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#溺愛
桜咲かな
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桜咲かな
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#百合
第四十六話 同じもの
『……それ、私も持ってる』
彼女から届いたメッセージを、
彼は何度も読み返した。
同じキーホルダー。
それだけなら、偶然かもしれない。
でも、写真に写っていたものと、
自分が今も持っているものが同じ。
そして彼女も、同じものを持っている。
偶然だと言い切るには、少しだけ引っかかった。
『どんなの?』
『写真送るね』
しばらくして、彼女から画像が届いた。
画面に映っていたのは、
彼が持っているものとよく似たキーホルダーだった。
同じ形。
同じ傷。
ただ一つ違うのは、彼女のものには
小さな青いリボンがついていることだった。
『これ』
『……本当に同じだ』
『でも、私のにはこれがついてる』
彼は自分のキーホルダーを確認した。
青いリボンはついていない。
けれど、よく見ると裏側に小さな跡が残っていた。
何かが付いていたような跡。
『俺のにも、前は何か付いてたのかも』
『じゃあ、同じものだったのかな』
『分からない』
二人とも、それ以上は言えなかった。
彼女はキーホルダーを眺めながら、ふと思った。
『これ、いつから持ってた?』
彼は記憶を探す。
『分からない』
『事故より前?』
『たぶん』
『じゃあ、かなり前から持ってたんだ』
『そうみたい』
彼は少し考えた。
事故の前から持っていた。
それだけは確かだった。
けれど、誰からもらったのかは覚えていない。
そこだけが、ぽっかり抜け落ちている。
『私も、誰からもらったのか覚えてない』
『同じだ』
『変なの』
『うん』
少しの沈黙。
それから彼女が送ってきた。
『ねえ』
『ん?』
『もし、これをくれた人が同じだったらどうする?』
彼は画面を見つめた。
すぐには答えられなかった。
もしそうなら。
写真に写っていた誰か。
自分の記憶から消えている誰か。
そして、今ネットで話している彼女。
すべてが一本につながる可能性がある。
でも、まだ決めつけるには早い。
『そのときは、ちゃんと確かめたい』
『そっか』
『うん』
彼女も、それ以上は聞かなかった。
その夜。
彼はキーホルダーを机の上に置いた。
何度見ても、懐かしい。
けれど、
何を思い出そうとしているのかまでは分からない。
ふと裏返してみる。
今まで気づかなかった、小さな文字が刻まれていた。
短い言葉だった。
「ずっと」
彼は息を止めた。
その言葉を見た瞬間、ほんの一瞬だけ記憶が浮かぶ。
誰かが笑っている。
自分が何かを渡している。
そして、その人が言う。
「じゃあ、ずっとね」
次の瞬間には、もう何も残っていなかった。
彼はキーホルダーを握りしめる。
今の自分には、その続きを思い出せない。
ただ一つだけ。
このキーホルダーが、
過去の誰かとの約束につながっていることだけは、
なぜか分かった。
コメント
1件
うわあ…なんだろう、この切なくてあったかい感じ。 キーホルダーが「同じもの」って分かったときの、ふたりの距離感がすごく繊細で。 最後の「ずっと」って刻印、一瞬だけ浮かんだ記憶の断片が胸に刺さった…。 記憶が抜け落ちてるのに、約束だけはちゃんと残ってるみたいで。 この先、どうなっちゃうんだろう、すごく気になるよ…🤍🥀