テラーノベル
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誘われたのは、有名なテーマパークだった。
他のメンバーに気付かれないよう、別々で家を出て駅で待ち合わせて。
今、テーマパークに向かう電車に揺られている。
程よく混んでいる車内で、えとさんとのあさんが少し離れたところで立ちながら、楽しそうに話している。
俺の隣に立つじゃぱぱは、えとさんたちの方をぼーっと眺めている。すると、
「…可愛い…」
多分、誰にも届ける予定のない独り言が、じゃぱぱの口からこぼれ落ちた。
思わずじゃぱぱの方を見ると、
「ごめん…漏れてた?」
赤面して、ぱしっと口を押さえる。
「……ダダ漏れ」
「マジか、ごめん…今日頑張ろうと思っててさ、めっちゃ緊張してる…」
今日、告白するのかな。
上手くいくよ、とか、向こうもお前のこと好きだと思うよ、とか。言ってやれたらいいんだろうなって言葉は浮かんだが、どうしても口が動かない。
だって。
好きとか可愛いとか、口に出せるだけ羨ましい。
テーマパークに到着し、ゲートをくぐる。
建物の雰囲気、キャラクターのグリーティング、一歩足を踏み入れただけで別世界だ。
非日常の感じに、沈んでいたテンションが少し上がる。
のあさんは、ゲートをくぐった途端に走り出して、今は俺たちより先に行ったところで嬉しそうに写真を撮っている。
ふと後ろを振り返ると、じゃぱぱとえとさんが顔を近づけて何やらヒソヒソと話していた。
じゃぱぱの顔を覗き込んで何やら話したかと思うと、花が咲いたような笑顔。
あぁ、来るんじゃなかった。
俺以外に向ける笑顔を見て平気でなんていられない。
当て馬としての修行が全然足りてなかった。
トイレに行くとか理由をつけて、ちょっと別行動しようか。
そう考えていた矢先、
「のあさん、ポップコーン食べない?」
じゃぱぱから投げかけられた誘いに、
「食べたいです!」
のあさんが目を輝かせる。その表情を見たじゃぱぱは嬉しそうに頷くと、
「あっちのエリアに売ってるっぽい、ちょっと行ってくるわ!」
俺とえとさんにそう告げた。そして、
「えっと…はぐれたら困るから、さ」
真っ赤な顔で、じゃぱぱが手を差し出す。
その手をとったのは…同じく顔を真っ赤にしたのあさんだった。
「…え?」
二人が人の波で見えなくなっても、状況が理解できない。
「ゆあんくん、今のうちに別のとこ行こっか」
「…え、えとさんはいいの…?」
「あー、ポップコーン?」
「じゃなくて!!」
何で。何でそんな平然としてられんだ?好きなやつが目の前で、他の女と手を繋いでたのに。
「じゃぱぱのこと、いいわけ?」
どうして俺が、二人の恋路を心配しないといけないんだ。このまま上手くいかなかったら、俺にもチャンスが巡ってくる。その方が都合が良い。
でも、嫌なんだ。えとさんが悲しむのは。
「じゃっぴ?あー、上手く行くといいよね」
俺の焦りとは裏腹にニコニコと微笑むえとさん。
上手く行くってのは、じゃぱぱとのあさんが?
じゃぱぱが心変わりしたってことか?それで、平気なのか?
本当は苦しいんじゃないのか?
「本気で言ってんの?
えとさん、じゃぱぱのこと…好きなんじゃないのかよ!?」
言葉にするのも苦しくて、今まで口に出さなかった、この言葉。
反応を見て、俺の中の疑念が決定的になるのが怖い。
勇気を振り絞った俺に対して返ってきたのは、
「……はぁ!?」
最大級の呆れ声だった。
next、、、♡100
コメント
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じゃぱのあ尊いっ🫶🏻✨ゆあんくんの勘違いだったってことか!続き気になる(>ᴗ<)❣️