ざわつく教室。
春の柔らかい光が窓から差し込む中、ほのかが明るく自己紹介を終えると、クラスは少しだけ和んだ空気に包まれた
「春風さん、ありがとう。そして最後に転校生を紹介します。 」
紫藤先生の声で、教室の空気が張り詰めた
「響夜くん、入ってきて 」
カツ、カツ、と革靴の音が鳴り響く。
扉を開けて入って来たのは、黒い髪に鋭い目。どこか冷たい雰囲気をまとった少年だった。
「……響夜です。よろしく」
それだけ言って、一礼をする。
その瞬間ーー楓の背中を、汗が一筋伝わった。
(……今、見た?)
横を見ると、むつるの表情がいつになく険しい。
二人の間に、言葉なき´´合図´´が流れた
ーー感じた。あいつは「ただの転校生」じゃない。
その目、歩き方、気配。
何より紫藤先生でさえ一瞬だけ、警戒の色を浮かべたように見えた。
(まさか、こんなに早く…… )
そう、これは始まりだった。
静かに。だが確実に、「敵」が動きだしたことの。
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