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#青春恋愛
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夏希(なつき)
166
奇蹟あい
1,760
#一次創作
――地下資料室。
モニターは。
完全に消えていた。
『天城星羅は――』
『あの事件の「被害者」ではない』
その言葉だけが。
玲の頭から離れない。
「……」
星羅は。
何も言わなかった。
ただ。
自分の手を見つめている。
「星羅」
「……」
「大丈夫か?」
「……分からない」
初めて。
星羅が。
玲の前で弱々しい声を出した。
「私……」
「……」
「何なの?」
玲は。
答えられない。
「どうして私のお母さんが」
「……」
「玲くんと私を知ってたの?」
星羅の声が。
少しずつ震える。
「どうして」
「……」
「私たちは何度も引き離されて」
「……」
「それでもまた出会って」
「……」
「どうして私は」
胸元のペンダントを握る。
「玲くんを見つけるたびに」
涙が。
一粒落ちる。
「こんなに安心するの?」
「……」
玲は。
静かに星羅の前へ立った。
「理由なんて」
「……?」
「今は分からなくてもいい」
「でも……」
「俺は分かってる」
星羅が。
顔を上げる。
「何を?」
「俺がお前を好きなのは」
「……」
「誰かに決められたからじゃない」
「……」
「俺自身が決めた」
星羅の瞳が。
揺れる。
「……本当に?」
「ああ」
「もし」
星羅は。
震える声で続ける。
「もし私が」
「……」
「みんなが思ってるような人じゃなくても?」
「関係ない」
「もし私が」
「……」
「七年前の事件に関係していたとしても?」
「関係ない」
「もし私が」
星羅は。
涙を流しながら。
「玲くんを傷つけるような存在だったとしても?」
玲は。
少しだけ黙った。
そして。
「その時は」
「……」
「俺が止める」
「……!」
「でも」
玲は。
星羅の手を握る。
「その前に」
「……」
「お前を一人にはしない」
星羅の目から。
涙が溢れた。
「……ずるい」
「また?」
「うん……」
星羅は。
玲の胸に顔を埋める。
「そんなこと言われたら」
「……」
「もっと離れられなくなる」
「別に」
「……え?」
「離れなくていい」
「……!」
星羅は。
玲を強く抱きしめた。
「……大好き」
「ああ」
「大好き」
「分かった」
「世界で一番」
「……」
「誰よりも」
「……分かったって」
「何回でも言う」
星羅は。
泣きながら笑った。
「玲くんが嫌になるまで」
「嫌にならない」
「……本当に?」
「ああ」
「……じゃあ」
星羅は。
玲の耳元で。
小さく囁いた。
「一生、私の隣にいてね」
「……ああ」
「約束?」
「約束」
その時。
「……二人とも」
美咲が。
静かに声をかけた。
「一つだけ」
「……?」
「さっきの映像」
「うん」
「まだ続きがあると思う」
「……!」
玲が振り返る。
「どういうことだ?」
「この資料室には」
美咲が。
棚を指差す。
「映像記録が三つある」
「三つ?」
「今見たのは」
「……」
「二つ目」
玲は。
棚を見る。
「じゃあ」
「最後の一つは?」
美咲は。
答えなかった。
代わりに。
一番奥の棚へ歩いていく。
そして。
小さなケースを取り出した。
「これ」
ケースの中には。
一枚の古いディスク。
表面に。
『2017/12/24』
とだけ書かれている。
「……七年前」
玲が呟く。
「うん」
美咲が。
ディスクを機械に入れる。
――カチッ。
画面が点灯する。
映像。
七年前のイベント会場。
まだ幼い玲。
幼い星羅。
そして。
星羅の母親。
『……もう時間がない』
「……!」
星羅が。
画面に近づく。
映像の中。
母親は。
誰かと話している。
『あの子はもう気づき始めている』
『予定を早める必要がある』
男の声。
『ですが』
『……』
『玲くんを巻き込むのは危険です』
