テラーノベル
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モブ注意⚠️
主役:元貴
最初は、ただの違和感だった。
帰り道、同じ足音が続く。
コンビニに入っても、
ガラス越しに立っている影。
「気のせい、だよね」
僕はそう言い聞かせる。
1番目立つ立ち位置なんだから、
ファンに見られるのは当たり前。
でも、この状況が三日続いた。
SNSのDMに届くメッセージ。
“ 今日の私服、黒似合ってた ”
“ さっきのコンビニ、俺もいたよ ”
指先が冷たくなる。
――見られてる。
若井と涼ちゃんに言おうか迷う。
でも、心配はかけたくない。
涼ちゃんはもっと不安にさせちゃう。
だから黙る。
いつもの僕の悪い癖。
ある夜。
スタジオを出て、少し歩いたところで。
「大森さん」
知らない男の声。
振り向くと、距離が近い。
「俺、貴方のファンで。ずっと応援してます」
笑っている。でも目が熱い。
後ずさる。
「っ、ありがとうございます。
でも今ちょっと急いでて」
「…そうですか。でも俺、
あなたのこと 全部知ってますよ。
三人でお付き合いしてるのも……ね?」
その言葉に、背筋が凍る。
足が動かない。
その瞬間、腕を引かれた。
「触るな」
後ろから低い声。
若井だった。
一歩遅れて涼ちゃんも駆け寄る。
「元貴、大丈夫?」
僕はやっと息を吸う。
ストーカーは一瞬ひるむが、すぐに言う。
「ファンとして話したいだけです」
若井は僕の前に立つ。
「そっかぁ、なら距離を考えて欲しいかな」
静かだけど、強い。
涼ちゃんは僕の手を握る。
「怖かったね」
その一言で、涙が滲む。
警備が来て、男は離れていった。
でも震えは止まらない。
帰宅後。
僕はソファで丸くなる。
「……言えばよかった、ごめんなさい、」
若井が隣に座る。
「…いつから」
「三日前、」
若井の眉が寄る。
怒ってる。でも僕にじゃない。
「溜め込むなって言ったよね」
責めてない声。
涼ちゃんが反対側から抱きしめる。
「一人で怖がらないで」
僕は小さく言う。
「迷惑、かけたくなくて、」
「迷惑じゃない」
即答は若井。
「守らせて」
涼ちゃんも頷く。
「僕たち、恋人だよ」
その言葉に、胸がほどける。
強いフロントマンでいなきゃ。
ずっとそう思ってきた。
でも今は違う。
「……怖かった」
やっと本音が出る。
若井が額に触れる。
「俺が傍にいる」
涼ちゃんが背中を撫でる。
「僕もいるから」
左右からの温度。
震えがゆっくり収まる。
翌日、事務所と警備体制を強化。
送迎もついた。
若井は僕の隣を絶対に離れない。
涼ちゃんは帰宅後、必ず手を握る。
守られている。
そう実感するたびに、
涙が出そうになる。
「僕、弱いね」
夜、ぽつりと呟く。
若井が言う。
「元貴が弱いんじゃない。
狙われてるんだからしょうがないよ」
涼ちゃんが続ける。
「僕たちが守りたくて守ってるからいいの」
僕は二人の間に顔を埋める。
怖さは消えない。
でも
三人でいるときだけは、
安心して目を閉じられる。
『おやすみ、元貴』
二人の声を最後に眠りについた。
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