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私の彼氏は「クマ」
「いいな〜、ミコトの彼氏ってクマ🐻なんだよね?」
久々に会った親友の鮎美は目を細めて笑う。
「そう!いいでしょ」
誇らしいような、嬉しい。
そう、私の彼氏は本当にクマなの。
「そろそろ帰らないと、クマがご飯作って待ってくれてるから…」
「うんうん、そうだと思った。
めちゃくちゃ甲斐甲斐しい彼氏だもんね〜
あ、ねえコーヒー奢って笑」
鮎美は表裏がなくて好きだ。
…その分時々、かなり図々しいけど。
早足に喫茶店を出る。
夜の寒い空気に当たると、温かいクマを思い出す。早く会いたいよ。
駅の方へ駆け出すと、ふいに
「ミコト」
聞き慣れた声ですぐに分かる。
私の大好きなクマだ。
「え!迎えに来てくれたの…?」
「当たり前じゃん、大好きな彼女だもん」
もう必然に手を繋ぐ。
クマは人間と違って大きな肉球があって、温かくて弾力があって。
ずっと、ずっとずっと前から、きっと出会う前から私はこうしたかった。
泣きそうなくらい、心が温かくなるから、
この手を離すくらいなら…地獄に堕ちたって構わない。
「ねえ、日が暮れるのが早くなってきたね」
「ほんとそうだね。ミコトと一緒に歩くの好きだな」
クマだって歩ける。
全身にりっぱなふわふわな茶色の毛があるお陰で、紺のコートが良く似合うんだから。
艶々した毛並みは、どんな色の服も似合うんだから。
クマって、人間よりずっと表情も豊かなの。
瞳は綺麗な薄いダークブラウンで、光の当たり具合では透き通ったガラスみたいに…
まるで、揺れる水面のように自然が溶け込んでいる。
地球みたいに、深いグリーンに見えることもある。人間は持たない美しさ。
クマと一緒なら、歩くのが全く苦にならない。
結局、電車には乗らず一駅分歩いて、私たちの部屋に帰った。
ずっと、ずっと続いて欲しい。
ただ歩いているだけなのに、有限が苦しくなる。
クマといるだけで、この世界が素晴らしいんだ。すれ違う人も、暮れる街も光も、頬に当たる風も全て、ここに生きることの意味を与えてくれる。
大好き、大好き、大好き。
2人の部屋に帰る。
小ぶりのアパートが、私たちの家だ。
玄関のドアを閉めて、すぐにもふもふの身体をぎゅっと抱きしめた。
「ずーっと、クマとこうしたかった…」
「…ねえ、ミコトに見せたいものがあるんだけど、いい?」
クマは、神妙な面持ちで部屋に入り、机の上に一枚の紙を置いた。
ーーー婚姻届ーーー!!
「ミコト、結婚しよう」
「え…!!!!」
嬉しい、胸がいっぱいで溢れる。
でも
でも、待って
クマと結婚って出来るんだっけ?
出来るの?
法律上、出来るんだっけ??
「ありがとう、私も大好き
クマのこと……愛してる」
そうか、私が来世でクマになれば、クマと結婚出来るんだ。
クマのことが大好き。
愛してる、家族になりたい。
本当の家族になりたい。
ーーずっと、彼氏彼女のままは嫌…!!
「ミコト?どうしたの??」
「……クマ、ごめん。私ちょっと、やらなきゃいけないこと思い出した。」
顔を上げ、振り向いて玄関に向かう。
冷たくなった靴に足を入れ、私は勢いよくドアを開けた。
end
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