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𝓗𝓪𝓶𝓾
809
#アイドル
ゲスト
26
汗の浮いた肌を寄せ合っていると、
「風呂、一緒に入るだろ?」
彼から、そう誘いかけられた。
「……えっ、一緒には……」と、戸惑う。
「どうして?」
「どうしてって、だってその……お風呂に二人で入るなんて……」
肌触りのいい薄手のシルク地のブランケットを胸元まで引き上げて、両手でぎゅっと握りしめ
る。
「今さら恥ずかしがることでもないだろうが」
腰周りにブランケットを纏った彼が、ふっと笑みを向ける。
「だけど……、」と、すぐには受け入れられずに口ごもっていると、彼の片手が伸びて前髪のひと房がすくい上げられた。
「入れよ。一緒にいるのに、一人で入るなんて寂しいだろう」
そのままむき出しになったおでこに唇が押し当てられ、それ以上は拒むことなんてできなくなってしまう。
「……もう、いっつもそうなんだから」
「何がだよ?」
「自覚のない俺様が、一番困るってこと」
つい押し切られて、せめてものお返しのつもりでそう口にすると、
「……自覚、あるぜ」と、彼が唇の端をニッと吊り上げた。
「好きな女の前でぐらい、俺様でいさせろよ」
そんな言葉を臆面もなく吐かれて、この人にはやっぱり到底敵わなくてと、照れるしかなかった……。
──バスルームは壁面が一枚ガラスで覆われていて、スイートルームさながらの外観に、「……すごい」と、思わず声が出た。
「中も見てみろよ」
手を引かれてタイル張りの床へ足を踏み入れると、壁面と同じ大きなガラス窓が浴槽を丸く取り囲んでいて、張り出した窓からはタワーマンションの展望が見えた。
「すごーい」それしか言えないでいると、
「おまえ、そればっかりな」彼がくくっと笑い、「ほら、こっちに来い」と、両腕に軽々と私の身体を抱え上げた。
抱かれたまま浴槽に浸かると、中はボコボコと泡立つジェットバスになっていて、「……すごい」と、また性懲りもなく声が漏れた。
「おまえは、他に言葉を知らないのかよ?」
握った拳を口にあてて笑いを噛み殺す彼に、
「そ、そんなわけないでしょー。ええっと……あっ、びっくりした! とか……」
言い返して、自分自身の語彙力の無さに、我ながら呆れて口をつぐんだ。
「……まったく、いい加減にしろよ」
彼がそうぼそりと口にして、もしかして怒らせたのかなと思っていると、
「かわいすぎだろ……」と、耳元に甘く囁きかけられた。
「俺を、あんまり好きにさせんな」
後ろから腕が回され、背中からぎゅっと身体ごと抱き締められる。
──浴槽の中で、足を投げ出して彼の胸板に背中をもたせかけていると、不意討ちでうなじにチュッと口づけられた。
「や、ん……」
「かわいい声、出すな」
彼が言いながら、耳の付け根に唇を寄せてくる。
「……出させてんじゃない」
はにかんで口にする間にも、脇腹を抱いていた手が肌の上を滑り、胸の膨らみを下から掴み上げる。
「……ひゃ……んっ」
「……可愛いな、舞」
片手は胸を柔らかく揉みしだきつつ、背後から回した片方の手で顎の先を捕らえると、
「おまえといると、キスがしたくてたまらなくなる」
「……ん……」と、肩越しに唇を重ねてくる。
「……キス、だけ?」と、ちょっとだけ挑発的に返してみる。
「バカ……そんなこと言うと、キスだけで済まなくなるだろ」
絡む舌を解いて、「いいの、して……」と、口にする。
「もう止めてやれないからな……」
耳元で低く、より甘ったるく告げられて、腕の中へ向かい合わせに身体が抱き寄せられる。
「なぁ……」
「なに……」
「ここ……」と、彼が鎖骨のきわを指でなぞる。
「キスマーク、付けてもいいか?」
「……え、でも……」けっこう目立つような場所で、ためらいが口をつく。
「いいだろう?」と、彼が唇を迫らせる。
「……俺のものって証し、付けてもいいよな?」
付け足された言葉に、頬が熱を帯びる。
「……そんな風に言われたら、断れなくなるじゃない……」
「……ん。断れなくなるような言い方を、したからな」
触れた唇が痕が残るくらいに肌に吸い付く。
「舞……」
名前を呼ばれ、紅く付けられた痕を指先で触れられただけなのに、ぞくりと肌が粟立つのを感じた。
「……好き、颯……」
呼び返すと、私を抱いている彼の胸がドクンと一瞬高ぶったような気がした。
「ん、俺もだ……舞」
互いに唇を寄せ合い口づけを交わす。
キスは次第に深まって、濡れた舌が絡み付くと、水面がたぷんと大きく揺れて波打った……。
バスルームを出ると、腕を広げて待ち構えていた彼にふかふかのバスタオルで包まれた。
「……自分で拭けるってば」
「俺がしてやりたいんだよ」
バスローブを纏った彼に、タオルにくるまれたままで、横抱きに抱え上げられる。
ベッドの上に身体が下ろされると、はだけられたバスローブの胸元にぐっと抱え込まれた。
「……こんな風におまえといると、なごむな」
仰向けに寝転がった彼が天井を見上げて言う。
「なごむんですか?」
「ああ……なごむ」彼の口からふぅーっとひと息が吐き出される。
「……そんな言葉は、あんまりそぐわない気もするけど。……あなたは、いつも忙しそうにしている印象だから」
彼の肩に頭をそっともたせかけて言う。
「……そうか? これからは仕事も多少はセーブしていこうかと思ってる。今まで、忙しすぎたからな……。
……事業もだいぶ軌道に乗ってきたことだし、仕事の量を控えておまえとの時間を作るようにするよ」
「いいの?」と、だけ尋ねる。
「ああ、忙しすぎるのも考えものだしな」
肩へ預けた私の頭を腕に抱くと、
「……それにおまえといるこの時間は、悪くはないからな」
そう優しげに口にして、いつにない穏やかな表情でふっと柔らかく微笑んだ──。
コメント
1件
めっちゃ甘い…!😭💕 颯さんの「俺のものって証し」って台詞にもう胸きゅんが止まらなかった〜!普段は俺様なのに舞ちゃんにはデレデレで、でも「キスだけで済まなくなる」って言いながら結局止まらない感じが最高すぎる…! お風呂シーンの距離感がエモくて、何度も読み返したくなるエピソードでした✨ 蒼乃さん、今回は特にラブ濃度やばかったです、ありがとうございます!