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嘔吐表現、暴力表現あり
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舗装がされていない道を歩く2人の人物。なにやら言い争っている様子で。
「なんで私ばっかこんな目に遭ってんの!?ほんっと意味わかんないんだけど_」
そう呟いて溜息をついているのは莉乃、32歳女性。最近精神的に限界を迎え始めている。そしてその原因のほとんどが、
「ふん、自業自得ってヤツだな!」
と、莉乃の隣を歩いてニヤニヤと笑っているゼイルだ。年齢も分からなければ性別も分からない。
「まだ当てはあんだろ?まだ諦めるには早いな!」
「はぁ、これだからあんたの事は嫌いなのよ…ああもう、頭痛くなってきた…」
と、顔色を悪くしている莉乃にゼイルは呆れた。
莉乃達は主にマフィアに武器を売ったり修理を請け負ったりしている。
莉乃が修理、ゼイルが武器を担当している。
いつも2人で行動しているが…見た通り仲がいいわけではないようだ。
「うるさくしないでよ、この前の失態をまた晒す訳にはいかないから…」
と言うと、再度ため息をつく。果たして”この前の失態”とは一体何なのか……後ほど知ることになるが。
「ハイハイ、わかりましたよ〜だ」
特に気にもしていないらしいゼイルは適当に返事をした。
いくつか会話を交わしているうちに2人は目的地に着いていた。
莉乃が扉を3回ノックすると、すぐに誰かが扉を開ける。
「こんにちは〜修理屋と武器屋でーす…はぁ、修理屋って必要ですかね……」
…初対面の人に対しての一言目がこれである。いつもの事なのでゼイルは呆れている。
「こ、こんにちは…?」
莉乃達を出迎えた人物は、何なんだこの人たちは、と困惑している様子を見せている。
「ギャハハ!大抵のヤツらがこんな反応すんのが面白いわ!」
と、その様子を見て爆笑しているゼイル。それを見て冷やかしに来たと思われたのか、
「私たちのことを馬鹿にしに来たのなら、今すぐ殺しますよ…」
と、銃口を莉乃達に向けている。莉乃は愛想笑いを作って言った。
「ええ、今すぐに私を殺して……」
何だかんだで誤解を解いて歓迎された莉乃達は、応接室に案内された。椅子に座り、組織のボスが来るのを待っている。
もちろん静かにじっとして待っている___わけがなく。
「オマエはいつもああ言っては困らせてるよな!まじウケる!!」
「っうるさい…あんたの声すごい頭に響くからやめて……」
と、騒がしくしている___主にゼイルが。
「あのね…静かにするくらいできないの?もう二度とやらかしたくないのよ……」
「別にいーだろ?楽しいじゃんか!何もしてない方がつまんねーだろ??」
「っぅ…ほんとにやめて…吐き気してきた」
と、口元を片手で抑えている。それを見てゼイルはけらけらと笑っている。
そんな会話をしている時、応接室の扉が開けられた。
入ってきたのは。伸ばされた黒色の髪、整っている顔、上質な服___
「はぁ”__ったくめんどくせーな…で、来客ってお前たちのことかよ?」
乱暴な口調、酒と煙草の匂い。見た目だけは良いが口を開くとダメなタイプの人間だと一瞬で分かった。
「、…初めまして、修理屋をやっている莉乃です……」
この人関わったらダメなやつだ__と思いながら、莉乃は無理やり笑顔を作る。
「で、俺は莉乃と親友のゼイル!武器屋やってるぜ!!!」
酒と煙草の匂いで吐き気が悪化している莉乃にトドメを刺そうとしているかのように大声で言うゼイル。…満面の笑みで言っているので確信犯だろう。
「オレはここのボスのレズアだ。レズア様って呼んでくれてもいいぜ?」
と、レズアは満面の笑みで言う。莉乃達と反対側の椅子に座り、足を組む。
「あは、あはは……もうそろそろ限界来そうなんだけど」
と、先程から更に顔色が悪くなっている莉乃は小声でそう呟く。
「俺にはぶっかけんなよ…?」
と、小声で返すゼイル。莉乃の心配より先に自分の心配をしているようだ。
そうして話を進めている中、莉乃が突然
「ぅ”___ま、まって、吐きそう」
「おま、マジかよ…?」
と言って両手で口元を抑えている。まさかの展開にゼイルは引いている。レズアはどういう状況か理解していない様子。
「っ…ふ、ぅ”___おぇ”」
と、堪えることが出来ず吐いてしまった。
「うーわまたやっちまったな三十路ゲロババア!!」
「うッわ汚ねーな!マジで最悪だわ。自分で片付けとけよ!!」
煽り散らかすゼイル、嫌そうな顔をして声を荒らげるレズア。
「_ご、ごめんなさッ…ひぐっ……」
…いい歳した女がこのザマである。
「ウケる!ほんっとーに迷惑かけんの好きだなぁ莉乃は!!」
「見てねーで何とかしてくれよ……」
ゼイルの言動を見れば、莉乃は他の場所でもやらかしていたらしい。
レズアは怒る気すら無くなった。
そんなカオスな状況の中、さっきまで泣いていたはずの莉乃が、
「__っふ、あはっ!私は社会の粗大ゴミ!!」
…と、笑い始めた。
「はァ…?」
「なんでこうなるんだよ……」
流石の気の狂いようにレズアもゼイルも困惑している。…というか引いている。
「あははははは!こんな事になったのは久しぶりだなぁ!!」
「マジで見てねーで何とかしろよ!!」
爆笑しているゼイル。キレ散らかすレズア。未だ笑い続けている莉乃。地獄絵図にも程がある。
それでもその地獄絵図には必ず終わりが来る。
「あははっ!!………殺して……」
莉乃は、今まで笑っていたのが嘘だったかのように無表情になり、そう呟いた。
「はァ…わかったよその言葉通り死なせてやるよッ!!」
と、莉乃に殴りかかるレズア。それをゼイルが制止する。
「まだ死なせるわけにはいかねーんだよ…!」
「とっととどきやがれクソ野郎ッ!!」
と、声を荒らげるレズア。しかし彼は弱い者いじめしかしたことがないため、
「オレはアイツを殺す___ッぅぐ!?」
秒でゼイルに腹パンで沈められた。気絶したレズアを一瞥して、莉乃を見る。
莉乃は心底安心___訂正。心底残念そうな顔をしている。
「なんで止めちゃうの?絶好のチャンスだったのに…」
そんな莉乃に対して、ゼイルは満面の笑みで言った。
「俺がいる限り80歳までは死ぬことなんてできねーからな!ゲロババア!!」
「もう、ほんとに…やだ……」