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『ひーときた』
ないこと2人で打ち合わせをしてる最中。
突然あにきからLINEで打ち込まれた言葉だ。
普段ヒートが来ても、我慢しちゃうのにわざわざ報告するくらい辛いのだろうか。
ないこは早く帰れなんて言ってくれて、爆速で家に帰ってきたところだ。
玄関を開けると甘ったるいヒート独特の匂いが漂ってきた。
あーこれ、結構強いな、なんて考えながら、あにきの寝室の扉をノックする。
どうも反応がなく、入るよー?なんて声をあげながらゆっくりとドアを開ける
そこには。
「…」
山があった。
いや、正確には山のように積み上げられた布の塊だ。
俺のパーカー、部屋着、下着、普段着や少し前に買った衣装、りうらに選んでもらった高い服、バスタオル、あにきのお気に入りの毛布、二人で使っている枕まで。
それらがベッドにこんもりと積まれ、まるで小さな秘密基地のようになっていた。
そして、その真ん中に。
「…おそい。」
あにきがいた。
俺のパーカーを胸元まで引き上げて、少し丸まって寝ている。
顔は火照っていて、いつもより少し潤んだ瞳でこちらを見上げた。
「これ、全部あにきやったん?」
「…ちがう」
「じゃあ誰やったん?」
「……………………、俺。」
かわいい。
思わず口元が緩んだ。
「巣作りしてくれたん?」
ぴく、と彼の肩が跳ねる。
「…言わんとって。」
「なんで〜」
「恥ずい。」
そう言って、悠佑はパーカーの袖をぎゅっと握った。
オメガの本能が強く出る時期、特にヒート時には、自分の安心できる場所を作りたくなることがある。
知識としては知っていたけれど、まさか俺の恋人がこんなに一生懸命巣を作ってくれたなんて。
「俺の服ばっかりやな」
「…いい匂いするの」
「俺の?」
こくん、と小さく頷く。
「落ち着くん。ここ…」
胸の奥が、きゅっと締め付けられた。
最近は事務所に行くことが増えていて、帰りが遅くなる日が続いていた。
寂しい思いをさせていたのかもしれない。
「ごめんな。寂しかった?」
「………ちょっとだけ」
「ちょっとだけ?」
「……………………いっぱい。」
小さな声で訂正されて、俺はとうとう笑ってしまった。
「そっか。いっぱい寂しかったか」
「笑うな…」
「ごめん。かわいくて」
悠佑の隣に腰を下ろすと、悠佑がもぞもぞと居心地が悪そうな顔をした。
すると少し迷ってから、俺の服の裾をつまんだ。
「…入っていいよ」
「え?」
「ここ。」
どうやら、招待してくれるらしい。
「お邪魔します」
わざと丁寧に頭を下げて、悠佑の隣に潜り込む。
思ったより狭い。
けれど、服に包まれた空間は暖かくて、悠佑の甘ったるい匂いが強くなる。
「狭いね」
「…嫌?」
「まさか。最高」
そう答えて腕を広げると、悠佑は少しだけためらってから、俺の胸に身体を預けてきた。
髪を撫でると、悠佑は安心したように目を閉じた。
「……俺の匂いも、つけて。」
その言葉があんまりにも恥ずかしそうに小さくて、愛おしくて。
俺は悠佑の額にキスを落とした。
「じゃあ、明日から俺の服、もっと置いてかんとな」
「ええん?」
「かまへんよ。パーカーも、シャツも、なんなら俺もここに住もっかな」
「それがいい」
即答だった。
思わず笑うと、悠佑は俺の胸元に顔を埋めて、隠れてしまった。
恥ずかしいのかな〜なんて思いながら頭を撫でてあげると、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
恐る恐る顔を見ると、俺の服を握ったまま安心しきった顔で眠っている。
巣の中には、彼が集めた俺のものがたくさんあった。
「…ただいま、My honey」
眠る彼を抱き寄せて、もう一度だけ額にキスを落とした。
そうすると、あにきはとっても嬉しそうに微笑んだ。
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