TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

ルフェリア王国辺境に位置する辺境自治区ギルダム。


そこに存在するギルダム中央村は、村という名前から想像する規模よりも遥かに大きく、街といっても遜色ない。


元々は小さな村だったらしいが、自治区として認定されてからは商人たちが押し寄せ、拡張に拡張を重ねて現在の姿に至ったらしい。


そんな村の入り口に迫る大勢の人影があった。


その姿、一度見た者は恐怖に震え、幾日も忘れられないだろう。


集団を率い、先頭を歩くのは、白いシャツを着た正装の男。


そしてその後ろには、120体の異形のアンデッドの群れ。


その中には、八つの腕を持ち、腹からは醜い二つの目玉が覗く、アンデッドの中でも特別風格を纏ったものもいる。


アンデッドの後ろにも、まだ異形の列は続く。


人間の成人男性の二倍近くある筋肉質の巨体。その頭からは二本の大きな角が生え、顔面は闘牛のそれだった。彼らは斧を持ち、この村を破壊する意欲を見せる。


住人達はその光景に畏怖し、これから蹂躙される己らを思って涙を流す。


その集団は先頭を行く正装の男がかざした右手によって、寸分の乱れもなく停止した。


もうおわかりだろう。そう、その先頭の男というのは。


……もちろん、俺である。


「めっちゃ、怖がられてるんですけど……」


村の入り口付近にいた小さな女の子が、俺たちのことを見て、それはもう化け物を見たみたいに泣き叫んでいた。


「おーい、大丈夫だよー。お兄さんたち、怖くないからね」


「うわああああああん!! 怖い人は大体そう言うもん~~~!」


確かにそれもそうだ。難しい。


異変を聞きつけた村の警備兵たちが急いで駆けつけてくる。


だが、突然のモンスター軍の強襲(誤解)に「ひっ」と小さく悲鳴を上げて、腰を抜かした。


「おい、レーナ。どうにか村の誤解を解いてくれ……召喚宮殿とかいうとこから派遣されてきたお前なら、この村のお偉いさんとも顔見知りなんだろ?」


と、さっきまで後ろにいたレーナの方を振り返るが、そこには誰もいなかった。


「ええ……ここで自由行動とかないわ」


またあのバカが勝手にどっかいったのかと、心底呆れていると。


「召喚主。レーナ殿ならあそこに」


『地獄骸』が後方でびっしりと密集している120体のアンデッドの大群を指さした。


「え、どこ?」


「うわあああああん!! 助けてください~~!」


さっきの子供と同じような泣き声が、アンデッド集団の中から聞こえてきた。


それから数秒経って、「ぷはっ」とアンデッドの群れの中からレーナの顔が出てくる。


「なにやってんの? 楽しいの?」


「ぜ、全然楽しくないですよー! 地面に珍しい虫がいたので、ちょっと立ち止まったら、このアンデッド集団に飲み込まれたんですーー!」


色々と酷い。だがまあ、見失うよりはマシだろう。


俺は近づいてレーナの頭を掴む。


「へ? な、何するんですか?」


動揺しているレーナを無視して、俺は彼女の頭を強引に力で引っ張った。


「おらあ!」


「いたたたたあああああああああっ!? 取れる! 頭、取れちゃいますよ!」


「このくらいじゃ取れん!」


ずぽっ! とギャグみたいな音と共に、レーナの身体をなんとか抜き出すことに成功した。


レーナはそのまま崩れ落ち、両手両膝を地面について、肩で息をしている。


「も、もっと優しくしてくださいよ……」


「優しくしたくなるような理由だったらな」


そうこうしているうちに、村側は完全に警戒を強めていた。


面食らっていた十数人の警備兵たちも身体を震わしながらも、木でできた盾を構え、こちらを睨んでいる。


「やばいやばい……」


今回はただ見物に来ただけなのだ。


侵略する気など毛頭ないし、なんなら友好関係を結びたいくらいだ。


アンデッドたちが「自分たちも観光したい!」とか言って、無理やりついてこなければこんなことにはならなかったものを……。


結局、顔見知りのレーナが村の人々に口を利いてくれれば問題ないと判断して、アンデッドを連れてきてしまった俺にも責任はあるのだが。


とりあえず、早くこの場をなんとかしなければ。


だが、俺とレーナがもたもたしている間に、こちらから一人の女性が前に出た。


アリカ・リンリー。外見だけを見れば、頼れるクールなお姉さんである彼女が、きりっとした顔で村人たちの矢面に立つ。


朝起きた時もそのくらい凛々しくいてくれませんかね……。


「私はアルギアの召喚宮殿より、この者たちと中央村の友好関係構築を取り持つために派遣された第三位召喚術師、アリカ・リンリーです。この者たちに敵意はありません。中央村の村長をお呼び頂けますか?」


