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それからルームサービスのモーニングがテーブルに並び、その豪華さに透子が嬉しそうにしているのがわかって、オレも嬉しくなる。
「すっごい」
「どうぞ。お姫様」
そして椅子を引いて、そんな透子をテーブルの前にエスコートする。
「お姫様って歳じゃないけど・・。でもホントこんなシチュエーション。お姫様みたいだね」
「オレには透子はいつでもお姫様だけど?」
あんなに美しくて愛しい眠り姫、オレは他に知らない。
オレにとってはずっと憧れのお姫様。
「なら、私にとっても樹は王子様、だね」
「当然。目の前のお姫様をこれからも幸せに出来るのはオレだけだからね」
透子を守れるのはオレだけ。
透子を幸せに出来るのはオレだけ。
どんなことがあっても、透子がお姫様なら、オレは王子様でもなんだってなって、一生幸せにしてあげる。
「頼もしいね」
「大丈夫。いつか絶対迎えに行くから。信じて待ってて」
「何それ(笑)」
「いいから。お姫様はどんなことがあっても王子の迎え待ってればいいから。OK?」
「わかった」
お姫様は、どんなことがあっても王子様の迎えを待っているものでしょ?
お姫様と王子様は必ず最後は結ばれるように、透子とオレも必ず結ばれるって決まってるんだ。
どんなことがあっても、必ず幸せにする為に迎えに行くから。
透子はまだ今ようやくオレを受け入れてくれて、オレとの恋愛も時間も始めてくれたから、そこまで考えてないかもしれないけど。
オレはこの先のこともずっと考えてる。
これから始まる何気ない幸せも、これからずっと続いていく幸せも。
「そういえば、昨日。ちょっと動揺した」
「ん?何が」
「パーティー会場に来た透子があまりに綺麗だったから」
久々に見た透子はまた一段と綺麗になっていて、そして、華やかなドレスを身にまとった透子は誰よりも輝いていて。
だけどそれが嬉しい反面、少し悔しくもなって。
オレがいない間、こんな風に綺麗な姿をどれだけ透子は他の男に見せてきたんだろうとか、こんなにもまた綺麗になっている透子をどうしてオレはそばで見れなかったんだろうとか。
結局は透子が好きな気持ちが溢れるばかりで。
「はっ!? ゴホッゴホッ。急に、何言い出すかと思えば」
「やっぱ格別だよね。透子のドレス姿」
「いや、そんなことないよ・・別に」
だけど、透子は絶対認めないんだよね。
こんなにも綺麗なのに。
こんなこと想うのは透子だけなのに。
「でも・・・樹に気付いてほしかったから・・。樹を振り向かせたかった・・」
すると、透子は恥ずかしそうに静かに呟く。
「は?? ちょっと待って・・・」
え・・いや、まさか透子がそんなこと言うなんて思ってもいなくて。
ヤバイ、嬉しすぎんだけど。
あの綺麗な姿は、オレの為にしてくれたってこと?
オレを振り向かせたいって・・・。
どこまで透子は自分のこともオレのこともわかってないんだよ。
透子がどんな姿だって、オレは絶対見つけだせる。
あんなに綺麗な姿を見て目を奪われるくらい、オレは透子だけしか見てなかった。
そして透子がオレをそこまで想ってくれていたことが何より嬉しくて。
目の前で可愛すぎる嬉しい言葉をさらっと呟かれて、あまりの照れとニヤけてる顔を透子に見られるのが恥ずかしくなって顔をそっと手で隠す。
「樹・・? 何? 私なんか変なこと言った?」
「それ、透子が言うの反則だから」
なんだよ、その破壊力。
無意識のそういう言葉が一番すごい威力なんだから。
ずっと想ってた人に、そんなこと言われて幸せ以外何がある?
