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つばさ
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つばさ
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#ハイキュー
東方絶情録
第一話「無感情な少年」
――雨が降っていた。
灰色の空から、冷たい雨が静かに降り続けている。
一人の少年が、雨の中を歩いていた。
少年の名前は――神楽 雫(かぐら しずく)。
十六歳。
銀色の髪は雨に濡れ、服もすっかり濡れている。
それでも、雫は気にしていなかった。
寒い。
濡れている。
疲れている。
そういうことは理解できる。
だが――そこに「嫌だ」という感情が伴わない。
雫「……雨か」
ただ、それだけ。
昔は違った。
笑うこともあった。
怒ることもあった。
泣くこともあった。
誰かを大切に思ったこともあった。
けれど――絶望的な過去を経験してから、少しずつ感情が壊れていった。
そして最後には、
何を見ても。
何を聞いても。
何をされても。
何も感じなくなった。
雫「……もう、どうでもいい」
その瞬間。
――ズルッ。
雫「……?」
足元の地面が突然崩れた。
身体が落ちていく。
雫「……落ちてる」
普通なら叫ぶ。
恐怖を感じる。
助けを求める。
しかし雫は違った。
ただ、落ちていく景色を眺めていた。
そして――
視界が真っ暗になった。
――幻想郷・博麗神社
霊夢「……ん?」
博麗神社の境内を掃除していた博麗霊夢は、突然空を見上げた。
霊夢「何か変ね……」
次の瞬間。
――ドサッ!
霊夢「うわっ!?」
境内に少年が落ちてきた。
霊夢「ちょっと! 大丈夫!?」
霊夢が駆け寄る。
少年はゆっくり目を開けた。
霊夢「聞こえる?」
雫「……聞こえてる」
霊夢「怪我は?」
雫「……たぶんない」
霊夢「たぶんって……」
雫はゆっくり立ち上がる。
霊夢「名前は?」
雫「……神楽雫」
霊夢「私は博麗霊夢。ここは博麗神社よ」
雫「……そう」
霊夢「そしてここは幻想郷」
雫「……」
霊夢「驚かないの?」
雫「……何に?」
霊夢「幻想郷に決まってるでしょ」
雫「……別に」
霊夢「…………」
霊夢は雫をじっと見つめる。
普通の人間なら、もっと取り乱す。
けれど雫は何も感じていないようだった。
霊夢「……帰りたい?」
雫「……別に」
霊夢「家族は?」
雫「……いない」
霊夢「友達は?」
雫「……いない」
霊夢「帰る場所は?」
雫「……ない」
霊夢「……そう」
霊夢はそれ以上聞かなかった。
――数時間後
雫は神社の縁側に座っていた。
霊夢が出したお茶を一口飲む。
霊夢「どう?」
雫「……普通」
霊夢「美味しいとかは?」
雫「……分からない」
霊夢「分からない?」
雫「味は分かる。でも……美味しいっていう感覚が分からない」
霊夢は黙り込んだ。
この少年は、本当に何かがおかしい。
そのとき――
???「おーい! 霊夢ー!」
遠くから声が聞こえてきた。
霊夢「……来たわね」
空から一人の少女が飛んでくる。
黒い魔法使いの服。
大きな帽子。
そして箒。
魔理沙「よっ! 霊夢!」
霊夢「魔理沙。何しに来たの?」
魔理沙「遊びに来たぜ!」
霊夢「帰って」
魔理沙「ひどいなぁ」
魔理沙は笑いながら縁側へ座る。
そして雫を見る。
魔理沙「……ん?」
霊夢「今日、幻想入りしてきた人間よ」
魔理沙「へぇ……」
魔理沙は雫の顔を覗き込む。
魔理沙「お前、名前は?」
雫「神楽雫」
魔理沙「私は霧雨魔理沙だ。よろしくな!」
雫「……よろしく」
魔理沙「なんだか随分静かな奴だな」
霊夢「静かっていうか……無感情なのよ」
魔理沙「無感情?」
霊夢「何を言ってもほとんど反応しないの」
魔理沙「へぇ……」
魔理沙は少し考え込む。
そして突然――
魔理沙「なあ、雫」
雫「……何?」
魔理沙「恋愛とか興味ないのか?」
雫「……恋愛?」
魔理沙「ああ。好きな人とか、恋とかさ」
雫「……分からない」
魔理沙「好きな奴は?」
雫「……いない」
魔理沙「今までいたことは?」
雫「……ない」
魔理沙「恋したことも?」
雫「……ない」
魔理沙「そりゃまた珍しいな」
雫「……恋って何?」
魔理沙「え?」
雫「好きっていう感情が……分からない」
魔理沙は少し黙った。
さっきまでの明るい表情が、ほんの少しだけ真剣になる。
魔理沙「……まあ、無理に分かろうとしなくていいさ」
雫「……」
魔理沙「いつか分かるようになるかもしれない」
雫「……いつか?」
魔理沙「ああ。幻想郷にはいろんな奴がいるからな」
霊夢「魔理沙。会ったばかりの相手に恋愛の話をするのやめなさい」
魔理沙「いいじゃないか。面白そうだろ?」
霊夢「面白いって……」
雫は二人の会話を黙って聞いていた。
そして――
ほんの一瞬だけ。
雫の口元がわずかに動いた。
笑顔ではない。
けれど、何かを感じたような変化だった。
霊夢「……?」
霊夢はそれに気づいた。
しかし、何も言わなかった。
――その夜
雫は神社の縁側に一人で座っていた。
幻想郷の夜空には、無数の星が輝いている。
雫「……」
雫は空を見上げる。
なぜか――
目を離せなかった。
雫「……綺麗」
言葉が口から出た。
雫「……」
自分でも驚いた。
今、自分は何を感じた?
胸の奥に、ほんの少しだけ何かがある。
けれど、それが何なのか分からない。
嬉しいのか。
寂しいのか。
感動しているのか。
それすら分からない。
雫「……分からない」
それでも――
雫はしばらく星空を見続けていた。
その姿を、神社の中から霊夢が静かに見ていた。
霊夢「……少しだけ、変わったのかしら」
そして翌朝。
雫は幻想郷での生活を始める。
だが――
彼が感情を取り戻すまでには、
まだ長い時間と、
数え切れないほどの苦労が待っていた。
――第一話・終
コメント
1件
あ、読んだ読んだ!「東方絶情録」第1話! 主人公・神楽雫くん、感情が欠落してる感じがすごく気になる…。 雨の中落ちてきて、慌てる霊夢と魔理沙に対して「どうでもいい」「別に」しか言わないの、逆に不気味でかっこよかった。 魔理沙が突然「恋愛は?」って聞いたのには笑ったけど、無感情な雫くんに対しての距離感が絶妙やったな。 最後の星空見て「綺麗」って口にしたところ、ちょっと胸が熱くなったわ。 つばささん、続きめっちゃ気になる! この先、雫くんがどう変わっていくのか楽しみにしてるで🔥