テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第2章 日記の中の本音
「昨日、ちゃんと書いてたな」
休み時間。亮くんは例のノートを机に置くと、何気ない顔でそう言った。
「え、あ……うん」
「……意外だった」
「ちょっと!どういう意味?」
思わず声を荒げると、彼はペンを指でくるくる回しながら、視線を外す。
「別に。続かないと思っただけ」
「むっ……!」
むかっとしたけど、その言い方がなんだか少し照れ隠しみたいにも聞こえて、胸がざわついた。
ノートを開くと、昨日の亮くんの書き込みの下にこうあった。
『本音は、あんまり得意じゃない。
でも、誰にも言えないことくらいは書いてもいいかも』
(……これって、ちょっとだけ本音?)
ページを見つめながら頬が熱くなる。
「なに、ニヤニヤして」
「し、してないし!」
慌てて閉じると、友達の美咲が「ちょっと〜?なになに、何の話?」と割り込んでくる。
「べ、別に!宿題のこと!」
「ふーん……?怪しいなぁ」
美咲の疑惑の視線を受けながら、私は必死にごまかした。
その日の放課後。
「ねえ〇〇、今日カラオケ行こ!亮くんも来るって!」
美咲の突然の提案に私は目を丸くした。
「えっ、よ、吉沢くんも!?」
「そうそう!男子が誘ったらしいよ〜」
カラオケボックスに入ると、友達数人と一緒にワイワイ盛り上がる。
マイクを握った美咲が大声で歌う横で、亮くんは隅のソファに座り、スマホをいじっていた。
(やっぱりクール……)
と思ったその時。
「〇〇、歌えよ」
「えっ、私!?」
「……お前、歌うの好きだろ」
「な、なんで知ってるの?」
と聞くと、彼は少し視線をそらして。
「……日記に書いてただろ」
胸がドキンと鳴った。
昨日のページに「最近カラオケ行ってないな〜」って、何気なく書いたこと。ちゃんと読んでたんだ。
「じゃ、じゃあ……歌う」
「ほら」
マイクを差し出してくる手が、意外と優しくて。指が少し触れただけで、心臓が跳ねた。
歌い終わると、友達から拍手が起こる。
「え、めっちゃ上手いじゃん!」
「さすが〇〇!」
照れてうつむいたその時。
小さな声で亮くんが言った。
「……悪くない」
(なにそれ……!)
昨日の日記と同じ言葉。だけど、耳元で直接囁かれると、全然違う意味に聞こえてしまう。
顔が真っ赤になるのを隠せなくて、私はドリンクのストローを必死にいじった。