「………はあああ…」
深くため息をつく。
「(どうして、好きになっちゃったんだろう。)」
いや、本当に馬鹿らしい悩みだというのは自覚している。君に恋をしてから、どうも調子が狂う。恋は盲目、よく言うよ。
君の為に息をして、君の為に笑って、君の為に悩んで、時に死んでしまいたくなって、………
「(早く、この恋に終止符を打たないとね)」
僕は、生まれつき男の人が好きだった。
自分がゲイだということを自覚したのは中学の頃。とあるショーを寧々と観に行っていた。
「…へえ。『多様性を意識したショー』っていうのは知ってたけど……結構内容に踏み込んでくるんだね。類、こういうのも興味あったんだ」
「様々なジャンルのショーを見てみたいだけだよ」
ショーの内容は、主人公の騎士の男性が、想い人である姫を守る為に敵と戦っているうちに、敵の男に恋をしてしまう──。そんな話だった。
寧々はあくまで「ショー」として観ていたけれど、僕は客観的に観る事ができずに、主人公に感情移入していた。そして、共感した。
「僕の抱えていた『想い』はこれだ!」ってね。
あの時は驚いた。まさか、自分がそっち側の人間だったとは思いもしなかったからね。今まで恋愛的に人を好きになった事が無かった故に、自分だけでは気づけなかったのだろう。ただ、同級生や家族に恋愛の話を振られるたび、少しだけ違和感を抱いていたのは確かだった。
「(そんな僕が人間を好きになれたのは、とても喜ばしい事だと思う。だけど──)」
「今日も、心配されてしまったな」
頭を抱える。
司くんが辛そうにしていたらこっちまで辛くなってきてしまうし、司くんの為に何もしてあげられない自分に嫌気が差してきて、更に苦しくなる。そのせいで司くんにも寧々にもえむくんにも迷惑をかけてしまうし、心配されてしまう。それが何より嫌だった。
もう着替え終わったというのに、まだ更衣室にいる僕を不思議そうに見ている人がいた気がした。でも、この調子のまま三人と顔を合わせて心配されるくらいなら、周りの注目を浴びたほうがまだマシだ。
「(でも、早く行かないと更に心配かけてしまうかもしれないね) 」
僕は荷物を持ち更衣室から出ようと、出入り口付近を見渡した。すると──、
「…っ、……」
そこには、見たことないくらいに怯えている司くんがいた。
近くに寄ってみると、彼がどんなに怖がっているのかが鮮明に分かった。
「(上手く力が入らないのだろうか。今にも倒れてしまいそうな程不安定な立ち姿で、手も震えている。 …でも、何故──)」
だんだん自分も怖くなってきて、声をかけようと1歩前に出る 。すると、司くんが先に声を発した。
「…おお!類、やっぱりいたのか! というか、もう着替え終わっているなら早く出てこい!…全く、何分待ったと──」
司くんは、声こそは完璧だった。聞くだけで誰しもが笑顔になってしまうほど、元気な声で喋っていた。
…だが、表情はとても歪な顔をしていて、いつもの調子とは全くもって言えなかった。
「……すまないね。少し疲れてしまって」
司くんを元気づけたかったが、いつも笑顔にされてばかりの僕には、そんな事できやしなかった。
「まあ、色々あったからな。それに、さっきはすまなかった。……えむと寧々が外で待ってる。早く行くぞ!」
そんな自分に不甲斐なさを感じてボーッとしている僕の手を、司くんが引っ張っていった。
無邪気な君の後ろ姿は、見るだけで微笑ましくなってしまう。
「(…やっぱり、笑顔にしてもらってばかりだな。)」
そう自覚していても、彼を笑顔にするのはなかなかに難しい。そもそもいつも笑顔だし、こんなこと言っても「オレは毎日笑顔にしてもらっている」とか言われちゃうんだろうな。
……好きだなあ 。
「もう終わりだね〜〜……」
えむくんは寂しそうに笑った。以前夕暮れが苦手だと言っていたけれど、その気持ちは少しわかる。先程まであんなに楽しかったのに、あっという間に終わってしまった。
「今日が終わっても、また遊びに行けばいいでしょ。それより…今日はありがとうございます。晶介さん」
「おう。こっちこそ、えむをいつもありがとな」
「お兄ちゃん〜〜!!!」
「そ、そんなキラキラした目で見るな !」
…そんな会話を聞いて思わず頬が緩む。そんな幸せを噛み締めながら、夕空を眺めていた。
「(……いつか、言わなきゃいけない時は来るだろう) 」
僕がゲイである事、司くんのことが好きな事についてはまだ寧々しか知らない。勿論本人には言っていないし、いつか告白はしたいなと思っている。だけれど──
「(…なかなか、言い出せないな)」
今日も自分に言い訳をして、目の前の事から目を逸らした。
コメント
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好きすぎて産ましたオギャオギャ えたさん閲覧遅いのほんとに何キレるよ(??) あ゙ーーー‼️‼️神代ゲイだったのね…流石に類司だよなぁ…支え合って生きてね(早い) でも天馬の性被害の過去もある訳ジャン・キルシュタイン…😭😭😫😫💕💕 何も言わずに神代が告るのか天馬の事知って神代が諦めようとするのか…? 何方にせよ可愛いよォ…はぁはぁ…