沖へ近づいて行くにつれ、火の粉が風に乗ってきている。海水は冷たいので助かっていると、恐ろしい猛火に焼かれる半透明な人型の魂が、救いを求めて、海へと大勢落下していた。
ここは、本当の地獄なのですね。
無事に沖へ船をつけると、シロを連れて陸へ上がり大汗を掻きながら、焦熱地獄から大叫喚地獄までの洞穴を探すことにした。
地面が熱い。
真っ赤に燃え盛るかのような赤い色の地面は、ここへ来た時よりも更に高温になっていた。
足袋の底から高熱が襲う。
シロは大丈夫かと、少し後ろへ振り向いてみると、意外にも熱い地面をトコトコと何食わぬ顔で歩いていた。
ドンッと、巨大な炎の柱がまた遠くで昇った。
それと同時に、また気温が上がる。
大汗を掻きながら、慎重に歩いては、なるべく中身を見ないようにして、真っ赤に焼けた熱鉄のかまの間だけに目を凝らした。
その先に、広大な焦熱地獄の地に洞穴がないかと探す。
この周辺には、無いやと思い。
諦めかけたその時。
また炎の柱が、今度はすぐ近くの島で昇った。
轟音と共に凄まじい高温が襲ってきた。
気温があっという間にグングンと上がり、とても耐えられるような暑さではなくなってきてしまった。
「どうしよう……火端さん……」
額の大汗をハンカチで、拭うのも億劫になってきて、このまま倒れるだけとなった。だが、シロが後ろへ歩き出した。
「ニャ―」
「シロ……やーい……? どこへ……?」
シロは、元来た海を一人目指していた。
時折、こっちへ向いてニャーと鳴く。
私には、ついて来いともとれた。
「あ……、そうか……」
私は、シロと共に渡し船へと戻った。
海の上なら、幾ばくかの暑さをしのげる。
そう思うが、身体がいうことをなかなか聞かない。
私は、暑さでだるくなり、身体中の血液が沸騰しそうな予感すらしていた。
やっとのことで、シロと砂浜をフラフラと歩いて渡し船へ乗ると、オールを漕ぐ。
こんな目に会うのなら、八天街へ一旦戻り。冷たい場所で何か冷たい飲み物をと思ってしまう。それでも、オールを漕いでしまう自分がいる。どうしてここまでするのだろうとも、自分でも思っていた。あの兄妹は、すでに自分の中では、掛け替えのない家族のような存在になっていた。
火炎に包まれた沖を、遥か遠目に見える頃には、大海原の四方に同じような小島が浮かんでいることに気付いた。
ようやっと、ついさっきいたところの小島から数百メートル離れた。浮き出た小岩が周囲に散らばり、地面から大きな岩柱が中央に伸びている小島につき。体力の限界なこともあって、洞穴がありますようにと、沖へと小舟をつけた。
陸に上がると、額に浮き出た汗をハンカチで拭い。シロと共に洞穴を死に物狂いで探した。
だが、地面にたくさんある熱鉄のかまどからの湯気で、周囲がよく見えなかった。
轟音と共に、炎の柱が幾つも地上から上がって、熱で空まで焼いている。
今では、真っ黒になってしまった空から、大量の煤だらけの煙がゆっくりと降りて来ていた。
このままでは、マズイと思ったその時。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!