弱いから

渡辺の家の鍵を取り出し、オートロックを開けて家に入る。

渡辺ー入って来んな！

目黒ーごめん、疑って酷いことして。

渡辺ーもう関係ないから！

目黒ー信じてあげなかったの、ごめん。

渡辺ー帰れ！

目黒ー翔太くん。

渡辺ーもう会わないから、帰って。

目黒ー許してもらえない？

渡辺ー俺があの男にいいようにされたのが悪い。

目黒ー違う、逃げてくれてありがとうって言わなきゃいけない。

渡辺ーあんな、身体になっても？

目黒ー俺が忘れさせる。

渡辺ー今はまだ、目黒が怖いし許せない。

目黒ー翔太くん。

渡辺ーそれ以上、近寄って来ないで。

目黒ー怖い？

渡辺ー身体が震えてる。

目黒ー今日は帰る。

渡辺ーもう来ないで。

目黒ー明日も来る。毎日来る。

渡辺ーどうして！呆れただろ？

目黒ー愛してる。

渡辺ーいや、信じない。

目黒ー翔太くんを愛してる。

渡辺ー蓮・・。

目黒ー明日も来るから。

その日から目黒は毎日、渡辺の家に行く。

何度も「愛してる」と告げる。

渡辺は泣いて首を横に振る。

最初の１年のようだ。

1ヶ月、２ヶ月が経ち、それでも渡辺は泣きながら目黒に「帰って」と言う。

渡辺は目黒を「愛してる」。

だから、辛いのだ。

あんな姿を見せてしまって。

あんな男に負けて。

以前も同じようなことがあった。

目黒は骨折し、渡辺は自ら肌をボロボロにした。

申し訳ないのだ。

目黒ーごめん、翔太くん。

渡辺ーんっ・・んっ・・。

目黒ー許してください。

渡辺ーんっ・・んっ・・。

目黒ー明日も来る。愛してる。

目黒が帰った後、渡辺はソファに突っ伏して声をあげて泣く。

自分が弱いからあんな目に遭ったのに。

でもやっぱり、怖い。

身体の震えが止まらない。

大事な人なのに。

大好きで結婚式あげたのに。

先日、目黒が指輪を置いて帰った。

渡辺は触っていない。

自分のなのに、触れない。

目黒が選んで買ってくれた指輪。

テーブルに置いたまま。

着ける資格ない。

3ヶ月が経ち、目黒はもうダメなんだろうかと思っている。

指輪は置いたままになってるし。

渡辺は泣いてばかりだし。

目黒の言葉は渡辺には届いてないのだろうか？

まだ、頑張れる。

今夜も渡辺に会いに行く。

続く