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「」せりふ ()こころ
桃 side .
「いやだ、放せ……っ! 放してよ、すち……っ!」
すちの腕の中で、俺は狂ったように暴れた。
昨日まであれほど愛おしかったすちの体温が、今は蛇の皮膚のように冷たく、おぞましく感じられる。
この人は人殺しだ。
俺のために、俺が笑いかけたからというだけの理由で、平気で人の命を奪う怪物だ。
「らんらん、落ち着いて。そんなに暴れたら怪我しちゃうよ」
すちの声はどこまでも優しく、穏やかだった。けれど、俺の身体を拘束する両腕の力は、まるで鉄の鎖のようにびくともしない。
どんなに殴っても、胸元を引っ掻いても、すちは痛がる素振りすら見せず、ただ愛おしげに俺を抱きしめ続けている。
「いやだ、外に行く……っ、警察に行く! 離してよ!」
『警察』という単語を口にした瞬間、すちの身体がピクリと動きを止めた。
すちは俺を腕の中から引き離すと、両肩をがっしりと掴み、じっと正面から俺の瞳を覗き込んできた。
その顔には、相変わらずあの綺麗な笑顔が張り付いている。
「外に行くの? どうして? ここにはらんらんの嫌いなノイズは一つもないのに。俺と二人きりで、あんなに楽しく暮らしてたじゃないか」
「楽しくなんてない! すちがみんなを殺したんでしょ!? お願いだから放して、もうこんな部屋にいたくない……っ!」
「……そうなんだ」
すちは悲しそうに目を伏せた。
そして、小さくため息をつくと、俺の髪をそっと耳にかけ、その頬を親指で撫でる。
「らんらんは、まだ外の世界に未練があるんだね。あの汚い、ゴミだらけの世界に、俺を置いて帰りたいんだ」
「すち……?」
すちの瞳から、すっと感情の光が消えた。
底の知れない真っ黒な深淵のような瞳が、じっと俺を捉える。
「ダメだよ、らんらん。俺がこれだけお前の世界を綺麗にしてあげたんだから、らんらんはここで、俺の愛だけを受け取っていればいいんだよ」
「ひっ……!」
危機感を覚えた俺は、すちの手を振り払い、玄関へと向かってがむしゃらに走り出した。
床に散らばった証拠を踏み越え、廊下を駆け抜ける。
ドアノブに手をかけ、思い切り引っ張った。
カチャ、カチャ。
「あ……え……?」
開かない。
ドアノブは虚しく金属音を立てるだけで、ビカとも動かなかった。
「無駄だよ、らんらん。鍵は俺が持ってるし、内側からは開かないようにサムターンも外してあるんだ」
背後から、静かなスリッパの音が近づいてくる。
振り返ると、すちがポケットから一本の鍵を取り出し、それを俺に見せつけるように指先で弄んでいた。
「スマホももうないし、この部屋の窓は全部、らんらんの力じゃ開かないように固定してある。らんらんが外のゴミどもに助けを求めるルートは、もう一つもないんだよ」
「うそ……、なんで、そんな……っ」
ガチガタと歯の根が合わなくなる。
ここは守ってくれる安全な場所なんかじゃなかった。
最初から、俺を外の世界から完全に隔離して、閉じ込めるための『檻』だったんだ。
「さあ、リビングに戻ろうね。ケーキが溶けちゃうよ」
すちが俺の手首を掴み、ゆっくりと、けれど絶対に拒絶できない力で引っ張っていく。
俺は玄関の床にへたり込み、涙を流しながら首を激しく横に振った。
「嫌だ……助けて、誰か……っ!」
届くはずのない悲鳴を上げる俺の耳元で、すちは狂おしいほどの愛を込めて、優しく、甘く囁いた。
「誰も来ないよ、らんらん。らんらんを助ける人間なんて、もうこの世界には一人も残っていないんだから」
パチン、とすちの手によってリビングのドアが閉められ、内側からロックされる。
外の世界との境界線は完全に閉ざされ、俺は世界にただ二人きりの、怪物の檻の中へと完全に閉じ込められた。
【お】
episode 10 . fin_
コメント
3件
🌾失っ.ᐟ.ᐟ ひょわぁあははぁ☆(?) すきですありがとうちねる はぁぁぁ" もうね、言葉が出ナッシング良すぎて。(?) とにかく好き 今回もさいこぉぉぉぉぉぉぉ.ᐟ.ᐟ 次回もたのちみ
第11話読み終えたよ……こわすぎる……!😭💦 すちの優しい笑顔のままで桃を閉じ込める感じ、狂気が滲み出てて背筋が凍った。「誰も来ないよ」って囁くシーン、心臓止まるかと思った……。桃の絶望がひしひし伝わってきて、檻に気づいた瞬間のガチガタ震えがリアルすぎてつらい😢 サムターン外しとか準備周到すぎるでしょすち……。これからどうなるの、続きが気になりすぎる!