「あ」
「え」
さながら少女漫画のように曲がり角でぶつかりそうになった2人、─鳴海と保科。
さすがの反射神経でぶつかることは免れたが、2人の間には何とも気まずい空気が漂っていた。
「…その」
「!はい」
先に沈黙を破ったのは鳴海の方だった。
「わ、…悪かった…、」
「ぇ、…頭でも打ちました…?」
何のことか、なんて分かりきっているけれど。
思わずそう言ってしまった。
だってそうだろう、あの鳴海が謝ったのだ。驚かないわけがない。
「は?…ハァ!?」
「だって鳴海隊長が謝るとか、明日怪獣大量発生するんちゃうかな」
「お前ほんッッッと失礼な奴だな!!」
「冗談ですって笑」
…あぁ、やっといつもの感じになった。
それだけのことで、こんなにも心が温かくなる。
「僕の方こそすみませんでした。フェロモンのせいとはいえ、あんな行動してもうて…」
「まだまだ鍛錬不足ですね、笑」
「っ…」
一瞬苦しそうな顔をした後、彼はふいっとそっぽを向いてしまった。
「…そんな顔させたくて謝ったんとちゃいますけど」
「分かっとるわ!!」
くわっと目を剥いて叫ぶ彼がおかしくて、声を出して笑ってしまう。
「何笑っとんじゃ保科ゴルァ!!💢💢」
「すみませwww、ヒー、腹痛いwwwww」
「チッ、こんなんならさっさと帰れば良かった」
「はー、笑った笑った…」
久しぶりにこんなに笑ったせいで表情筋が少し痛い。
笑いが収まったところで、鳴海が再度口を開いた。
「…まぁその、なんだ。詫びというか礼というか…そんなのも兼ねて、今度の非番、飯でもどうだ」
「!?!?!?!?」
は!?え、鳴海隊長が!?僕と…!?一体どういう風の吹き回しなんや…、。
「って、長谷川が!言えと言ってきたんだ!!」
「あぁ、なるほど」
秒で理解した。
まぁせやろな、鳴海隊長が僕にそんなん言うわけないもんなー…。
…いや別に、落ち込んでへんけど。
鳴海隊長の意思やったらええなとか、微塵も思ってへんし。
「ええですよ、行きましょか」
「っほんとか!?」
「?、ええ」
誘って来たんそっちやないですか、と笑いかければ、「長谷川の指示だ!!」と全力で訂正された。なんやねんほんま。
「僕は直近だと5日後ですね」
「ん、じゃあそれに合わせる」
「分かりました」
隊長にもなると非番をもぎ取れるようにもなるんか、、、いや長谷川さんに仕事押し付けるだけやろなと思い直し、苦笑する。
「…いるか?」
「え?何がです?」
主語も何もなく唐突に聞かれ、何のことか全く分からずに聞き返す。
「、ボクの…連絡先」
「えっ」
さっきから驚かされてばかりだ。いい加減脳がキャパオーバーしそうなのでやめてほしい。
「べっ、別に変な意味はないぞ?ただあった方が便利なんじゃないかと思ってだな」
「わ、分かっとります」
なんやさっきから僕の方が振り回されとる気ぃするな…。まぁええか。
「スマホ出せ」
「はい」
とりあえずLIMEで友達登録をする。
…なんか、変な感じや。
少しだけ鳴海との距離が縮まったことを感じつつ、次の非番がいつもより楽しみになってきた保科であった。
コメント
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いや最高、、、、鳴海隊長の照れ隠し可愛すぎんか!?