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はやいもの勝ち

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はやいもの勝ち

5 - 神代 Side

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2023年01月01日

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修学旅行最終日に沢渡と小泉くんが二人でバスに乗るところを見た。

その時はたまたま一緒になっただけだと思ってた。

でも、修学旅行が終わってから沢渡と小泉くんが話しているところをよく見かけるようになった。

そして気づいてしまった。

二人が一緒に帰ると僕に言ってきた日。

沢渡と小泉くんは恋人同士になったんだと。


僕は沢渡が好きだった。

中学校で一緒のクラスになって以来、僕と沢渡と大谷はずっと一緒だった。

無表情だと真面目そうな沢渡は、皆が思っているよりも馬鹿だった。

くだらないことをするし、ボケたり、やんちゃしたり、はちゃめちゃな奴だった。

それでも時折見せる、微笑んだ時の表情が好きだった。

大谷は部活が違ったが、沢渡とは部活も一緒で過ごす時間が多かった。

三人同じ高校にも入れた。

沢渡の事は僕が1番知っているつもりだった。

いろいろアプローチをかけてみたが、沢渡にはどれも効かなかった。

いや、本当は効いていたのかもしれないけど…。

それでも沢渡は僕の事を意識してくれなかった。

告白することも考えたが、僕は気持ちを隠す事にした。


中学二年生のとき、ふたりで祭に行ったことがあった。

大谷が来れず、ふたりだけで行くことになったのだ。

その時、「僕、男でも付き合えるかも。」と言った。

僕の言葉に対して沢渡は「えー、俺は女の子がいいかな。」だった。

それから僕は沢渡の恋人ではなく友達でいることに決めたのだ。

告白して気まずくなるより、沢渡の隣にずっといたかった。


しかし、沢渡の隣は小泉くんのものになってしまった。

なんとなく予感はしていた。

沢渡がわざわざ一緒に帰ろうと誘ってきた日、僕と沢渡を小泉くんが見ていたことに気づいた。

小泉くんがいなくなったと思ったら、沢渡が後ろを向き何かを確認していた。


「(あ…小泉くんのこと探した?)」


その瞬間、胸がざわめきだした。

沢渡が小泉くんの事を好きになったと思った。

そう思う度、祭での会話が頭を過ぎる。


「(大丈夫。沢渡は女の子がいいって…。)」


それでも沢渡が本当に小泉くんを好きになっていたら。


「(僕が今告白したら…意識してもらえる…?)」


僕は分からなくなってしまった。

告白したら意識してもらえるかもしれない。

でも、僕の勘違いだったら気まずくなって沢渡が離れてしまうかも。

いろいろな考えが溢れる。

そんなことも知らずに沢渡は僕の膝の上に座っていた。

沢渡を見ていると心が落ち着く。

また明日考えよう。

大丈夫。まだ時間はある。

小泉くんだってすぐに告白なんてしないだろう。


それが間違いだった。


その二日後、沢渡と小泉くんは一緒に帰った。

小泉くんが「今日はっていうか、ずっとだろ。」と言った。

沢渡はとっさに小泉くんの口を塞いだが、残酷な事に聞こえてしまった。

一緒に帰る二人を見つめながら後悔した。


僕の方が先に沢渡のことが好きだった。


でも、小泉くんの方が一歩だけ前に進むのが早かった。


僕がずっと進めなかった一歩を彼は進んだ。


小泉くんより僕の方が沢渡のことを知っている。

小泉くんより沢渡と遊びに行っている。

小泉くんより小泉くんより……………。

……………………………………。

…………………………………………。



そんなこと思っても、もう遅い。

なにもかもが僕は遅すぎた。


僕はこれからも沢渡の友達なのだろう。



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