テラーノベル
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翌朝。
台所からは味噌汁の香りが漂ってきて、咲はエプロン姿で食卓に茶碗を並べていた。
「お、いい匂い!」
亮がのんびりした足取りで現れる。
その少し後ろから悠真も現れ、まだ眠そうに髪をかきあげた。
視線が一瞬合っただけで、咲の胸はきゅっと縮む。
「悠真、泊まるならせめて片付けくらい手伝えよな」
亮が茶化すように笑う。
「はいはい。……妹ちゃん、何か運ぶのある?」
何気ない調子で悠真が咲に声をかける。
「えっ……あ、こ、このお皿お願いします」
皿を受け取るときに指先がふれて、咲は慌てて手を引っ込めた。
――ほんの一瞬。それだけで心臓が跳ねる。
亮は何も気づかず、「いただきまーす!」と元気よく箸を割っていた。
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