冷たい感覚、その癖目頭が熱い。
 なにこれ?
 …き
 胸の中が空っぽな感覚もある
 …き
 今は真夏なのに、寒い
 誰か抱きしめて
 …ばき
 お願い
 …っばき
 お願い
 …っばき
 椿「行かないでッッ!」
 バッと手を伸ばすと視界の隅で毛布が舞い、化粧されたお母さんの顔が出てくる。
 椿母「椿葵 大丈夫?」
 目元を拭うと目元には涙が流れていた。
 椿「あれ?なんだろこれ」
 椿母「怖い夢でも見た?」
 椿「分かんない、でも悲しかった気がする…」
 椿母「そう、でも悲しんでる暇ないわよ、時計見なさい
 寝坊よ」
 意味が分からず時計を見る、デジタル時計の数字を見るなり一気に血の気が引く。
 現在時刻7:45
 高校説明会まで残り45分
 椿「やっば!?」
 椿母「朝ごはんいる?」
 椿「食べたい!」
 椿母「なら急ぎなさい、いちばん遅い電車まであと20分よ、頑張れ〜」
 椿「他人事!」
 椿母「だって私行かないもの」
 椿「もう」
 とにかく急げ、嗚呼もうこういう時に限って全然リボンが結べない。
 髪は…いいや下ろしていこう。邪魔になれば電車で結べばいい。
 椿母「朝ごはんできたわよ」
 椿「はーい、ありがとう母さん」
 椿母「つまらせないでね、」
 椿「うん」
 どんなに急いでいても母さんの料理は美味しい、でも味わってる暇は無い。
 椿「ご馳走様!行ってきます」
 椿母「行ってらっしゃい、楽しんできてね」
 椿「はーい!」
 家を出て住宅街を駆け抜ける。
 思ってたより早く支度できたから1本早い電車に乗れそうだ…
 それにしても今朝の夢なんだったんだ。今こうして駅に向かうのすら寂しく感じてくる。
 分からない、分からないけど
 もっと速く走りたい、もっと冷たい空気が欲しい、誰かの背中が頭をよぎる。
 もっと、あなたと一緒にいたい。
 そんな想いが弾け飛ぶかのように私は電車に飛び乗る、人は休日よりかは少ないけど座れない。まぁしょうがない立っt
吊革を掴んだ瞬間ハラりと涙が流れる、なんで、なんで?
頭の中で背の高い男の人がこっちを見てくる、分からないのその人にそばにいて欲しい、抱きしめて欲しい。
 誰なの、ねぇ…
 窓から見える景色は一瞬で移り変っていく、あとひと駅で梟谷に着く、なのに涙が止まらない。
次は王子、王子、お降りの方は右側のドアよりご降車下さい…The nex…
降りないと、もう時間もないんだし。
 ゴシゴシ目元を擦って瞼に力を入れる。
 オレンジのドアが開いて人の波に私も呑まれ大丈夫余裕はある。
 改札を出てバスを待つ、走ってぐしゃぐしゃになった短いうねった前髪を整える。
 ほんとにこういう時癖毛であることを後悔する。  
気付けば涙も引いていた。
 ものの数分でバスは到着、乗ったバスもすぐに梟谷学園に着いた。
 始めてくる高校は、やけに大きくて。
 でもそんなに緊張しなかった。
 周りには色んな中学の制服を着た人たちがいて、みんな私と一緒の推薦組だろう。
 あと1年もすればクラスメイトになるかもしれない人、楽しみだな。
 陽「つーばき!」
 思い耽っていると後ろから抱きつかれる。
 椿「おはよう陽友」
 陽「おはよ!一緒にいこ」
 陽友に手を引かれて校舎に入ろうとすると懐かしい匂いがした、夏とか太陽みたいな匂い、振り返ってみても知り合いなんて居ない。
 …気のせいかな







