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玲央は老人の言葉に興味を引かれた。
「試すってのは、何をすればいいんだい?」
老人は静かに玲央を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「お前が本当に信用できるかどうか、この村の者たちが判断する。そのために、試練を受けてもらう。」
周囲の村人たちがざわつき始める。
「試練って、まさか……!」
「この者、本当にやる気なのか?」
玲央は軽く肩をすくめた。
「へぇ、面白そうじゃん。で、その試練ってのは?」
老人は静かに手を挙げ、村人たちを沈黙させた。
「村の東に、獣が住みついている洞窟がある。そいつが近くの川の水を汚し、村に害を及ぼしている。お前には、その獣を退治してもらう。」
玲央は眉を上げた。
「獣退治ねぇ……なかなか物騒な歓迎じゃん。」
「簡単なことではない。だが、それを成し遂げれば、この村の者たちもお前を認めるだろう。」
村人たちの表情は複雑だった。
玲央を警戒する者もいれば、試練を受ける彼に興味を持った者もいる。
「ほぉん、なるほどねぇ。悪くない。」
玲央は薄く笑いながら、手をひらひらと振った。
「ま、ノリで生きてるからねぇ。やるだけやってみるさ。」
***
試練の準備が進められた。
村の若者が玲央に簡単な武器を渡す。
「お前が使えるのはこの槍だけだ。余計な武器は持ち込むなよ。」
玲央は槍を受け取り、軽く振ってみる。
バランスは悪くない。
(ま、ないよりはマシかねぇ。)
村の外れまで案内されると、老人が最後の言葉をかける。
「ここから先は、お前の実力次第だ。」
玲央は槍を肩に担ぎ、軽く笑った。
「そりゃ楽しみだねぇ。」
玲央は槍を肩に担いだまま、改めて村の様子を見渡した。
木造の家々はどれも風情があり、村の中央には大きな広場が広がっている。
そして——どこからともなく、音が聞こえた。
「……ん?」
風に乗って流れてくるのは、軽やかで心地よい旋律。
耳を澄ますと、弦楽器の音や太鼓のリズムが村の至るところから聞こえてくる。
(……へぇ、音楽の村ってわけか。)
玲央が目を向けると、子供たちが小さな太鼓を叩いて遊んでいた。
少し離れたところでは、村の男たちが長い笛のような楽器を吹き鳴らしている。
さらに奥では、女性たちが軽快なリズムに合わせて手拍子を打ち、足を踏み鳴らしていた。
玲央は唇を尖らせ、興味深そうに呟いた。
「なんか……ノれる雰囲気じゃん。」
村の長老が微笑みながら頷いた。
「この村は、音と共に生きている。楽器を奏で、歌を歌い、リズムを刻むことが、我々の文化なのだ。」
玲央は思わず笑った。
「そりゃあ、面白ぇや。」
音楽を愛する者として、この村の雰囲気は悪くない。
「でも、それならどうして獣退治が試練になってんのさ?」
長老は静かに答えた。
「音楽は、自然と調和することで初めて意味を持つ。しかし今、そのバランスが崩れているのだ。」
村の若者が険しい顔で続けた。
「川のそばに住みついた獣が暴れたせいで、村の水が汚れてしまった。水が汚れれば、楽器を作る木も育たなくなるし、我々の歌も響かなくなる。」
玲央は槍を軽く回した。
「ふーん、なるほどねぇ。」
「お前が本当にこの村の一員となるつもりなら、獣を倒し、音楽の調和を取り戻してもらおう。」
玲央は村の音に耳を傾けながら、ふっと笑った。
「いいじゃん。やってやろうじゃないの。」
彼の胸の中で、リズムが高鳴り始めていた——。