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ブラインドの隙間からの日差しで目を覚ます。時計をみるともう10時を指していた。

ああ、また机に突っ伏したまま寝てしまったか。近頃仕事が溜まりすぎて事務所で寝泊まりする日々が続いている。俺は大欠伸をし、席を立った。

眠気を我慢しつつ鏡に向かい、髪を梳かすと大量の前髪がはらはらと洗面台に落ちた。近頃ストレスで毛髪は後退し、やけ食いとやけ酒を繰り返したせいで端正だと自負していた顔も少し丸くなってしまった。

洋さんがどうしてもというので奴と組んだが、掲示板にはリャマだのデブ専ホモだの悪口を書かれ、俺が奴に犯される官能小説を書かれ、仕事の息抜きにコーヒー屋にいったら不審者に盗撮され…常人ならとうの昔に狂っているのではないだろうか。


俺はイライラを抑え、朝の日課の為に事務所の隅にある小屋の扉を開けた。家畜特有のむわっとした臭気が広がる。全ての原因が一糸まとわぬ姿で寝ていた。

「ナリィ…ナリィ…」

小屋に敷かれた藁の上、ふくよかな腹を上下させ幸せそうな寝顔をしている。

ジュニアアイドルの夢でも見ているのだろうか。こっちの苦労も知らずに。

「からさん、朝ですよ」

呼びかけても返事はない。今までの鬱憤もあり、奴の腹に思いっきり蹴りをいれる。

「仕事だ、起きろクソデブ!」

革靴の先が柔らかい腹に食い込む。

「グエッ、ナ゛…ナリコケコッコー!」

「朝7時に起こせって言っただろ今更遅ぇよ!大体鳥が起きるのは普通4時前だぞ、アホ、ボケ!」

俺は敬語を使うのも忘れ、罵声を飛ばしながら何回も蹴り上げた。

巨体は吹き飛び、のた打ち回っているだけだったがそのうち変化が訪れる。

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」

絶叫と共に奴の肛門から糞便が飛び散り、立て続けにころころと白い玉が零れ落ちてきた。


そもそもこいつに目覚ましとしての機能など最初から期待していない。これが本当の目的である。

からさんのぷっくら卵、濃厚な味でカロリーも少なく烏骨鶏卵の300倍の価格で取引され、いまやフォアグラ・トリュフ・キャビアと並んで代表的な珍味のひとつとなっていた。

俺がこの事務所を辞めないのもこの卵で多額の利益を得られるうえ、売りさばいた残りを思う存分食べられるからである。

「1…10…2783個、今日はこれだけですか」

俺は糞塗れの卵を数えながら籠に放り込んだ。肝心のデブは産卵のショックからかピクピク痙攣している。

さて、これからアイス屋と蕎麦屋に持っていかねば。いただくのはその後だ。

「次は40298個産んでください。できなかったら食肉にしますよ。」

「ナ゛、ナリイィ…コケッコッコ…ゴホッ」

まだ痙攣しているデブをよそに、小屋の扉を閉める。

今日は何にしようかな。オムレツもいいし卵焼きにして弁当に入れてもいい。

洋さんの母乳と混ぜてプリンにするのもいいなあ。

起きた時のイライラは吹き飛び、とろけるような卵の味に思いを長谷ながら俺は事務所を後にした。

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