テラーノベル
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綺麗な満月の夜。
夜風を浴びて鼻歌を歌っていた。
こんな月が綺麗な夜はセッションをするのにぴったりだ。
静寂の時が流れ、心做しか時間がゆっくりと進んでいると感じていた教室の扉が勢いよく開けられ、その空間は壊された。
リン「レン〜!!?」
静寂の時を壊した犯人はリンだった。
リン「あたしのみかん食べたでしょ!!」
レン「はあ?食ってない」
実際、食っていないのは事実だった。オレ、みかんよりバナナだし。
絶対バナナ。オレの心はいつもそう語りかけてくる。
リン「嘘だ!!食べるのレンぐらいしか居ないもん!」
だから、食わねえって。
レン「リンの事だから寝ぼけてるうちに食ったんじゃないのか?笑」
リンは煽りに弱いからちょっとだけ煽ってみた。
すると案の定、思っていた反応が返ってきた。
リン「違うし!あたしいつも22時に寝てるもん!」
レン「この間、『ミクぴょんたちと恋バナする!』とか言って1時ぐらいまで起きてたのは誰だっけ?笑」
オレは次々とリンを正論で煽っていた。
リンのパンチは凄くへなちょこで少しもきかなかった。
オレの正論パンチの力の方が強いんだと再確認した時だった。
リン「むむむ〜!それとこれは違うの!とにかく、食べたのレンでしょ!」
レン「だから、違うってば!」
互いの目から火花が散っているその時ガラガラと静かに教室の扉が開いた。
ミク「2人とも、どうしたの?」
リン「あ、ミクぴょん!!聞いて聞いて聞いて!レンがあたしのみかん食べたの!」
レン「あ、おい!オレは食ってないって言ってるだろ!」
ルカ「みかん?そういえば、メイコが食べていたのを見たけど。」
リン「え、めーこ姉!?」
レン「……おい、リン?」
オレは声を低くしてリンに圧をかけた。
リン「ご、ごめんってば!まさかめーこ姉とは思わないじゃん!」
レン「だから、オレは食ってないって言っただろ!?」
リン「ご、ごめんなさーい!!」
リンは捨て台詞を吐いた後、教室からそそくさと出ていった。
レン「…ったく、リンはほんとに人の話を聞かないな。」
カイト「まあ、喧嘩する程仲が良いって言うしね。」
レン「ああ、そうだな……ってカイト!!?」
オレは思わず賛同だけして終わるところだったがまさかカイトが居るとは。いつの間に……
カイト「あ、ごめん。驚かせちゃった?」
レン「あ、いや、大丈夫。」
大丈夫な訳……気になってる人がすぐ隣に居たら顔が赤くなるどころか沸騰してしまう。
オレは頭を横にブンブンと振って、そして頭を冷やすべく、窓の方へと向かった。
先程まで感じていた夜風に触れ、気分が良くなってきた。
すると、カイトもこちらに近付いてきて
カイト「…月、綺麗だね。」
レン「え、?あ、ああ。うん。」
月が綺麗だねってそういう事なのか?思わず頷いてしまったのでカイトの方をチラリと見ると何も気にしてなさそうに月を見ている。
これだから、カイトは……そういうちょっぴり天然で思わせぶりしちゃうとこ。
そんなとこが可愛くて大好きなんだけど。
辺りを見渡すとミクもルカも居なかった。
この教室にはオレとカイト。2人だけ。
…顔が真っ赤になってる感覚がある。
こんな絶好なタイミング、告白しちゃえばとも思うのだがやはりカイトは同性愛とか分からないだろうし、やっぱり難しい。
そんな事を考えているとカイトがこちらに歩み寄ってきた。
カイト「レン。」
レン「ど、どうした?」
カイト「……急だけど、さ俺たちってあの子たちの想いから生まれたわけだけど…もし、あの子たちの想いが変わったなら…俺たちってどうなるのかな……」
レン「……」
難しい質問だ。
あの子たちの想いが変わる。もし、もしもそんな事があったらオレたちは確かにどうなるんだろう。
……そんな事誰にも分からない。
いつ、どこであの子たちの想いが変わるかどうかなんて誰にも分からない。
でも、それでも……
レン「いつ想いが変わるかどうかなんて分からない。誰にも分からないけど…。」
レン「あの子たちはもう壊れない、簡単には。余程の事がない限り想いは変わらないよ。」
カイトの方へ ニッと笑って歩み寄った。
レン「それに、想いが変わったところでオレたちの想いは変わらないだろ?」
そう、オレのカイトへのこの気持ちもね。
カイト「レン…」
カイト「ふふ、ありがとう、少し安心したよ」
カイトが微笑むと窓から夜風が教室にはいってきた。
机にバラバラに置かれた楽譜が1つ落ちた。
それを拾い上げ、カイトに
レン「なあ、カイト。ちょっとだけ…どう?」
カイトは少し驚いた表情をした後すぐに微笑み
カイト「うん。」
と頷いてくれた。
ちょっとだけと言っておきながら1時間が過ぎた。
2人とも疲れ果てカイトは椅子に座りながらコクリコクリと うとうと し始めている。
レン「カイト、眠い?」
カイト「うーん、…」
レン「しょうがねぇな…笑」
オレはカイトをおんぶして部屋まで連れていった。
カイトはオレより身長が高いのに凄く軽かった。
ちゃんと食ってるか心配になる。
てか、その時のノリでおんぶしちゃったけど…
めちゃくちゃ恥ずかしい……!