星羅の母親が。
静かに答える。
『だからこそ』
『……?』
『二人を会わせるの』
玲が。
息を呑む。
「……会わせる?」
映像の中。
星羅の母親が。
幼い二人を見る。
『あの子は』
『自分一人では耐えられない』
『だから』
母親は。
玲を見る。
『この子が必要なの』
「……」
そして。
衝撃的な言葉が。
『玲くんは、星羅を救うための「鍵」よ』
星羅の表情が。
凍りつく。
「……鍵?」
玲も。
何も言えない。
映像は続く。
『もし計画が成功すれば』
『星羅は普通の女の子として生きられる』
『失敗したら?』
少しの沈黙。
『……星羅は』
母親が。
目を伏せる。
『二度と普通には戻れない』
「……」
星羅は。
震えている。
しかし。
映像の最後。
母親が。
幼い星羅を抱きしめる。
『ごめんね』
『……』
『あなたをこんな運命に巻き込んで』
そして。
幼い星羅の耳元で。
『でも』
『あなたなら大丈夫』
『あなたは優しい子だから』
映像が終わる。
地下資料室。
完全な静寂。
「……」
星羅は。
しばらく動かなかった。
やがて。
「……玲くん」
「ん?」
「私」
「……」
「玲くんを利用するために」
涙を流す。
「生まれてきたのかな」
「違う」
玲は。
即答した。
「……」
「絶対に違う」
「でも」
「星羅」
玲は。
彼女の肩を掴む。
「俺は」
「……」
「お前に救われた」
「……」
「それは事実だ」
「……」
「だったら」
玲は。
まっすぐ星羅を見る。
「俺たちが出会った意味を」
「……」
「誰かに決めさせるな」
星羅の目が。
大きく開く。
「……」
「俺がお前を好きなのも」
「……」
「お前が俺を好きなのも」
「……」
「俺たち自身が決めればいい」
星羅は。
ゆっくり笑った。
「……うん」
「……」
「そうだね」
そして。
玲の手を握る。
「じゃあ」
「ん?」
「私」
涙を拭う。
「玲くんを救う」
「……」
「今度は私が」
星羅の瞳に。
強い光が宿る。
「誰かに決められた未来じゃなくて」
「……」
「私自身が選んだ未来を」
玲の手を。
ぎゅっと握る。
「玲くんと作る」
「……ああ」
「だから」
星羅は。
いつもの笑顔に戻る。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
その瞬間。
地下資料室の扉が。
――バンッ!
突然開いた。
「……!」
三人が振り返る。
そこに立っていたのは。
「……佐伯先生?」
佐伯だった。
しかし。
その表情は。
今まで見たことがないほど険しい。
「すぐにここから出なさい」
「え?」
「もう遅い」
「何がですか?」
玲が尋ねる。
佐伯は。
震える声で言った。
「……学校の外に」
「……」
「警察が来ている」
「それなら……」
「違う」
佐伯は。
首を振る。
「警察じゃない」
そして。
小さく息を吸う。
「七年前の事件を起こした連中が」
「……!」
「この学校を包囲している」
星羅が。
玲の手を握る。
「……玲くん」
「ああ」
玲も。
握り返す。
佐伯が。
最後に告げる。
「そして」
「……」
「彼らが一番欲しがっているのは」
星羅を見る。
「天城星羅――あなたよ」
――第三章。
文化祭の夜は。
最悪の形で。
終わりを迎えようとしていた。
コメント
1件
読んだよぉ〜〜〜!第52話、もうね、心臓がいくつあっても足りない回だった…😭💦 星羅ちゃんの「私は何者なの?」って問いかけが切なすぎて、最初から胸が締め付けられたよ…。でもそこからの玲くんの「関係ない」「俺が止める」「一人にしない」、言葉のひとつひとつが重すぎて泣いた。ずるい、って言う星羅ちゃんに「離れなくていい」って返すの、反則だよ…!💘 ラストの佐伯先生の登場で一気にサスペンスに引き戻された感じもやばかった。警察じゃないって…七年前の連中が学校包囲って…第三章、どうなっちゃうの!?続きが気になって夜しか眠れないよ!!続きも楽しみにしてるね、おやすみ〜!🌸