episode11 ゆっくりと
ブライドside
まず最初に、前回の結果から
2人の協力の末、なんとかあの黒い竜巻を切ることには成功した。
だが、思ったより切るのが遅れたのか映矢輝も一緒に消え去ってしまった。
竜巻の正体も、映矢輝の対応や反応も、全て分からずじまいに終わった。
あの竜巻は只者ではなく、1度切れたのも奇跡と言っていいほど強力な物なのだとか
戦闘後の現場には映矢輝と竜巻がいた痕跡は全て消され、映矢輝の魔法によって壊れた物も全て元通りになっていた。
恐らくあれは、竜巻の姿に一時的に扮していた別の何か。
映矢輝の父親というのは確定しているが、それくらいしか情報がない。
2人は簡素に話し合い、頭を抱えた
とりあえずは自宅へと戻り、所夜と情報共有をする流れになった。
ブライドは戦闘の流れと、映矢輝の力。特徴や口ぶり、戦闘の癖等を話した。
地獄の神であり魔法使い。そして何らかの力で大量のウイルスを操っていた。
これだけでこちら側が人数的不利な事は間違いない。なんとか対策を練ろうとしたが、人数はどうしようもない。
はてさて、どうしたものか。
1人で悩んでいると、所夜が口を開く。
「今日映矢輝さんが呼び出したというウイルス、すごく弱かったんですよ」
話を聞くと、映矢輝が操っていたウイルスは全て平均よりもずっと弱かったらしい。
攻撃もしてこないし、防御や回復もしない。
まさに立っているだけ。出来ることは妨害のみだ。
自分で言うのもなんだが、前に私がウイルスに侵された時の威力は凄まじかった。
所夜一人があの数のウイルスを倒しておいてケロッとここにいるのは確かにおかしい
ますます訳が分からなくなっていく。
「ねぇブライド。映矢輝さんは魔法を使っていたんですよね。」
唐突に所夜が口を開く。
「?」
「ああ、確かにそうだ。」
「そして、自身で地獄の神と名乗っていたんですよね。」
「ああ、それがどうした」
「これだけの情報があったら、オブサーバーにも映矢輝さんの情報がひとつはあるかもしれないって事ですよ。」
確かにそうだ。彼女の自国はいわば情報の国。ひとつくらいあっても違和感は無い
全く、よく働く頭だな。
「少し待っていてください。ありったけの映矢輝さんの情報を集めます」
「ゆっくりでいいぞー。」
数分後
ものの数分で所夜は帰ってきた。
両手には分厚いファイルのような者が何十個も。
「重いっ、!疲れましたぁ、」
「お疲れのところ悪いが、早速調べるぞ。」
「はいっ、!もちろん。そのために持ってきたんですから!」
音ノ 映矢輝
概要
性別 女 年齢 100歳+?
種族 地獄の神 所在 魔界 地獄
身長 132cm 体重26kg
誕生日 2月24日
能力 「魔法を使う事が出来る能力」
地獄に生きる地獄の神。
母親は生まれる時に死別、義理の父親に地獄の閻魔を持つ。
地獄にいるものを捌くために神になったが、実際のところは捌くだけでなく、罪人全ての管理を担っている。
そのためか、父親である閻魔からは甘い教育をされているが、裏では怪しい噂が後を絶えない。
神であるが、魔法を使える魔法使いでもある。
その強さは異次元とも言えるもほどで、信仰者が多くいる。
その強さを持つ理由は、生まれが魔界だから。
元は魔界に降り立つ大魔法使いだったが、人間と魔族の共存を目指したことが魔族嫌いの人間にバレて地獄に封印された。
幼くして大魔法使いになったため、嫉妬からか人間魔族問わず酷く嫌われていた。
地獄に封印された数十年後、神としての性質を取得し、信仰者の手によって解放された。
武器は通常より一回り大きい斧を使用する。
魔界にいた頃、本当の父親にもらった斧なのだとか。
地獄の中でも一二を争う強さで、その強さは閻魔である父親に教えられた体術、技術、魔術のおかげ。
普段は狂気や、残忍、不可思議な性格を演じているが、裏では平和を祈る平和主義な1面も。
ファイルに書かれていた事を全てまとめると、こんな感じだ。
とりあえず、とても強い事は分かる。
それでも、書いてある程強ければ私が手を出せなかったのでは無いだろうか
やはり、裏で平和を祈るだけあって罪悪感からそれ程攻撃を出来なかったんだろう。
所夜side
一通り全て目を通したが、やはりおかしい。
最初、オブサーバーに行った時から違和感はあった。
なんでここまで沢山情報があるのだろうと。
いくら情報の国と言えど、情報の数には限りがある。
基本的にどんな者でも名前くらいの情報はあるが、それだけだ。
普通、自分の事を話さない者の情報はほとんどない。
映矢輝さんは自分が地獄の神という事しか話さなかった。
