テラーノベル
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#イラスト
「忘れ物ないか?」
「たぶん大丈夫。」
「“たぶん”でいいんだw」
「なんとかなるでしょ。」
コンちゃんが笑う。
段ボールを抱えながら、小さく息を吐いた。
思ったよりここに置いていた荷物が多い。
というか、ほとんどきょーさんたちがくれた荷物な気がするけど。
「レウさん、それ重そう。」
「普通に重い……」
腕がじわじわと痛い。
リビングには、もうほとんど物が残っていなかった。
いつも置いてあったクッションも、適当に積まれていた雑誌もない。
簡素な部屋。
俺とらっだぁが来る前の、きょーさんたちの住む場所の姿。
少しだけ、変な感じがする。
「ついにレウさんたちは新しい家か〜。」
きょーさんが壁にもたれながら言う。
「楽しみだねぇ。」
「会社通えそうなんか?」
「まぁ、そんな遠いわけでもないし。」
「この家からも、結構近い。」
らっだぁがそう言って、ふにゃっと笑う。
「またここに来れるよ。」
その目が、優しくきょーさんたちを見つめていた。
「せやな。」
「またいつでも来てね〜。」
その空気に、少しだけ安心する。
――夢のことは、まだ思い出せないままだった。
起きた直後は、確かに何か見たはずなのに。
思い返そうとすると、黒い霧みたいにぼやける。
ただ、
あのメロディーだけが、まだ頭の奥に残っていた。
「レウサン?」
「……あ、なに?」
呼ばれて顔を上げる。
緑色の眼差しが、こちらを見つめていた。
「ボーットシテル。」
「あぁ、⋯ちょっと寝不足かも。」
適当に誤魔化す。
「ちゃんと寝なよ〜。」
「善処します……」
そんなやり取りをしながら、最後の荷物を持ち上げた。
玄関の前に立つ。
何回も見た景色。
前に進む時が来た。
「じゃ、またね〜。」
「また来るよ。」
「おう、おつかれ。」
「マタネ。」
軽く手を振る。
別れって感じは、あんまりしない。
たぶん、またすぐ会うから。
それでも。
ドアが閉まる瞬間、少しだけ静かになった気がした。
NEXT=♡1000
最近更新してなかったことを思い出しました。
待っててくれてありがとうございます。
コメント
5件
こ今回も素晴らしい…✨️これからも頑張ってください!