濮は生まれてから2幡にしかなれたことがない。テストの勉強をタヒに物狂いで頑張っても全教科平均96点で2位。どれだけ頑張っても届かない。運動だって、濮の得意な美術だって。
いつも濮の上には幼馴染の桃くんが居る。彼は神に愛されているのでは無いかという程に才能があって誰も追いつけない。まるで空に光り輝くシリウスのように__
そんな濮でも1度だけ1幡になれたことがある。それは音楽だった。この学校は副教科にも力を入れており音楽のテストも頻繁に行われていた。また、従兄弟の影響で音楽が好きで色々と知識を持っていたこともあり結果、僅か2点差だが桃くんを超えて1位になれた。みんなは褒めてくれると思った。
でも、現実は違かった。みんなは桃くんの1位を望んでいただけで濮が1位になったところで褒める訳もない。むしろ恨まれるくらいだ。
そんな中でも桃くんだけは褒めてくれた。こんなんだから愛されているんだろうね。勉強に運動ができて、顔が良いだけでなく性格も良い。非の打ち所がないとはこういうことを言うのだろうか。当然コミュ力もある訳でいつもクラスの中心にいる。…いつから濮と彼はあんなにも変わっていってしまったのだろう。
そんな濮は今日、彼の誕生日にこの世から消える。最高のプレゼントでしょ?
フェンスの向かい側に立とうとすると冷たい風が吹いた。そして思わずバランスを崩しそうになる。何とかバランスを取り直すとふと視界に入ったのは誰か..いや、彼が目の前に今にも泣きそうな顔でそこに立っていた。
青「なんでこうも運が惡いんだろうねッ…」
花冷えでまだ肌寒い校庭。俺は部活終わり、まだ人だかりの多い校門をくぐり抜け家へと歩き出した。空を見ると雪がポツリと降り出していてふと四年前のまだ幼い彼との記憶を思い出す。
雪が降ってきたこともありはしゃぎにはしゃいで転んでしまった彼。今ではありえないほどに素直ではきはきしていて、、、でもそんなところが大好き“だった”。
そんなことを考えていると部活の先輩の橙先輩に声をかけられた。無視して歩き進めようとしたが流石にそれは悪いから
『なんですか…』
とだけ答えた。橙先輩が引き止めたのは俺が屋上の鍵を閉め忘れたことに気がついたらしくそれを伝えたかったからとの事。気が付いたなら閉めてくれても良かったのにとも思いつつ校舎に戻り屋上の鍵をようと歩き進めた。
屋上までたどり着くとそこには誰かが立っていた。それは何処か寂しそうな氷上をした幼馴染の彼だった。
青「なんでこうも運が惡いんだろうねッ…」
彼は仮初の笑みでそう呟いた。
桃『なぁ、もしかして…』
俺がそう行った時、彼は言った。
青「濮、今から消えるんだ。この世から。」
桃『なんで、こんなところで死ぬんだよッ、!? お願いだから、、、生きてくれよッ… 』
俺は理解が追いつかず彼のことを考えず感情に任せて一言言ってしまった、。
でもそんなのももう遅かったのだろう。
青「もう、人生に疲れたんだよ。」
そう呟いた瞬間。彼は風に身を任せた。