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正直に言えば、俺は人と話すのが得意じゃない。会話の距離が近すぎる人も、妙に踏み込んでくる人も、苦手だ。
だから、自然と線を引くようになった。
音楽以前に、無理なものは無理だと分かってしまったから。
それだけの話だ。
奈央さんと話すときは、違う。
先輩だから気を遣っている、というわけでもない。
特別扱いしている意識も、正直ない。
ただ、変に構えなくていい。
音の話をしても、
ミスをしても、
沈黙があっても。
「まあ、いっか」で済む。
ギターを教えているときもそうだ。
変に褒めるつもりも、意識させるつもりもなかった。
思ったことが、そのまま口に出ただけだ。
「今の、かわいいっすね」
言った瞬間も、深い意味はなかった。
変な間も、狙いもない。
なのに、奈央さんが一瞬固まったのを見て、
少しだけ不思議に思った。
(あ、言い方まずかったかな)
そう考えたけれど、
すぐにどうでもよくなった。
嫌な空気にはなっていない。
避けられてもいない。
なら、問題ない。
俺にとって奈央さんは、
「一緒にいて楽な人」
それ以上でも、それ以下でもない。