「えっ、何それ。意味わかんない」
だけどいつものように透子はとぼけた反応。
「はぁ~。オレが透子に気付かないはずないでしょ? どれだけオレが透子に夢中だと思ってるの?」
そうなんだよな。
透子は自分がどれだけ綺麗かも、どれだけオレが透子のことが好きなのかまだまだわかってなくて、こんな反応ばっかりで。
「そんなの樹見ててもわかんないし・・・」
「オレ振り向かせたいとか・・・。オレどこまで好きにさせたら気が済むの?」
透子が好きになる前からずっと好きで、離れててもいつでも透子のことしか考えてなくて、忘れたことなんて一度だってないのに。
なのに、透子は無意識でそんなことを言ってオレをもっと好きにさせる。
「っていうか、あんな綺麗な姿、他の男に見せたくない」
それよりあんな姿を大勢の男の前で見せる方がオレは心配でたまらない。
透子がどんどん綺麗になる度、どんどん好きになる一方で、その分不安になる。
またオレの手の届かない人になりそうで。
また誰か違う男に奪われそうで。
ここまで透子に釣り合うように必死に頑張って来たけど、それでも透子レベルの女性なんていつでも狙われる存在で。
そんな綺麗な姿オレ以外の男に見せないで。
「そ、そんなこと言われても・・・」
だけど当然そんなオレの勝手な独占欲を押しつけられても透子は困ってしまうだけで。
てか、オレがこのパーティーに呼んだくせに、勝手な言い分だよな。
透子はオレの為に綺麗にしてくれたのに。
だけど、透子に関しては、透子が好き過ぎて、オレはいつだって余裕なんてこれっぽっちもない。
「だから、オレが透子守る為に、これからオレがちゃんと隣でエスコートしないと」
だからオレがずっと透子の隣にいたい。
透子がどこかへ行かないようにオレがちゃんと守らなきゃ。
「そうだよ・・。樹が一緒にいてくれたら問題ないじゃん」
「そうだね。他の男に見せたくはないけど、オレの自慢の彼女だって見せびらかしはしたいから」
そう。だからオレが隣にいてそんな透子を自慢したい。
こんなに素敵な人がオレの彼女なんだって。
こんなに素敵な人がオレのモノになったんだって。
こんなに素敵な人の隣にいるのはオレなんだって、誰も手を出すなよって、世の男どもに伝えないと。
「樹だって・・」
「ん?何?」
「樹だって、入口で待ってる時、すごくカッコよくて皆樹のこと見てた」
「そっ? まぁオレもそこは自覚なかったけど。透子のことしか頭になかったし」
へ~そうなんだ。
まぁ若干見られてるような意識がなくもなかったけど、でもそんなのオレ的にはどうでもいい。
今日透子に会えることが嬉しすぎて、透子のことでずっと頭がいっぱいだった。
だから当然他の女なんて目に入るワケない。
それくらい透子を見つけてからは、ずっとその美しさにオレの目は釘づけだったんだから。
「てか。オレも透子に似合う男になりたくて必死だから」
どんな人混みからでも、その美しさと輝きは溢れていて、すぐに見つけられる。
誰にも渡したくないから、透子に相応しい男になれるようにずっと必死で。
「充分だよ。私には勿体ないくらい」
「いや・・・まだまだだよ。透子に釣り合う男になって、透子を幸せに出来るのは・・・」
「私充分幸せだよ?」
「いや。オレがこの先透子をもっと幸せにするから・・・。ずっと幸せに出来るようになるまで、もう少し待ってて?」
そう。
透子を本当に幸せに出来るのは、まだまだ先なんだ。
まだまだこんな中途半端なオレでは透子を幸せに出来ない。
どんなことがあっても、ちゃんと透子を守れる一人前の男になるまで、もう少し待っててほしい。
「わかった。待ってる」
全部を言えないオレのそんな言葉に、透子はなんとなく察したのか、ただそれだけ言ってくれる。
「何があっても絶対待ってて」
「わかった。何があっても絶対」
オレは、その言葉があれば頑張れる。
透子さえ、信じて待っててくれれば。
オレは必ず頑張れるから。
そして、その後ホテルをチェックアウトして二人で帰って来たお互いのマンション。
「あっ、そうだ透子」
部屋に入ろうとする透子に声をかける。
「何?」
「今度の新しいプロジェクトでREIジュエリーと一緒にやるって言ってたの覚えてる?」
「うん。もちろん」
「その新しいブランドの関係者紹介しとこうかなと思って。明日会社に挨拶しに来たいって言ってるんだけどどっかで時間ある?」
「あぁ。うん。午後からならいつでも大丈夫だよ」
「なら。14時にいつもの会議室でもいいかな?」
「了解。じゃあ明日14時に行くね」
「じゃあ。今日はゆっくりこのあと休んで」
「樹もね」
「じゃあ」
明日の約束をしてお互い部屋へ戻る。
こんな風に仕事の約束をするのもどれくらいぶりだろう。
また明日会える幸せを改めて噛みしめる。
ホントはまだまだ透子といたかったけど。
ずっと透子がいてくれる幸せを味わいたかったけど。
でもまぁ透子も疲れただろうし、ここは少し我慢。
当然まだ一緒にいたいとか、そんな言葉が透子から出てくることもないし、家についたら案外あっさり別れようとする。
まだまだ一緒にいたいって思うのはオレだけかな。
でも、ようやくオレを好きだと意識してくれた透子。
ここからまたオレは頑張るだけ。
ずっと好きでいてもらえるように。
もっと好きになってもらえるように。
何があってもオレから離れないように。
オレは透子に出会ってから、昔も今もこれからも、ずっと透子がすべてだから。