「そんなつもりないよ」
学校を出て数十分後。
私たちを乗せた車は、見慣れた住宅街の一角で止まった。
佐伯(さえき)は私を残して車を降り、靴を片手に出てきたお母さんと話を始めた。
(気まずい……)
この様子だと、どうやら家には連絡済みだったらしい。
佐伯のことなんて家で話していなかったけど、あとでお母さんに追及されたらどうしよう。
後部座席で小さくなっていると、佐伯がこちら側のドアをあけ、身をかがめた。
「なに?」と思うより先に、彼が私の足をとり、靴を滑らせる。
(え……)
「歩ける?」
時間にすれば、ほんの数秒の出来事だった。
佐伯は膝を折ったまま私を見上げる。
ふいに視線が重なり、固まっていた私は、はじかれたように何度も頷いた。
「そう」
短く言い、彼は立ち上がった。
それからお母さんになにかを言い残して、佐伯を乗せた車は去っていく。
あたりに静けさが*********************
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