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7話❀.*・゚
病室の中、静かな時間が流れていく。白西は窓の外を見つめている。夕日のオレンジ色がその顔をほんのり照らしているけど、彼女の表情はどこか、何を考えているのか分からない。
俺は隣に座って、視線を合わせることができない。白西が余命宣告を受けたこと、俺も同じだってことはもうお互いに分かってる。けど、俺はどうしてもその事実を完全には受け入れられないままで、彼女と一緒にいる。
「白西」
俺が声をかけると、彼女は軽く振り向く。目が合う瞬間、ほんの少しだけその瞳に冷たさを感じた。でも、それが彼女の本当の気持ちなのか、ただの勘違いなものなのかは分からない。
「なに?」
「元気そう?」
それを言った瞬間、白西は少しだけ苦笑いを浮かべた。その顔が、なんだかすごく切なくて、俺はまた何も言えなくなる。
「うん…元気だよ。でも、何もかもに嫌気がさす」
「嫌気?」
「うん。どうせ終わりが来るって分かってるから、何をしても無駄な気がしてさ」
「無駄…?」
「私はもう死ぬのに日本は、世界は変わらないの。でもそうだよね、何億人もいる中で1人だけ死んでも誰も悲しまない。変わらない」
その言葉に、俺は心が締め付けられる。無駄だなんて、そんなことないのに。でも、分かるんだ。彼女がどれだけそう思ってるか。俺だって、同じように感じているから。
「そんなことないだろ。お前は…お前は無駄にしてない」
そう言いたいけど、言葉にできなかった。言ったところで、何も変わらないって気がして。お前の笑顔さえ見れれば、それでいいんだって思ってしまうけど、それも一瞬のことだと思うと胸が苦しくなる。
「でも、私はさ…どうせこの先、長くないって分かってる」
「分かってるけど、それでも、こうして一緒にいられるのは無駄じゃないだろ」
俺が言うと、白西は静かに目を閉じて、少しだけため息をついた。その息の音が、なぜか耳に残る。
「でも、私たちには…限られた時間しかない」
その言葉が、また俺の心を深く突き刺した。限られた時間。俺も知っている。それが現実だってことは。でも、どうしても受け入れられない。
「俺だって、それは分かってる。でも、だからこそ、少しでもお前と一緒にいたいって思うんだ」
白西は少しだけ目を開けて、俺の顔をじっと見つめた。その瞳が、どこか遠くを見ているように感じて、俺はまた言葉を飲み込んでしまう。
「俺、お前のことが好きだ」
その言葉を言うべきじゃないって分かってるけど、どうしても言いたかった。今はそれが正直な気持ちだから。だけど、白西は黙ってうなずくだけで、何も返してこなかった。
「でも、そんなことを言っても、何も変わらないって分かってる」
「うん」
その一言が、何よりも辛かった。俺はきっと、白西に伝えるべきじゃないんだって思っていた。でも、どうしてもこの気持ちが消えなかった。白西もきっと、俺と同じように感じているはずなのに、それを言うことでお互いに傷つくことが怖い。
「でも、お前が今こうしていてくれるだけで、俺は…少しだけ楽になる」
俺が言うと、白西は少しだけ目を閉じて、再び窓の外を見た。何も言わずに。言葉にしなくても、二人の間にはそれ以上のものがあるのかもしれない。それでも、俺はまだ、言葉を探して
「俺たち、結局お互いに…同じ運命なんだな」
「そうだね。でも、だからこそ、今できることを大切にしようよ」
その言葉に、俺は少しだけ救われた気がした。時間が限られていることを知っているからこそ、今を大事にしようとする。その気持ちが、少しだけ明るく感じられた。
でも、心の中ではまだ何かがもやもやしていて、白西に言いたいことがたくさんある。
でも、結局それを伝えることで何かが変わるわけではないって思うと、やっぱり口に出せない。
「でもさ俺は…俺はお前ともっと一緒にいたい」
その言葉も、今はただの呟きに過ぎないのかもしれない。でも、どうしても言いたかった。言葉にして、少しでもお前に気持ちを伝えたかった。
「だからそれは叶わないんだって!!」
初めて聞いた。白西の大きな声。
**『叶わない』**そう言わせたのが悲しかった
もし、白西が病気もなく元気に過ごして、俺が思いを伝えて、白西も想いを伝えてくれて…そんな未来だったら、こんな言葉言わない。
白西…
おまえはさ、
出来るなら一生を共にしたい相手なんだよ。