時刻は23時を過ぎていた。
オレはカイトの部屋の扉を静かに優しく開け、部屋に一歩踏み入れた。
カイトの部屋は綺麗に整頓され、カイトの性格が滲み出ていた。
ベッドまでおんぶしながらカイトを運びそっと優しくカイトをベッドに降ろした。
カイトは目を少しだけ開けて
カイト「…ありがと、レン…」
と言い放ち、眠りに落ちた。
オレは暫くカイトを見つめ
レン「ほん、と、可愛い…」
とボソッと呟きその場を離れ
ようとした。
オレが身体の向きを変え、扉まで向かおうとするとカイトに袖を掴まれ
カイト「……行っちゃうの?」
とか細い声でオレに。
レン「カイト…もう夜遅いから、オレもう寝るよ」
と理性を保ちながらカイトをなだめた。
カイト「じゃあ…」
カイトは起き上がりオレにこう言い放った。
カイト「ここで一緒に寝る…?」
時刻は23時半。
オレはその後可愛さに耐えきれず一緒のベッドに入っている。
こんな近くにカイトが居たらオレの理性ぶっ壊れるのは承知の上だが、カイトを傷付けたくない。
一緒に寝ると提案したのはカイトだが多分、頭がふわふわした状態でそんなこと言ったのだろう。
そもそもオレたちは付き合ってないわけだからそんなことして許されるわけがない。
目線を少し後ろにするとすぐ近くにカイトの顔があった。
すーすーと綺麗な寝息をたて、静かに眠っている。
ほんとに可愛い……
今ならキスしてもバレないんじゃないかなとそんなことを考えてしまう自分が恥ずかしくなってくる。
オレ、やっぱりカイトの事大好き。洒落にならないくらい、ほんとに愛してる。
だから……
オレはベッドの軋む音に注意しながら部屋から出ていった。
オレの理性が、保っているうちに。
小鳥のさえずりと共にオレは少し目を開いた。
窓から光が放たれており、今日は快晴だ。と窓が喋り出した気分。
カイトはまだ眠っているだろうか。
オレは重い瞼をこじ開けるように無理矢理ベッドから降り、カイトの部屋へと向かった。
コンコン と優しくノックをする。
……返事はない。
寝ているのだろうか。それとももう起きていて別の部屋にでも居るのだろうか。
レン「カイトー?入るよ」
オレは一声掛けた後、扉を開いた。
……居ない。
起きてるのかな。教室にでも探しに行くか。
レン「居ない…!居ない居ない居ない…!!」
カイトが居ない。なんで、どうして。
オレは教室隅々まで探したが何処にも見当たらない。
リンたちにも協力してもらい、カイトを探しているがどうしても見つからない。
ミク「カイト…なんで…」
ルカ「…カイトが何処に行ったか検討も付かない、レン。あなたたちは昨夜一緒に居たんじゃないの?」
レン「う、うん。確かに一緒に居たけど、その後自分の部屋にすぐに戻ったんだ。オレにも分からない…」
リン「カイト兄、どこ行っちゃったの……?」
メイコ「ちょっとみんないいかな?」
みんな一斉にメイコの方へ振り向く。
メイコ「さっき、カイトの部屋の隣の教室で”セカイの入口”を見つけたんだ。」
レン「セカイの入口?」
ミク「セカイの入口は私たちがまだ知らないセカイへ行けるゲートだね。私は本で読んだことがあるだけで詳しくは分からないけど。」
ルカ「セカイの入口なんて、このセカイでは初めて見たわ、メイコ、案内出来る?」
メイコ「も、もちろん!みんなついてきて。」
オレたちはメイコが案内してくれた教室の前へと立った。
心臓がバクバクしながら
レン「あ、開けるよ?」
扉の先には目が眩むほどの光を放つゲートがあった。
綺麗に七色に光っている。
レン「こ、これが、セカイの入口……」
リン「す、すごい、すごい!きれい…!」
みんなそのゲートの虜となっていた。
既に見たメイコは少し退屈そうにみんなを眺めていた。
メイコ「この先にカイトが居るの?」
ミク「分からない、けどここぐらいしか検討は付かないね。」
リン「ど、どうする、?誰か入るの、?」
沈黙の空気が流れた。
…確かにこのゲートは凄く綺麗で誰もが目を惹かれるものだが、近寄り難い雰囲気も出ている
リン「あ、あたしはちょっと、怖い、かも」
少し震えた声でリンが答える。
メイコ「私も。中に入るのは勘弁。」
その後、オレ以外全員が中に入ることは拒否した。
もう、オレしか居ない。
リン「ほ、ほんとに行くの、!?だ、大丈夫??」
レン「うん、心配ありがとう、リン。でも、オレはカイトを見つけるっていう使命があるから。」
メイコ「おー、かっこいいね!頑張ってね。」
オレはみんなに挨拶を交わし、ゲートへと1歩踏み出した。
意識を手放していたみたいだ。
瞼を開けるとそこには綺麗なスカイブルーの光が一面に広がっている。
どこだ、ここは…
辺りを見渡していると人影が見えた。
何か行動を起こさないと。
オレはその人影の方へと足を運んだ。
レン「あ、あのー!すみませんー!」
オレは遠くの人影へ声をかけた。
人影はこちらに気付いた後、ぴょんぴょんと飛び跳ね走ってこちらに近付いてきた。
ま、待って…怖い怖い怖い。
段々距離が近付いてくると髪色が明らかになった。
カイトと同じスカイブルー。
そして、気が付いた。
あれは…カイトだ。
でも、カイトじゃない。服装が違う。
???「うわぁ!キミ、レンだよね?こんにちはー!ボクはカイト!でも、ボクの知ってるレンじゃないな…」
うわぁ…カイトだけどカイトじゃない…
陽気な印象を受けた彼は自分がカイトだと名乗った。
オレの知ってるカイトはもっと、初心な感じなのに!!
