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「僕は…君を今から拷問しなきゃいけない…」
僕を睨みつける鋭い目。黒髪の前髪から見える怒って釣り上がった眉。
僕は正直今すぐにでもこの場から逃げ出したかった。
調教任務引き受け
僕は黒島葵(23歳)へなちょこ兵士だ。
体力もないし筋肉もないし、ちょっと頭がいいだけでずば抜けてはない。赤髪で髪は整えてなくボサボサで眼鏡をかけている。
恋愛に対して興味もないしこれといった趣味もない。
親から勧められ入ったこの兵団の中でも僕は役立たずとみなされ見回り兵だ。
退屈だな〜、でもこれでいいなとも思ってる。
捕まえた敵国の兵を閉じ込める収容所。頑丈な鉄格子が窓につけられいかにも脱出不可能という感じだ。そんな悍ましい牢獄の壁に僕は寄りかかっていつも通り新聞を読む。
すると一文がぱっと目に入った。
調教師の深刻な人手不足
なんとも物騒な求人記事だ。もう読むのをやめようと新聞を丸めると目の前に上司が立っていることに気づいた。
急いで敬礼!!何も悪いことはしていないのに脇汗が滝のように出てくる。
「お疲れさん葵、これを見てくれ。お前に頼みがあってな」
いつもより優しい口調の上司に戸惑いつつも渡された紙を見る。
調教師任務 推薦状 この度黒島葵を調教師に推薦する マーク•プレッサーより
なるほど…これは僕のことを嫌っている別の兵団の上司の名前だ。
嫌がらせをするなんてどんだけ暇な人なんだ!あの人眼鏡全員嫌いだろ!
そんなことを思いながら自分ができる最大限の嫌な顔をし上司へと顔を向けた。
「わかってるぞ葵。でもやるしかない。俺も上のやつと拗らせたくないんだよ」
「わかりました…。では僕は牢獄の一部屋へと移るわけですね…」
「まぁそんな肩を落とすことはない。牢獄の部屋はかなりスイートな部屋らしいからな。飯もうまいぞ」
この人がスイートって言うとなんかやだな。
そんなことを考えながら渋々推薦状に自身のサインを入れる。
明日からは引っ越しと僕が初めて調教する敵国の兵士とご対面だ。ため息をつきながら自分の家へと戻るのであった。
調教任務 調教相手とのご対面
夕日が沈み、長い時間かかった引っ越し作業が終わった。
確かにあの上司が言っていた通りスイートルームだった。前の家とは比べ物にならない広さと金持ちさながらの上等品の家具が置いてある。
そして驚きなのが香水や消臭剤の量。一年分ぐらい軽くあるんじゃないかと思う量が戸棚に仕舞われている。これからやる仕事の過酷さが伺え何度目かもわからないため息が出る。
今日は見るだけだから作業服は着ず、手袋とマスクのみを着用し長い廊下を歩いていく。
ある大きなドアを境に、とんでもない数の唸り声や悲鳴が聞こえるようになった。
耳を塞ぎたくなる。僕は軽く肩をすくめながら上司の立つ扉の前へときた。
「よく眠れたか?」
「眠れるわけがないです」
だよなと上司は返しゆっくりと扉を開いた。中に調教する相手がいるらしい。
体が拒絶するのを感じながらも任務なんだからと言い聞かせた。
「ん…」
声が聞こえた。僕の目の前には椅子に括り付けられ身動きできない状態でも目で必死に威嚇している、僕よりも小さい少年がいた。
驚くあまりにえっと声を出してしまった。
敵国の兵士はこんな子供を戦争に出したのか。呆れと同時に怒りも湧いてくる。そして恐怖も。
僕はこんなに小さい子供を調教しなくてはならない。でも、だとしてもそんなことしなくない!
ぐるっと首を回し上司に目で訴える。
上司は首を横に張るだけ。やるしかないんだ。
「口枷外してやれ」
そう上司が言った。僕は放心状態でただ上司の言うことを聞き彼の口枷を外す。
外せば美しい口元が見え、鋭い黒色の目と合う。
「近付くなクソ眼鏡」
そう一言だけいい鋭い瞳を僕に向ける。
思っていた通りの言葉に思わず苦笑いをしてしまった。
するとガタンと大きな音を立て彼が椅子ごと倒れかかってきた。
慌てて支えようとする手にガリっと噛みつかれ皮膚が剥がれる。思わず叫び噛まれたところを抑えた。
「おい!!葵大丈夫か!!」
上司が慌てて駆け寄る。
僕は痛みなんてそっちのけで彼を見た。倒れたままの彼は目だけこちらに向け不気味な笑みを浮かべている。
その時分かった気がした。こいつは少年じゃないと。調教しなきゃいけないんだって本能的に感じたんだ。
昨日読んだ新聞にこんな記事が書かれていた。
敵国の少年。たった1人で民間人100名以上を銃殺。捕まった時でさえ不気味な笑みを浮かべていた。