アリカはそうやって、冷静な表情を作って村人たちに呼びかけた。


すごい。俺たちと違って、しっかりと村人たちとコミュニケーションを取っている。


――だが、その言葉のほとんどが大嘘だった。


友好関係構築とか初めて聞いたんですけど。てか、可愛い弟子を取られそうになって、自分から飛び出してきたんだから派遣されたわけでもない。


その証拠に村の人々は彼女の顔を知らないようだ。


彼女の言葉で正しいのは、彼女の名前と位だけである。


「……」


「……」


涼しい顔をして大嘘をつく弟子(お師匠)のことを、無言で唖然と見つめる俺とレーナ。


しかし、肝がこのくらい据わっていないと、第三位召喚術師とかいう聞いただけで、すごそうな役職まで出世できないのかもしれない。


その辺が四六時中、バカなことをするレーナとは違う点だ。


アリカは取り繕えるアホなのである。


そんなことを考えていると、集まってきた村人たちが左右に道を開けた。


そうして、村の奥から現れたのは、白い髭がチャーミングな腰の曲がったお爺さん。だが、確かな威厳を持ち合わせており、村民たちの間には緊張が走った。


彼が村長で間違いないだろう。


「奇妙な姿をした客人たちよ。私がこの村の村長じゃ。おまえさん方の目的を聞かせてもらおう。侵略か? それとも単なる殺戮かの?」


村長は鋭い目で俺を睨んでくる。どうやら、友好関係云々の話はドタバタの中で伝わっていないらしい。


てか、ここでレーナの出番だろ! とレーナを見ると、彼女はなぜか『地獄骸』の後ろに隠れてぷるぷる震えていた。


「村長さん怒ってる……いつもは温厚なのに……怖いですっ」


肝心な時に役に立たない弟子である。

仕方がない。こういう時は丁寧な対応をしておくべきだ。


「騒がせてしまって申し訳ございません。私どもに皆さんを怖がらせるつもりはなかったんですが――」


「なにっ!? 恐怖させる間も与えず、殺す気だったと申すのか!?」


「きゃあ!」、「恐ろしい……」と村人たちの間にざわめきが広がる。


誤解が酷い。


「いや、そうではなく、私どもはあなたがたと友好を結びたくてですね……」


「嘘をつけ! アンデッドなんぞを引き連れた闇の召喚術師が!」


会話にならなかった。それなら仕方がない。


俺は『地獄骸』のそばまで行くと、その後ろに隠れていたレーナを力づくで引きずり出した。


「いーやー!」


「お前がちゃんと説明するって言ってたろ! 村長さんが顔知ってるの、お前しかいないんだから、頑張ってくれよ!」


レーナは涙目だが、窮地に追いやられている俺も涙目である。

そうして、涙目が涙目を引きずり出し、村長の目の前に突き出した。


「む……そのお方は召喚宮殿の……」


知り合いのレーナを見て、村長さんの顔色が変わる。


怖い村長さんに怯え、「うっ、うっ……」と涙目のレーナ。


ぽろぽろと涙が地面に流れる。

その首根っこを捕まえて突き出す俺。


……ん、この状況ってもしかして……?


村長さんの顔色が、変わる。

衝撃を受け、真っ青に。


「まさか……私たちのために調査に出てくださった召喚術師さまを人質にするとは……! おのれ、卑怯だぞ、アンデッドの召喚主……いや、この残虐な仕打ちはただの人の所業ではない……」


このパターンはまずい。

非常にまずい。


そして、村長は高らかに宣言する。


「皆の者よく聞け! この者はアンデッドを引き連れ、人間たちを殲滅せんとする――アンデッドの王――すなわち、魔王に違いない! 警備兵諸君、武器を取れーーー!」


「うわーーーーーーーーー!!! どうすんだこれーーーーーーー!!!」


また一歩、俺は魔王に近づいてしまったようです。

モンスター創造スキルを使って、異世界最強の召喚術師になります。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

37

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