レン「え、あ…えっと…」
オレが戸惑っていると別のカイトが現れた。
???「ちょっと、ビカくん。困ってるでしょ。こんにちは。僕はワンダーランドのセカイのカイトだよ。よろしくね。」
レン「は、はあ??」
もうわかんない。ここはどこ。お前らは誰。
ビカ「ああ!そうやって自己紹介すればいいのか!ダカくんったら頭いいっ!!えっとね、ストリートのセカイのカイトだよ!」
レン「え、えぇ、…え?」
そんなこと言われても知らねぇよ…!
するとまたカイトが現れた。ドッペルゲンガーどころじゃねぇぞ、この人数!
???「お前らバカか。お前らの自己紹介しても意味ないだろ。こいつはここがどこかも分かってないだろ。」
そう!オレはそれを求めていた。分かってくれるカイトが居て助かった。
それにしてもうちのカイトと随分性格が異なる。
ビカ「え!待って、ニカくん天才!?凄いね!人の心が読めるなんて!」
ダカ「確かに、ニカくん凄いね。」
2人は称賛の声をあげた。
ニカと呼ばれたカイトは満更でもない表情を浮かべている。
???「あれ、キミ…レカくんのところのレンくん?」
もうやめて…オレのライフはもうゼロよ!
カイト多すぎ!どうなってんの!?
ダカ「言われてみれば、レカくんと服装が似ているね。」
ビカ「ふっふっふ〜!では当てましょう。ずばり、キミは教室のセカイのレンだね!?」
レン「せ、正解…」
ニカ「レカと同じなんだから、分かるに決まってるだろ。バカか?」
???「ま、まあまあ。落ち着いて。」
ビカ「うわぁぁん、モカえもん助けてぇ!ニカくんがいじめてくるよー!」
ニカ「うるさい。」
ビカ「はい、すみません。」
…忘れられてない?めっちゃ置いてけぼりなんだけど…
レン「あ、あの…」
ダカ「わぁ、ごめんね。キミは何をしにここにきたの?」
レン「カイトを探しにきて…」
ビカ「ちょっと待った!その前にキミの名前教えて?」
レン「いや、レンだけど…」
モカ「うーん。それはそうなんだけど、僕たちカイトがたくさんいるようにレンくんもたくさんいるんだ。だから名前からどこのレンくんか分かるようにしたいんだ。」
オレがたくさん?…うぅ、なんだか怖いな。
ビカ「うーん、普通に考えたらレカくんが「レ」だからレレ?いや、おかしいなぁ…」
ニカ「モモレン、ビビレン、ダショレン、ニゴレンとあるんだから、レオレンでいいだろ」
ビカ「おお!さっすがニカくん!……って痛いよ、ニカくん!なんで叩くの!」
ビカを置き去りにし、オレはレン改め、レオレンと呼ばれた。
ダカ「じゃあつまり、レオレンくんはレカくんが居なくなったから探しに来たわけだね?」
レオレン「うん、どこに居るか知らないか?」
モカ「残念だけど、ここにレカくんは来てないよ。」
レオレン「そっか…ったく、どこに行ったんだか…」
気を落としていると、先程のゲートが開いた
ビカ「あ!」
???「ちょっ、引っ付くなよ!」
お、おい…
???「ふふ、2人は仲が良いんだね。」
ちょっとまて…
???「仲良しなのはいい事だよね!」
嘘だろ…
???「うん、そう、だね。僕もカイトさんと仲良くなりたいなぁ…」
お、オレ…?
END 2話に続く。
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