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第5話 考えなくていい人

正直に言えば、俺は人と話すのが得意じゃない。会話の距離が近すぎる人も、妙に踏み込んでくる人も、苦手だ。


だから、自然と線を引くようになった。

音楽以前に、無理なものは無理だと分かってしまったから。


それだけの話だ。


奈央なおさんと話すときは、違う。


先輩だから気を遣っている、というわけでもない。

特別扱いしている意識も、正直ない。


ただ、変に構えなくていい。


音の話をしても、

ミスをしても、

沈黙があっても。


「まあ、いっか」で済む。


ギターを教えているときもそうだ。

変に褒めるつもりも、意識させるつもりもなかった。


思ったことが、そのまま口に出ただけだ。


「今の、かわいいっすね」


言った瞬間も、深い意味はなかった。

変な間も、狙いもない。


なのに、奈央さんが一瞬固まったのを見て、

少しだけ不思議に思った。


(あ、言い方まずかったかな)


そう考えたけれど、

すぐにどうでもよくなった。


嫌な空気にはなっていない。

避けられてもいない。


なら、問題ない。


俺にとって奈央さんは、

「一緒にいて楽な人」

それ以上でも、それ以下でもない。

ギタリストの後輩君にはNGリストがあるらしい。

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