テラーノベル
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翌朝。
冴は目を覚ますと、しばらく天井を見つめていた。
「……。」
昨日のことを思い出す。
夏祭り。
りんご飴。
射的。
花火。
そして――
「来年も。」
自分で言った言葉。
「……。」
布団に顔を埋める。
(なんで、あんなこと言ったんだろ。)
来年も一緒に行きたい。
ただ、それだけ。
……のはずなのに。
胸の奥が、少しくすぐったい。
-–
一方、奏斗。
机の上に置かれている、小さなキーホルダー。
昨日、冴からもらったものだ。
「……。」
手に取る。
昨日のことを思い出す。
『神崎にあげる。』
「……。」
奏斗は思わず笑った。
「大事にしよ。」
そしてキーホルダーを筆箱につける。
-–
昼過ぎ。
スマホが鳴った。
『神崎、昨日ありがとう。』
奏斗はすぐに返信する。
『こちらこそ!めっちゃ楽しかった!』
既読。
少しして。
『俺も。』
それだけ。
でも奏斗は、その三文字を何度も見返していた。
-–
しばらくして。
『またどこか行こう。』
奏斗から送る。
送信した瞬間、
(ちょっと急だったかな。)
そう思った。
でも。
すぐに返信が来た。
『うん。』
そして、もう一通。
『次は俺が誘う。』
「……!」
奏斗は思わず椅子から立ち上がった。
「マジか……!」
-–
その頃、冴。
スマホを握ったまま、ベッドに座っていた。
(送っちゃった。)
「次は俺が誘う。」
勢いで送ってしまった。
でも。
後悔はしていない。
むしろ――
少し楽しみだった。
-–
数日後。
二人は図書館で会った。
「石川!」
「……こんにちは。」
「なんか久しぶりな感じする。」
「三日しか経ってない。」
「三日も。」
「……大げさ。」
そう言いながら、冴は笑う。
奏斗も笑う。
二人でいつもの席へ向かう。
「そうだ。」
奏斗が筆箱を見せる。
「これ。」
小さなキーホルダー。
「まだつけてる。」
「……。」
冴は少し嬉しそうに目を細めた。
「なくさなかったんだ。」
「なくすわけないだろ。」
「……そっか。」
その声は、とても小さかった。
-–
しばらくして。
冴が本を閉じる。
「神崎。」
「ん?」
「次。」
「?」
「俺が行きたいところ。」
「うん。」
「一緒に行ってくれる?」
奏斗は笑う。
「もちろん。」
「……。」
「どこ?」
冴は少し考える。
「まだ秘密。」
「えー!」
「そのうち。」
「気になる!」
「……楽しみにしてて。」
そう言って笑う冴。
奏斗は、その表情を見ながら思った。
(昨日より。)
(今日のほうが、もっと嬉しい。)
特別な場所じゃなくても。
特別なイベントじゃなくても。
ただ、次の約束がある。
それだけで。
夏休みが少し長くなったような気がした。
-–
その日の帰り道。
「じゃあ、また。」
「うん。また。」
二人が別れる。
数歩進んで。
冴が振り返る。
奏斗も振り返る。
また目が合う。
「……。」
二人とも笑った。
今度は、どちらもすぐには目をそらさなかった。
-–
第20話 おわり
そして次回――
第21話「秘密の場所」
冴が奏斗を連れていくのは、小さい頃から一人で通っていたお気に入りの場所。
「ここ、誰にも教えたことない。」
その言葉を聞いた奏斗は、少しだけ驚く。
「じゃあ、なんで俺に?」
冴自身も、まだその答えを知らなかった。
コメント
1件
読了しました〜!「来年も」って言っちゃった冴の照れと、キーホルダーを大事にする奏斗の不器用な優しさが、もう本当に愛おしいです。LINEの「俺も。」の三文字だけでこんなに胸がいっぱいになるなんて。次に「一緒に行ってくれる?」と聞く冴と、笑顔で「もちろん」と答える奏斗の空気感が、夏の終わりの少し寂しくて温かい感じにぴったり合ってて、とても好きなエピソードでした。続きが気になります!
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