なのに、細かい個人情報や映矢輝さんが神になった経緯までの沢山の情報。
ブライドの手がかりを用いてもまずありえない情報量なのだ。
ましてや身長や体重まで。これは明らかにおかしい。
ほぼ確かに、誰かが映矢輝さんの情報をどこかに売っている。
1番可能性があるのは、恐らくこいつだろう。
映矢輝さんの義理の父親。地獄の閻魔とか言ってたな。
裏では悪い噂が絶えないとも書いていたので、可能性は十分ある。
逆に、映矢輝さんの事を深く知っていて、なおかつすぐに情報漏洩ができる人物はこいつくらいだ。
ありえない情報量とは言ったが、情報が足りている訳では無い。
何としても、ウイルスを操る力を持つ映矢輝さんは討伐しないといけない。
映矢輝さんを倒すには、もっと映矢輝さんから情報を聞き取らないと。
今のままウイルスを倒すだけじゃ、防戦をしててもダメだ。
こっちから攻めないと。
近いうち、恐らくだがまた映矢輝さんは現れる。
その時には、しっかり上手く誘導しないといけないですね。
「ブライド、今のうちにしっかりと対策を練りましょうね。」
「、?ああ。そのつもりだよ。」
「まず、魔法について私に教えてください。私はあいにく、魔法に関しては無知なので。」
「ああ。でも祖母からの教えだから情報は割と古いぞ?」
「足りなかったらまた国へ取りに行きます。あなたが知っているなら多少は情報があるでしょうし」
「そうだな。じゃあ、心して聞けよ」
そう言う彼女の目は、真剣そのものだった
ブライドside
魔法に関しての言い伝えは、母からも、祖母からも、父からも祖父からも。あるいは師匠からも。
親族という親族に沢山聞かされた思い出がある。
当時はなんのために聞かされたのか分からなかったが、まさかこんな所で役に立つとは。
まず、魔法には大きな特徴がある。
それは属性だ。
基本的には
日、月、火、水、木、金、土の七つ。
それらを操る事ができるものが、一括りに「魔法使い」と呼ばれる事が多い。
彼女の情報にあった大魔法使いというのは、これらの属性はもちろん、その俗姓を組みあわせた魔法だったり、自分で取得したこれ以外の属性の魔法を使える魔法使いの事。
映矢輝が使っていたもので言うと、血液を操る魔法だ。
血の魔法は七属性には無いので、使われた時点で只者では無い事はわかっていたが、まさか大魔法使いだったとは。
あとはそうだな。強いて言うなら魔力か。
基本的に、魔法使いには全員に魔力が備わっている。
魔力というのは、誰でも無意識に感じ取れる物だが、意識していないので感じないと言う人が多い。
例えば、どこからともなくいい香りがしたり、特定の物に対して違和感を感じたり、突発的にモスキートーンなるものが聞こえたりなど、、、。
魔力という物の性質は不可解のまま放置されている。
あとはそれを持つ者の特徴だ。
人間から修行をして魔法使いになったものや、生まれつきの魔法使い、あるいは人ならざる形をした魔法使い。
どんな魔法使いにも魔力が必ずあるのだが、それぞれ違いがある。
種族や年齢によってばらつきがあるため、詳しく解明はされていないが、
弱い魔法使いほど魔力を感じ、
強い魔法使いほど魔力は感じないらしい。
私が知っているのはこれくらいだ。
所夜side
「私が知っているのはこれくらいだ」
いや、ほんとに記憶力に優れていますねあなた。
結構な量の情報出てきましたよ
だったら映矢輝さんは、ウイルスを自分のものにする催眠の魔法などがあったのか。ようやく納得だ。
なんにせよ、これで分かった。私と映矢輝さんは相性が良い。
映矢輝さんはどんな属性でも操る事のできる魔法使い
でも、それは私も似たようなもの。
空間を少し弄れば、割とどんな属性だって操れる。
だから、私は基本相性はいいだろう。
問題はブライドだ。彼女は恐らく、映矢輝さんとは相性が悪い。
彼女の使用武器は簡単に言えば細長い槍のようなもの。
熱に弱く、1点集中型だ。
映矢輝さんが火や熱を操ればブライドの武器は使えなくなるし、催眠でウイルスが呼び寄せられれば彼女は間違いなく厳しい戦闘を強いられる。
そこで、任務用の端末が音を鳴らした。またもや任務だ。
しかも再び、都心近くで大量のウイルス発生ときた。恐らくだがこれは映矢輝さんの仕業だ。
ブライドはもう準備を進めている。さすがは元兵長。切り替えが早い。
相性がどうとか、戦闘がどうとかは今は考えないでおこう。
私がブライドを守ればいい。それで終わる。
魔法の対策は帰ってからもう一度。ゆっくりコーヒーでもいれて話そう。
コメント
2件
次の展開が楽しみすぎます!😊✨神秘的だったり妖魔的だったりして、情景を想像するのがとても楽しいです✨