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玲央は村の若者たちと共に、川の近くへと足を運んだ。
流れる水の音に混じって、不穏な唸り声が響く。
「……へぇ、でかいのがいるねぇ。」
玲央が目を細めると、川の中州に巨大な獣が鎮座していた。
黒々とした毛並みを持つ、大型の獣——おそらくはオオカミに近い生物だろう。
目は鋭く光り、鋭い牙が剥き出しになっている。
村の若者の一人が震えた声で言った。
「お、俺たちも手伝う!」
しかし玲央は軽く手を挙げて止めた。
「いや、いいねぇ。ちょっと試してみたいことがあるんだ。」
彼は深く息を吸い込み、槍の柄を指でトントンと叩いた。
——リズムを刻む。
川の流れ、木々のざわめき、村で聞いた太鼓の音。
それらが玲央の頭の中で組み合わさり、新たなリズムとなって脈打つ。
「ノってきたねぇ……!」
玲央は槍をくるりと回し、地面を蹴った。
その動きと同時に、村の若者たちが持っていた太鼓が鳴らされる。
ドン! ドン! ドドン!
「——ッ!」
獣が反応した。
音に導かれるように動き出し、玲央のほうへと突進してくる。
「ハッ、いいねぇ!」
玲央は音に合わせ、リズムを取るように回避。
敵の動きが読める——いや、「リズムを作れば」、こっちのペースに持ち込める!
槍の柄を再びトントンと叩き、体のリズムを整える。
ドン! ドン! ドドン!
次の瞬間、玲央は獣の背後へと一気に踏み込んだ。
「リズムに乗って——終わりだよぉ!」
一閃。
玲央の槍が獣の側面を鋭くなぞり、決定的な一撃を与えた。
獣がうめき声を上げ、その場に崩れ落ちる。
しん……と静まる川辺。
しかし、次の瞬間——
「うぉぉぉぉぉ!!!」
村の若者たちが歓声を上げた。
「す、すげぇ……!」
「音に乗って、まるで踊るような戦い方だった……!」
玲央は槍を肩に担ぎながら、ふっと笑った。
「ま、楽しいじゃん? 戦いだって、音楽みたいにノれるほうがいいねぇ。」
長老が微笑みながら歩み寄る。
「見事だ、玲央。お前はもう立派な村の一員だ。」
玲央は少し肩をすくめた。
「ま、悪くはないねぇ。」
こうして、玲央は音楽の村に正式に受け入れられた。
だが、彼の胸の奥では、まだ別のリズムが鳴り続けていた——
千空たちと、いつかまた合流するために。