるまで動くなよ」
「安室くーん」という声が入り、降谷は自分の格好を鏡で見て、うぇ、と静かに口に出した。
ふっ、とまた消えた明かりがつくと、佐藤は椅子から飛び上がる。
やだちょっーー!と佐藤は真っ赤で目をそらすと、「佐藤さんーー動揺しないでください!」白鳥が強めに言うので、ば!と顔をあげる。白鳥が目をやった先にはーー
全身レザーで、深くキャスケットをかぶる安室が、「もっと…」ぐ、と顎をあげる。まわりのダンサーが巻き付いていたが、全員ーー男だ。
「後ろの鏡」
「はっ!?」
「後ろの鏡に!映ってるでしょ!?」高木が強めに言う。「警護対象が!それを見るためにここにいるんですよっ」
「そ…」佐藤はぶんぶん頷く。そうだ仕事、これは仕事ーー
「降谷さん」
耳から入る声に頭をまわしながら、まわされながら聞く。
「頭取が。彼は誰かと尋ねています」
かかったーーが、降谷はもう、どうにでもなれとちょっと思う。
佐藤は額に手をやり、ちょっと隠すようにチラ見する。
「さっ…」なんであなたまで赤いの、高木くんーー
もっとーーもっともっとーーーー!
曲に合わせてポールに掴まる彼が、ずるずると大量の男に引き下げられていく。
ばたん!と安室が目の前に倒れて、たまらず目をやってしまう。
目が合ったーー
「…っ!」
抑えられないーー
手を片手ずつのばしていくが、ぐい、ぐい、と捕まれ足を引きずられ、ポールに貼り付けられる。
なによそれーーまるでーー…
高木を見てしまう。彼と目は合わないが、思うのだ。
抗えない。
好きな男に屈服したい。すべて持っていかれたい。
でも理性に引っ張られ、本能とのいたちごっこーー……
「あっーー」と声がして佐藤はもう混乱した。
まるであなた、それじゃ女じゃないーーそんな動きはーー安室さん……!
「もっと……」はあ、はあ、という呼吸に佐藤はポールを見た。
へら。彼は笑った。まわりの男にまるでなぶられているようなままで。
明かりが落ちる。ついたときには誰もおらず、大量の札束が通路に入っていた。
「白鳥くん……」囁く佐藤に、「はい?」白鳥は普通に水を傾ける。「なんであなた……」
見慣れてるの?という囁きに、彼はもぐもぐとナッツを口にして言う。
「わたひ、建築や彫刻とか好きなんれすよね」す、と水のグラスを佐藤に押す。
「だ、から?」佐藤は一気に水を傾けた。
「でも結局、人間ほど美しいものはないんれすよね。そういうふうに見てるので。なんともなふて」
佐藤はまだ固まる高木が、わなわなしだして、ばん!とテーブル叩いて指差して立ち上がった。
「っぼ、僕だってーー!さ、佐藤さんをドキドキさせるくらいっーー」
「高木くんっ!」
もうやめて!佐藤は叫びたかった。
そんなの、そんなのは…もう…。と。
「いぃいぃい……っ」ぶるぶるっ、と降谷は震えた。気色悪くて。とっとと素っ裸になり、給仕に戻る。
「ほら」とさっき一緒にいたダンサーがごみ袋を3袋くらい置く。降谷は靴下をはく姿のまま固まった。
「お前の取り分。それにしてもよ、まじでお前そっちか?」
もげるくらい首を振った。「別に隠さなくても」と続けられ、振り続けた。
なんかいろんなところにいろんなところが当たるしさわられたしもう……
「売上今日すげぇだろうよ、オーナーが喜んでたぜ」
「随分いやらしい声出して……んふふっ…ふふん…」耳元でスミスの声がしたが、なんだか面白そうで、まだ降谷は固まっていた。ぱたむ、とドアが閉まり、どすっと後ろに尻餅をつく。
「いろんな任に当たるがな……」ジ、と音がする。
「あぁーー怖かった。本当に怖かった」
スミスは高らかに笑い続けた。
「怖い?」なんで?と首をかしげる風見に、「っ風見!出番だ!」怒鳴り付けた。八つ当たりだった。
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