ただただ、貴方が好きなだけだった。それしか理由が無かった。
貴方には亡くなってほしくなかった。
だから、私は貴方を庇って亡くなった。
その時一瞬見えたの。貴方が絶望している顔が。
ごめんね、ごめんね。どうしても、長生きしてほしくて。
貴方のためなら、命なんか簡単に捨てられた。恋って怖いな。
これからは、雨の日も風の日もずっと墓石に座って、貴方を待つだけ。
貴方がシワシワになって、亡くなるのを待つだけ。
貴方は私のこと何とも思っていないだろうけどね。
ある快晴の日のこと。貴方が私に会いに来てくれた。
彼には酷く隈ができていた。どうしてそんなに、体調が悪そうなの?
彼はその場に座って、綺麗に墓石を拭いてくれた。
綺麗なお花も飾ってくれて、お線香も立ててくれた。
なんて優しいんだろう。
彼が鞄から何かを出した。それは、黒い小さい箱だった。
彼はそれを開いて、お花の生けてある筒の横に置く。
私が箱の中身を覗くと、なんとそこには綺麗な指輪があった。
「明日、君に彼女になってほしいと言いたかったんだ。」
彼はか細い声でポツリと呟いた。そのまま言葉を続ける。
「明日、なんの日か分かるか?君と僕が出会った日だよ。」
勿論、覚えているよ。だって、一目惚れだったんだもん。
「僕は出会ったとき、ビビッと来たんだ。一目惚れだったよ。」
そんな、それは嘘だよ。だって、そんな態度とってなかったじゃない。
「喋っている間、ずっと心臓がバクバクしていたんだよ。」
それは私も一緒だよ。ずっとドキドキしてた。
「君を、こんな姿にしてごめんね。」
貴方を守れて良かったよ。後悔なんてこれっぽちもない。
「それだから、言いたいことがあるんだ。」
彼はその場でひざまずいて、指輪を手に取った。
「来世、君と出会ったら僕と結婚してほしい。」
そんな、いいの?こんな私でも。嘘だ、嬉しい。
私の想いは貴方に伝わらないけれど、貴方の想いは伝わったよ。
約束するよ。来世、貴方と出会ったらまた貴方に恋に落ちるからね。
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